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乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(1)

秋田育ちゆえ、温泉といえば乳頭(にゅうとう)温泉郷がまず頭に浮かぶ。子どもの頃に家族で泊まったことはなんとなく覚えているし、ここの温泉に入ると心も体も芯からほぐれ温まり、象牙のようにしっとりなめらかな肌が手に入るので、大人になってからも何度か足を運んでいる。

乳頭温泉は秋田県の西側、奥羽山脈のふもとにある秘湯で、鶴の湯をはじめ七つの宿があり、それぞれ異なる源泉を持つ。もちろん効能も異なるため、湯めぐりすれば体のあちこちがじわじわと喜んでいく。

二〇一九年二月。十数年の付き合いになる友人と旅行したいねという話になり、乳頭温泉を提案した。インスタグラムで最近の「#乳頭温泉」を見せ、何かと日本一の温泉に選ばれていることと伝えると、東京生まれの彼女も乗り気になってくれた。

さっそく、旅の手配をする。まずは宿。蟹場(がにば)、孫六、黒湯、大釜(おおがま)、妙乃湯、鶴の湯、休暇村(きゅうかむら)と七つの宿があるが、初めて訪れる人と一緒なら、やはり歴史ある鶴の湯がいいだろう。ただ、人気が高いので空きはないかもしれない。そうすると、インテリアやおもてなしが女性に受けそうな妙乃湯か。個人的には、川沿いでせせらぎを聞きながら湯に浸かる孫六も気に入っている。

物は試しと鶴の湯に電話をすると、二月は二つの日程のみ空きがあった。といっても、囲炉裏があってランプの灯りで部屋食を楽しめる本陣ではなく、和室六畳の別館だが。本陣に泊まりたいなら、半年前には予約しないと間に合わない。友人に、山奥だから電波はないかもしれないし、別館の狭い和室だからお部屋には期待しないでと念を押して、鶴の湯に泊まることにした。

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