見出し画像

乳頭温泉郷 湯めぐり旅 in秋田(4)

「秋田新幹線はローカル線と同じ線路を走るんだよ」「唐松神社は子宝で有名で知り合いにも子供が生まれたんだよ」「秋田は自動車がないとどこにも行けないって言ってた意味がわかったでしょう」。エアポートライナーは他愛のない会話をのせて田舎道をひた走る。冬枯れた何もない風景も、友人には水墨画の世界のようで新鮮らしい。

角館の武家屋敷、田沢湖畔の土産店でぽつぽつと乗客が下車し、いよいよ温泉郷が近くなる。「だいぶ上がって来たねえ」「テンションが?」「ううん、標高」。たざわ湖スキー場を通り過ぎ、鶴の湯入口の看板から脇道に入ると景色が一変した。両脇には人の背を軽く超える高さの雪が積もり、道路のアスファルトは雪に覆われて見えない。細く曲がりくねった山道を奥へ奥へと進む。地図で見ると入り口の看板から鶴の湯まで2km程度だが、思ったよりも長い時間を車に揺られ、ようやく到着した。

そこには、数年前と変わらない鶴の湯の姿があった。お殿様の時代からある茅葺き屋根の本陣、もくもくと立ち込める湯気、広い露天風呂、その向こうに覗く山肌。雪に囲まれているため、太陽の光が反射してまぶしい。お決まりの写真を撮り、受付を済ませる。お部屋が利用できるまでまだ時間があり、お昼をとって乳頭温泉郷の湯めぐりをすることにした。

乳頭温泉郷には七つの宿があり、それぞれ異なる源泉を持つ。ただし冬季は黒湯と、今シーズンから孫六温泉が休業しているため、この旅で楽しめる温泉は五つ。宿泊客だけが購入できる「湯めぐり帳(1,800円)」は、各温泉宿に一回ずつ日帰り入浴することができ、乳頭温泉郷を巡回するバス「湯めぐり号」に自由に乗り降りできるパスポートで、有効期限は一年間ある。

時刻表を確認し、はじめに蟹場(がにば)温泉まで乗り、そこから大釜(おおがま)、妙乃湯と歩いて、妙乃湯から鶴の湯まで最終便で戻ろうと計画した。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?