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シン・MaaS(3):MaaSを支えるシステム

こんにちは。某会社でMaaS事業を推進しています。

以前の記事で、アズアサービスで見直すMaaSのコンセプトについて記載しました。

今回は、MaaSを実現するためには、どんなシステムを構築していくべきか、それをどのようにユーザーへ提供すべきか、をテーマに記載したいと思います。

MaaSのシステム構成

下記にMaaSのシステムを構成する全体像を図示します。

MaaSシステム

物理資産である「モビリティ」、それらを使ったサービスを実現するためのノウハウである「運行機能」、そしてそのノウハウで作られたサービスを「運行事業者が直接ユーザーに届ける状態」と「事業会社を通じて間接的に届ける状態」を一枚の絵で表しています。

それぞれの詳細を見ていきたいと思います。


物理資産

モビリティ事業を支えるハードウェア(物理)資産です。

鉄道車両、線路、バス・タクシー・パーソナルモビリティなどの車両などが代表例となり、主に運行事業者が保有している物理的な資産となります。

鉄道にしても、パーソナルモビリティにしても広い範囲で事業を行うためには、巨額な投資が必要となり、誰でも簡単には整備できないことは想像に難くありません。

この資産を保有していることは運行事業者の強みとなります。


運行機能(MaaSとして提供できる機能)

物理資産がハードウェアとすると、運行機能は運行事業を行うためのソフトウェアにあたる資産です。

モビリティを保有しているだけでは当然、運行事業を成立させることはできません。運行事業を行うのに必要なノウハウ(事業経営、運行管理、顧客管理、法令準拠など)と組み合わさって初めて運行事業を行うことができます。

このソフトウェアにあたるノウハウは専門性が高くかつ法的な規制もある領域となります。運行事業はこのハードウェアとソフトウェアの組み合わせが必要なため、単独で新規参入することは非常にハードルの高い事業となります。

そして、この「運行機能」をハードウェアである「モビリティ」と組み合わせてオープン化することで真のMaaS(モビリティサービスのオープン化)を実現できます。

MaaSのシステムはまさにこの運行機能をマイクロサービス的にシステム化することが肝となります。

ユーザーへのサービス提供ステップ

それでは、これらの「運行機能」を「サービス化」することでどのようなユーザーメリットを実現できるようになるかを検討したいと思います。

Step1:利便性の向上(B2C)

最初のステップとしてはサービスのデジタル化による利便性の向上です。これは運行事業者が自社のサービスの利便性を向上することに値します。

サービスの利便性を向上することで、ユーザーのロイヤリティを向上させることができます。これにより、運行事業者は地域の中で選ばれる事業者として認められることになります。

運行事業者自身のブランド力を向上することで、無形的な資産価値を蓄積することができます。

大手鉄道会社のような寡占的に事業を行うことができている運行事業者にとってはメリットを感じにくい部分かもしれませんが、パーソナルモビリティなど新規参入系の事業者やタクシーなど競合の多い事業者にとっては、無形資産は有力な武器になると考えられます。

また大手の鉄道会社の場合においても、鉄道事業以外の都市開発やリテール事業などを展開する時に、競合との差別化を図る事ができると思います。

例えば、旧国鉄系のサービスで販売される商品よりも、地方の鉄道事業者の商品の方が、地域特産型のようなイメージが強く出るのではないかと推測されます。

これに対して徹底的にデジタル化されたサービスを提供できれば「先進的・モダン」なイメージを獲得することができ、他の事業展開に有利な武器を手に入れる事ができると思います。


Step2:利便性の向上(B2B2C)

次のステップとしてはオープン化による運行機能のサービス開放です。

step1でユーザーに選ばれるサービスプラットフォームを構築することができれば、これをAPI化して公開することで、さらなる利便性の高いサービスを提携先の事業者と共にユーザーに届けられるようになります。

運行事業者単体で、さまざまなユーザーに刺さるサービスを作り上げることは困難です。運行事業者は運行事業の専門家ではありますが、各種サービスの専門家ではないためです。

例えば、運行事業者が動画配信サービスを始めても上手く可能性は低いと思います。

ところが、動画配信サービスをすでに手掛けているサービス事業者であれば、自社のサービスと交通サービスを組み合わせて、競合と差別化を図るサービスを作り上げることができるかもしれません。

サービスを作る部分については提携先事業者に任せて、運行機能をばら売りにして組み合わせられるように提供することで、仮想化された交通サービスをユーザーに届ける事ができるようになります。

このようなスキームで交通サービスを提供することで、ユーザーが今まで行かなかったところへ行くようになったり、今まで行ったことのあるところに対してもその場所への移動回数が増えるようになったりなど、移動の総需要を現在より向上させることができる可能性も見えてきます。

これにより、運行事業者だけでなく周辺の事業者にも利益を生むことができ、地域を活性化することができる可能があります。

まとめ

運行事業者の視点として、MaaSを実現するモチベーションは何でしょうか。

まずは自社の本業である運行事業のロイヤリティを向上させることだと思います。そのために、選ばれ続ける運行事業者として強い地位の確立と、利便性の高いプラットフォームを構築することが必要です。

そして構築したプラットフォームを提携先の事業会社にも使ってもらいたいと思われるMaaSシステムとして認知させることが重要です。

これにより多くの事業会社と提携することができ、様々なサービスを生む土壌を作り上げることができます。

「運行事業者の利益」、「提携先の事業会社の利益」、そして「エンドユーザーの利便性の向上」の全てをMaaSにより達成することができる可能性があります。

MaaSのポテンシャルをあげるためにも、オープンイノベーションを進めていくことが重要だと思います。


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