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器の里を訪れる旅(1)小鹿田焼 唐臼祭

大分県日田(ひた)市。

九州の内陸部に位置し四方を山に囲まれた盆地で、まるで下流のように大きい川がゆったりと流れている街。

旅の下調べで飲料水や酒類の工場があると知ったが、なるほど豊富な水に恵まれ発展したということがよくわかる。

訪れたのは5月の頭。下旬からはなんと鵜飼いが始まり屋形船で鑑賞できるという。

(写真 宿泊した温泉旅館の6階から望む三隈川。鵜飼いシーズンのにぎわいはどれほどだろうか。)

旅の目的は「小鹿田焼 唐臼祭」。

小鹿田焼(おんたやき)は、独特の技法によって作陶され、特徴的な模様を持つ。

(写真 私物の小鹿田焼。規則的な模様が刻まれているが、機械は一切使われていない。どうやって作っているのか、ぜひ想像していただきたい。)

この技法は、親から子のうちひとりに対して伝承される「一子相伝(いっしそうでん)」によって、18世紀から今日まで脈々と受け継がれてきた。国指定重要無形文化財である。

毎年5月3日、4日に、小鹿田焼を作陶する十軒の窯元が、窯出ししたばかりの器を軒先や作業場に並べて販売する。この年に一度の機会が、唐臼祭(からうすまつり)。

その初日に念願の訪問を果たした。

小鹿田の里は、端から端までノンストップで歩けば10分程度の小さな集落。しかし、陶芸館を鑑賞し十軒の窯元すべてで器を吟味するには、二時間では足りないくらいだった。

まずは集落の上にある「日田市立 小鹿田焼陶芸館」へ。ここでは、小鹿田焼の歴史や成り立ちを知ることができる。期せずして、バーナードリーチの大皿にも出会った。

(写真 小鹿田焼陶芸館の資料の一部。普段なかなか目にすることのない、大きな皿や壺もたくさん。小鹿田焼の作り手は、これが作れるようになって一人前という。)

おすすめは30分ほどのドキュメンタリー映像。

これを通して見ることで、小鹿田焼がいかに手間ひまかけられて作られ、三百年間絶えることなく続いてきた貴重な文化であるかを実感することができる。

日田市立小鹿田陶芸館

陶芸館で気持ちを高めたところで、いよいよ唐臼祭へ。

所せましと並べられた小鹿田焼の数に圧倒される。数件めぐると、同じ小鹿田焼でも作り手によって表情が異なることがわかった。

祭の時期ならではだろうか、小鹿田の里は開放的な雰囲気で、次々と人が訪れカメラを片手に歩く者も多く、工房や登り窯をじっくりと眺めることができる。お茶を出す窯元もあった。

個人的な感想は割愛するが、器と風景を楽しんでいると時はあっという間に過ぎ、後ろ髪ひかれる思いで小鹿田の里をあとにした。

ところで唐臼祭の「唐臼」とは何か、ご存知だろうか。

わたしはそれを知らないままこの地を訪れたが、それがかえってよかった。予備知識なく初めて見る景色に、感動が倍になった。旅は調べすぎずに行くのもいい。

どうしても気になる方は、こちらのYouTubeをご覧いただければ。

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ここから先は、以下4項目について個人の体験・感想を記載しています。実際に行かれる方のご参考になるよう、1.を中心に具体的に書きました。

1.東京から小鹿田の里への交通手段
2.日田市のお宿(個人的には失敗談)
3.食べログには載っていない日田市で美味しかったお店
4.小鹿田の里 窯元マップ

※2016年5月3日時点での情報です。個人の体験・感想であり、旅の下調べのご参考としてお読みください。

1.東京から小鹿田の里への交通手段

①羽田空港→福岡空港

日田市は大分県ですが、大分空港からは遠く、福岡空港もしくは長崎空港のほうが近いようです。わたしは、行きに福岡空港、帰りに長崎空港を使用しました。大型連休に訪問予定だったため、JALのウルトラ先得解禁日に候補のフライトをいくつか仮押さえし、スケジュールを組み立ててから本確定しました。なお、羽田〜福岡便は本数が多いですが、羽田〜長崎便は少ないですのでよくお調べください。

②福岡→日田

福岡から日田への高速バス「ひた号」を利用しました。福岡の主要駅付近や空港から乗ることができ、日田市内に数カ所の降り場があります。日田駅に最も近いのは「日田バスセンター」で駅の目の前です。このひた号、本数が多く予約不要のため、とても便利に感じました。わたしは「西鉄天神高速バスターミナル」から乗車し、「日田バスセンター」で下車しました。車窓からの景色をぼんやり眺める90分間の移動です。

西鉄天神高速バスターミナルは新しくできたばかりらしく、きれいで清潔な空間でした。チケット売り場の窓口の方が自動券売機を案内してくれたのですが、その場に連れて行くだけではなく画面をタッチするところまでやってくださったのが印象に残っています。カフェやコンビニが併設されており、快適にバスを待つことができました。九州の各方面へのバスがひっきりなしに発着しています。

ひた号

西鉄天神高速バスターミナル

③日田駅→小鹿田の里

マイカー以外で日田駅から小鹿田の里へ行くには、ローカルバスかレンタカーを使うことになります。唐臼祭の二日間に限ってはリムジンバスが運行されるため、わたしはこれを使いました。日田駅から車で小一時間かかるため、タクシーですとなかなか高額になるのではないでしょうか。

(1)ローカルバス

「小鹿田線」の始点「日田」から終点「皿山」まで乗り、50分程度です。日に往復3本ありますが、滞在時間を考慮すると実質的には、行き11:15日田発・11:54皿山着、帰り16:35皿山発・17:14日田着を使うしかないようです。始点「日田」のバス停は日田バスセンター内にあるはずですが、きちんと目で見て確認はしていません。ごめんなさい。

日田バス株式会社(時刻表、路線図など)

(2)レンタカー

インターネットで下調べした際、日田市内には、駅レンタカー、トヨタレンタカー、タイムズレンタカーの3社があることがわかりました。わたしは小鹿田の里への交通手段には使いませんでしたが、日田から有田・波佐見へ足をのばすのに、駅レンタカーを利用しました。(ちなみに日田から有田・波佐見へは、Googleでは片道90分と表示されますが、実際には2時間かかりました。往復4時間。日帰りの移動はおすすめしません。)

決め手は駅から最も近い(日田駅内)ということです。インターネットの料金シミュレーションでも、3社の中で最も安かったような記憶があります。

駅レンタカーの受付窓口は日田市観光協会の窓口と一緒で、本来の返却時間は窓口が閉まる17時までです。ただ、わたしが利用した時は18時に融通していただきました。駅レンタカーは他社の空車を使用していて、直接他社へ返却するという手段で調整できる場合もあるようです。

駅レンタカー

(3)リムジンバス

唐臼祭の二日間限定ですが、日田市観光協会が用意するリムジンバスがあります。日田バスセンターから小鹿田の里への直行便です。当日受付で乗車している方もいたようですが、事前予約したほうが安全です。わたしは予定変更があった関係で、前日に日田市観光協会の窓口で予約しました。

日田市観光協会

④日田→長崎

日田から長崎への高速バス「サンライト号」を利用しました。日田市の乗り場は「高速日田」で大分自動車道沿いにあるため、日田駅からタクシーで高速バス乗り場まで行きました。降り場は長崎県内にいくつかありますが、長崎駅に最も近いのは「長崎駅前交通会館」です。わたしは前日に電話予約をして当日降車時に運賃を払いました。事前にインターネットで予約、支払いすることできるようです。

サンライト号

⑤長崎駅→長崎空港

長崎駅から長崎空港へは、「長崎空港リムジンバス」を利用しました。長崎駅の道路をはさんで向かいにあるバスターミナルから乗車し、空港まで小一時間程度です。長崎空港は、大村湾に浮かぶ出島になっています。海にぽっかりと浮かぶ空港。予想していなかった景色でした。

長崎空港リムジンバス

2.日田市のお宿

大型連休に宿泊予定だったため、飛行機を予約するタイミングで楽天トラベルで空室を探し、検索結果でいちばん安い宿(一泊15,000円程度)をおさえました。今回の旅では、宿にこだわるつもりがなかったのです。それにしても、お食事処でこどもが走り回って他人の個室に入っても注意しないなど、私にはおすすめができないと感じましたので、残念ながらこちらでご紹介できません。

3.食べログには載っていない日田市で美味しかったお店

日田市では、宿泊先で夕食と朝食を頂き、唐臼祭当日の昼食を外で頂きました。昼食は小鹿田の里にある「山のそば茶屋」に行く予定でしたが、器選びに夢中になり時間切れ。行くことができませんでした。代わりに寄った、日田駅前の日田バスセンター内にある、うどん・そばのお店が美味しかったです。旅で疲れた体に染み込む、滋味あふれる九州のお出汁を堪能できます。

4.小鹿田の里 窯元マップ

こちらは、小鹿田の里へのリムジンバス乗車時にいただいたマップです。乗車場所・降車場所というのはリムジンバスのことですので気にしないでください。似たような地図は、陶芸館のパンフレットにも掲載があります。

わたしはマップの左側、陶芸館から、マップの右側、山のそば茶屋方向へ歩きました。ノンストップで歩けば10分程度です。駐車場もいくつかありますのでマイカーでも気兼ねなく訪れることができます。

すべての窯元をめぐると、同じ小鹿田焼でも窯元別に「細かい」「力強い」「落ちついた」「精緻な」といった特徴があることがわかり、じぶん好みの作風が見つかります。

これを読んでくださったみなさんが、実際に小鹿田の里へ足を運び、行った方にしかわからない空気を感じ、好みの逸品に出会えますように。

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