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【31〜32巻】『進撃の巨人』で描かれた多種多様な「自由」を紐解く⑨

最終PV公開されましたね。兵長がビュンビュン動いてるだけでバイトの昼休みに半泣きになるオタクになってしまった…MAPPAさんありがとう…

いやリンホラ!! Linked Horizonが主題歌??!? 2曲も??! 分割版にはヒグチアイも?!! やっぱ「調査兵団 vs 巨人」の主題歌はRevoさんしかいないとは思ってましたけど夢かと思った…アルバム『進撃の軌跡』何回聴いたと思ってんの…フェス2日とも当たりますように! 修論締切直前とか知らん!!

さて、「悪魔」の島であるパラディ島でガビは価値観を根底から覆されました。「悪魔なんていなかった」「この島には人がいるだけ」だとようやくガビは気づくことができました。親世代から続く教育や環境の呪いからようやく自由になれたのです。

人を殺すことも相手が「悪魔」だからと正当化していたガビも自分の罪と向き合うことになります。犯した罪に対してどうすれば自分が救われるのか、これが地鳴らし編の重要な考え方になります。

その直後「お前が好きだ」と言い出すファルコ。

「オレはお前のなんだ」とか言ってた奴が情けないよ
この後しっかり巨人化させるあたりやっぱりリヴァイ班を全滅させた作者だなと思います。

ジークの叫びにより現れた無数の巨人でしたが、地鳴らしを発動したエレンにジークが取り込まれたことで統制を失い暴走を始めます。その巨人に襲われたカヤを、なんとガビが捨て身の攻撃で助けたのでした。カヤは命がけで自分を助けたガビの姿にあの日のサシャの面影を見ます。

幾多の試練を乗り越え「自分の中にいる悪魔」に気づいたガビは、内から湧き上がってきたなりたい自分を選び取ることができました。そしてその悪魔はみんなの中にいるとニコロは悟ります。

じゃあどうすればいいのか?それはどれだけ困難が待ち構えていようと「森から出ようとし続ける」しかありません。サシャの生き様が多くの人にそれに気づかせ、生者たちはサシャの死に意味を与えたのでした。

もう一人色々な意味で解放された人物がアニです。

始祖の巨人を掌握したエレンにより全ての硬質化が解かれ、自らを水晶に封印していたアニも解き放たれたのでした。かつてのルームメイトであるヒッチと再会したアニは、壁内を地獄に変えたことをどう思うのか自分の今の考えを語り始めました。

かつてのアニは「自分を含めて命に価値があるとは思えなかった」、だから全てが無意味だと思っていたと語ります。

そんなアニを変えたのが育ての父親との最後の会話でした。アニの父はアニを「戦士」にするために格闘術を叩き込み戦闘マシーンのように育てますが、パラディ島へ出発する直前に「全て間違っていた」「全てを捨てていいから帰ってきてくれ」と懇願したのでした。こうしてアニにとっての希望は「父の元へ帰る」ことになったのです。

アニは結晶化している間にそれを認め、自分の罪を受け入れた上でそのためなら「また同じことをやる」と宣言します。自分の自由のために。

そんなアニにもさらなる試練を与えるのがこの物語なのですが。

また、地鳴らしによって試練に直面したのがアルミンとコニーです。

アルミンは地鳴らしが発動した状況においても優れた状況分析力を発揮します。しかしあまりの混沌とした状況に憤りを隠せません。仕舞いにはミカサに当たり散らかしてしまう始末。

そしてアルミンは「生き返るべきだったのは 僕じゃなかった」と自分を責めてしまいます。アルミンは託された夢も責任も自分のものとして引き受けることがまだできていませんでした。

一方、エレンに対する疑念や怒りが104期生の中で最も高まっていたのがコニーです。サシャが亡くなったことを嘲笑った(ように見えた)こと、故郷を地獄に変えたジークと同調している疑惑が出たことの二つが原因なので仕方ないことですが。

そんなコニーに悪魔の誘惑が訪れます。顎の巨人を継承したファルコを使えば巨人化した母親を人間に戻せると考えたコニーはファルコを無理矢理連れ去ってしまいます。

旅立ちの日に母親がかけた言葉は「みんなを守る立派な兵士になっておくれ」でした。しかし今の自分は兵士の務めを放棄し、子どもを犠牲にしようとしている…コニーはこのことを見て見ぬふりをします。

自分を止めに来たアルミンに対しても「正しいお前なんかに! 馬鹿のことなんてわかんねぇよ!」と開き直ってしまいます。コニーにとっては自分を騙すための言葉でしたが、アルミンにもこの言葉はしっかり突き刺さってしまいます。

心が折れたアルミンが自らを母親に喰わせようとしたのを見てコニーは自分の良心を取り戻しました。母親の願い、そして自分の良心に従ってより良い世界のためにエレンの地鳴らしを止める決意を固めることができたのでした。

より良い世界のために心臓を捧げてきた調査兵団組織はもう事実上消えてしまいました。ですがその理念が消えることはありませんでした。

ジャンも、フロックの「もうお前らは戦わなくていい」という言葉に惑わされかけますが、ハンジの「この島だけに自由をもたらせばそれでいいというそんなケチなことを言う仲間はいないだろう」という言葉で本来の自分を取り戻します。自分を調査兵団に導いたかつての親友を思い浮かべながら。

こうして殺し合いをしていた調査兵団とマーレが手を組み、全人類の平和と自由という理想のために立ち上がるのでした。全ては昨日よりもより良い世界のために。オレたちは自由だ!

(やっと31巻おわった…)

で、最初にやるのが「話し合い」ってわけ。

「フード理論」的には同じ釜の飯を食うことで彼らは仲間であることを確かめ合っているのですが、一人シチューを食べようとしないイェレナは彼らの関係を悪くするために互いの罪を確認させ合いはじめます。

ジャンはライナーからマルコの最期の言葉である「俺達はまだ話し合ってない」を聞くことができ、そこにかけがえのない何かを見出します。しかし罪悪感に耐えられなくなった(空気の読めない)ライナーがマルコの死の詳細をべらべらと喋りはじめ、我慢の限界を超えたジャンはライナーの顔をボコボコに殴りました。

ですがこの一波乱があったことでジャンはマルコを失った喪失感を素直に受け止めることができ、ライナーもまた自分の罪を自分のものだと引き受けることができました。お互いが対等な関係になる第一歩です。

世界を救うと決めた調査兵団たちでしたが、彼らを待ち構えていたのは新たな通過儀礼でした。それは「かつての仲間を殺さなければならない」というもの。

次々と襲いかかる過酷な試練が彼らを試しているのです。本当にその掴み取った精神の自由を自らの選択だと引き受ける覚悟があるのかを。そしてその選択に対し後悔することなく前へ進めるのかを。

戦いの直前、マガトは自らの後悔を語りました。過去の歴史を理由に卑劣な自分たちを正当化していたことをです。この島に来て別人のように成長したガビを見て自らの愚かさに気づいたのでしょう。

マガトは元々、航空機の技術発展が進む中でも巨人の力に頼り切りなマーレ軍に批判的でした。マガトから言わせれば、マーレ人は「新聞を読んでいるだけで領土が広がる」「鉄砲玉を浴びるのが手懐けた悪魔の末裔ならなおのこといい」というのが共通認識でした。

マガトは始祖奪還計画をたった4人の子供に託すという判断も正気とは思えないと自らの良心に気づいていました。ですが軍の決定には逆らえず見て見ぬふりをしました。その結果二人の子供が命を落とすという結果になってしまったのですが。

イェーガー派の増援を食い止めるため殿を務めることを決めたマガトは同じ目的のキースと出会います。パラディ島とマーレ、二人の教官は教え子たちの成長と自分の情けなさを語り合いました。

『進撃の巨人』では、親世代が何も知らない子供たちに思想を押し付け罪を背負わせる描写が多く見られます。本来であれば子供はただ幸福で自由であるべきです。大人たちは多くを失ってようやくそれに気づくことができました。

かけがえのない何かを掴んだ二人は、生者に意味を託して最期を迎えました。この局面で鉄板パターンが帰ってくるのが熱い!

本章の最後は、いよいよ地鳴らしを開始したエレンの頭に様々な記憶が蘇ってくるシーンから。

すべてが最初から決まっていたとしても
すべてはオレが望んだこと
すべては… この先にある

エレンは進撃の巨人の能力で断片的に未来を知っていました。未来の記憶があるということはつまりすでに決定された未来があるということ。そして未来は変わることはない。ではそれを知ったエレンは物語の奴隷だったのか? 自由意志なんて存在しないのか?

おそらくそうではないでしょう。エレンは自分の意志でこの選択をしたはずです。なぜならエレンがそういう人間だから。わたしは絶対に変えることのできない不動の未来があるのではなく、すべての自由意志が織り込み済みで必然的に訪れる未来があって、エレンはそれを見たのだろうと思います。

未来を知ったエレンは「すべてが最初から決まっていた」ように感じたでしょう。でもエレンは「すべてはオレが望んだこと」と自らの選択を引き受けました。

過去の記憶の中で、エレンは初めてマーレに渡る前にヒストリアと密会していたことが明かされました。

エレンは兵団がジークをすぐにヒストリアに喰わせるのを見抜いていたため、自らの計画を明かしてまでヒストリアを守ろうとしました。それはヒストリアやその子供を家畜のようにする計画にエレンの自由の精神が賛同できなかったからです。

ヒストリアはそれを「胸を張って生きていけない」と止めようとしますが、エレンは「あの時オレを救ってくれた世界一悪い子」だろと返します。

ヒストリアは王政編で、私は「最低最悪の超悪い子」で「つまり人類の敵」だから始祖を継承して巨人を駆逐するなんて使命ほったらかしてでもエレンを救う、私は人類の敵だけどエレンの味方と宣言しました。

それと同じでエレンは、自分は人類の敵になるけどヒストリアの味方だと伝えたのです。そしてお前がオレためじゃなく自分の勝手でそうしたように、オレも自分の勝手で世界を滅ぼすと遠回しに宣言しました。

ヒストリアはそれを理解したのかそれ以上の説得はせず、折衷案(?)として自分が子供をつくれば時間は稼げるはずと提案しました。

(世間ではヒストリアの子供の父親エレン説とかいうトトロのそれみたいな都市伝説が横行していますが、わたしはエレミカしか認めてないので!!! この話は終わりだ!!!! ※エレミカへの思いは本シリーズ①を参照)

地鳴らしを迎え撃つために集結した世界連合艦隊。それを見下ろすかのように羽ばたく鳥。このエピソードのタイトルは「人類の夜明け」でした。

世界連合艦隊はあっさり敗れ去り、残された兵士の目に映るのは幾千万の超大型巨人と平和への反逆者となった「進撃の巨人」の姿でした。

エレンの選択は誰にとっての「夜明け」となるのでしょうか…。

次回はアニメ最終回前の最後となる33巻です。
完結編前編の再放送に間に合いませんでした。
今日は心して見よう。

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