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『くもをさがす』を読みました

先日、アメトークの「本屋で読書芸人」を見ました。早速、新宿の紀伊国屋書店に行きました。2階には、アメトークで紹介された書籍だけを集めた本棚もありました。

紹介されていた本の中でも、西加奈子さんの『くもをさがす』は、新刊ということもあり、至る所にたくさん並んでました。

個人的に読みたい本を3冊買いました。

アメトークでも紹介されていた『宇宙人と出会う前に読む本』も、気になったので買いました。

知らないと思いますが、スピリチュアル界隈では、2027年にはオープンコンタクト(宇宙人が我々の前に公に姿を現す)が起きるなんて言われています。

僕は『幼年期の終わり』というSF小説がすごく好きだったので、個人的には、オープンコンタクトがあるなら、楽しみだなぁと思ってます。

『トッド人類史入門』は、アメトークでは一切、紹介されてません。ただ、新刊が並んでたので買ってしまいました。

エマニュエル・トッドは、予言者とも言われる人類学者で、個人的にかなり面白いです。

僕の性格的に、このまま家に帰ると、買って満足で、本を読まないことは明白だったので、カフェに寄ってから帰ることにしました。

写真を見て思いましたが、なぜトッドを真ん中で写真を撮ってしまったのかと、後悔してます。トッドには、出しゃばりなところがあるかもしれません。今度会ったら、きつく言っておきます。

そして、カフェで『くもをさがす』を読みはじめました。

『くもをさがす』は、2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から寛解までの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。

「くもをさがす」公式サイトから引用

感想

とにかく面白かったです。ただ、文字通り「胸が痛い」という、そんな作品でした。

僕は、男なので乳房はないですが、気付けば、読みながら、ずっと右の胸のあたりを押さえていました。架空の乳房が痛むとでも言うのでしょうか。途中、苦しくて、カフェなのに「うっ」とか「ああ」とか言いながら読んでいました。

幸い、お客さんは少なかったので、チラっと顔色を窺われるだけで済みました。

「いや、変な目で見られとるやないかい」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。周りのおばちゃんたちは、一人ではなく、お友達と来てたので、チラッとこっちをみて、それぞれの会話にすぐに戻っていきました。

だるまさんが転んだに近い状況です。

なので、どのおばちゃんからも「あんた、さっきからどうしたの?」「あんた、気持ち悪いからやめなさい」「あんた、本から銃撃でも受けたの?」とかは、言われていません。きっと大丈夫だったはずです。

この作品の特異な点は、著者の西加奈子さんが、日本でなく、コロナ禍のカナダで、がんが見つかったところにあると思います。

「日本だったら、こうはならないだろう」という出来事の連続に、どんなに精神的に強い人でも、不安な気持ちや弱気な気持ちに苛まれていくだろうなと、読者は感情移入していきます。

ただ、題材として暗くなりがちな「がん」「闘病」というテーマについて書きながらも、この本は、読者を陰鬱な気持ちにさせません。

そういった、ネガティブな事象と対をなすように、西さんの周りにいる素晴らしい方達の存在が描かれます。もちろん、家族や、飼い猫も含めてです。

かけがえのない人とのつながり、逆にカナダだからこそ感じられる喜び、「自分は弱い」と受け入れることで、気持ちが楽になっていく過程が、「治療」という辛い現実の底を支えるように描かれていきます。

そして、その全てが、「生きる」というところに集約されていきます。読んでいて、胸は痛みますが、不思議と、読者を暗い気持ちにさせません。

そして、面白いのが、カナダ人たちの会話が、全員、関西弁なのです。

ここが、この本のノンフィクションでありながらのフィクション要素というか、すごいところです。

とにかく、カナダ人たちが明るい。キャラがしっかりしている。すごく笑える。

もし、カナダ人の言葉が、全て標準語だとしたら、会話がただの情報に近い、硬めのノンフィクション作品になっていたはずです。

その場合、作品全体が、リアルで、もう少し暗くなっていたかもしれません。

この工夫が、作家のもつ力というか、作家の見ている世界を、読者に見せる力なんだろうなと思いました。

この本で一番、心に残った箇所があります。

それは、がんになった人は、あれが良くなかった、これのせいだ、と自分の中に原因を探してしまいがちという点に関して、西さんは、そこに原因はなく、たまたま、自分がそうなるだけのことであっただけで、誰の、なんのせいでもない、ときっぱり書いていたところです。

僕も含め、人間は、よくないことが起きると、自責の念というか、過去の何かを責めがちです。西さんは、そこに囚われても、しょうがない、そこに縛られても、苦しくなるだけ、というところ端的に書いていました。

今、あるものに感謝しようというという前向きな気持ちになりました。

とにかく、ノンフィクションでありながらも、グッと涙を堪えながら前向きに読める、そんな素晴らしい本でした。面白かったです。

最後に

いい本だったので、生粋の文学少女で、今もひたすら、本を読み続けている、うちの母にもお勧めしてみました。

丁度、「王様のブランチ」でも紹介されていたらしく、本の存在は知っていたようでした。

、、、。


また明日も、書こうと思います!

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