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海外大学院で実務と研究の間を行き来する醍醐味3選

リトアニア大学院での2nd セメスターが
全て終了した。

7科目中で5科目満点・好成績により金銭的な
インセンティブをいただいた前学期より
良い成績で一安心。

リトアニアで最も教育レベルが高い大学院で
学べるありがたみと
学ぶ面白みを身に染みて感じる日々。
と同時に、大学院進学前に心身共にノックダウン
寸前まで、もがき苦しんだ時間は
無駄ではなかったと確信を持てた。

新学期の9月からは修士論文の執筆のみとなる為
12月の論文提出まで指導教官の教授をフル活用して
意義のある中身にしたい。

私の修士論文のトピックは
「リトアニアにおける難民起業家育成の課題と
その提言」で考えている。

実際に、今期は修士論文の前段階として20頁の
プレ論文で先行研究のレビューに取り組んだ。

1月よりリトアニアの難民支援のNGOでインターンをしており、インターン先で行っている
プロジェクトをそのまま修士論文のテーマに
落とし込んでいる。

まさに実際に私が取り組んでいる実務・実践と研究との間を行き来しており、これが面白い!

社会科学・開発学等の国際協力系の大学院で
学んだ事が卒業後や実務に全く役に立たないという
批判をよく見聞きする。

せっかく莫大な時間とお金を投資しているのだから
理論と実務の紐付けを行いたいと考えていた。

この考えに対する解は
修士期間で自分のテーマと関連する組織でインターンを行い、難民起業家、支援団体のスタッフへの
インタビュー等研究テーマの一次情報を
収集することだ。

今回のNOTEでは、大学院生が実務と研究を行う中で感じる醍醐味3選を取り上げたい。

醍醐味1:メタ認知を行うことで体系立てて実務に向き合える

1つめは、大学院期間で関連実務に携わることで
適時メタ認知する機会に恵まれ
実際の事象を体系立てて考えられることだ。

メタ認知とは、自分自身を『幽体離脱して上から見る』と呼ばれ、視野を広げて自分を客観視するために必須の姿勢(細谷,2016 p.3)。

下記の図のように、より抽象的に、上位概念としての物事の見方である。

出典:細谷,2016,p31から図4抜粋

大学院で理論や知識だけをインプットしていると
様々な問題・論点の抽象化概念だけを知り
実務との相関性が見えにくい。

一方で実務だけに集中していると
目の前の課題に囚われ、本質的な問題や抽象化する機会が乏しくなりやすい。

だからこそ、実務と研究の間を行き来することは
理論に当てはめて考察、分析を行い
実務で直面する問題範囲の拡張に気付く機会を
得られる。

大学院で実務と研究の両輪に触れる醍醐味は
この点にあると思う。

卒業後にフルタイムで実務に携わると
業務への忙殺されることによってメタ認知する機会
が少なくなる傾向があるからこそ
実務と研究の間を行き来を実感すること
が修士期間で大事だと考える。

醍醐味2:先行研究の論文に色がつく・情景が思い浮かぶ

2つ目は、先行研究の論文にはっきりと色をつけることができることだ。

言い換えると、
過去の学者が主張した論点を実務と紐づけして
くっきりと情景を思い浮かべることができる。

例えば、今期で私が読み込んだ論文の1つで
トルコ国内の難民起業の課題に関する論文では
難民起業家へのインタビュー調査をもとに彼らが
直面する課題を主に4つ取り上げていた。

Figure 1. Typology of challenges of refugee entrepreneurship.
(Alrawadieh et al., 2018, p728)

この4つの課題を把握した時、
私が実際に関わっているウクライナ避難民の方々が
参加しているワークショップの内容と照らし合わせて考察した。

この先行研究の考察からは、インターン先のプロジェクトでは
market-related issuesととsocio-cultural課題に注力していることが分かり
彼らの財政的なサポート支援が大きな課題として
浮き彫りになった。

このように、世界中の学者が過去に主張した論点やフレームワークが
机上の空論ではなく、私が現場で見ている光景と
紐付けできる・腑に落ちて分析できる
ことは大きな醍醐味だ。

ちなみにトルコのケースからリトアニアの事例を推論することはアナロジー思考と呼び、
抽象化+具体化のプロセスだ。

出典:細谷,2016,p82 図17抜粋から黄色部分を追記

実務の内容を研究に取り込むことで
一見遠い世界(例えば他国の難民起業家の事例)と
関心領域(リトアニアの事例)を分析、考察し
抽象化した共通点を探った。

このプロセスを通じて、問題の拡張や共通点の発見(アハ体験)を感じる瞬間がたまらない。

醍醐味3:実務でスルーしていた言葉の定義を深堀出来る

3つ目の醍醐味は、実務をメタ認知して
研究に落とし込むことで
言葉の定義を熟考する機会に恵まれる。

例えば、論文で多用していた
Entrepreneur(起業家や新事業をゼロベースから起こす人)、Social Integration(社会統合)は
インターン先の上司や同僚とのミーティングで
度々使用していた。

一方で、論文に落とし込んだことで
指導教授にその言葉の正確な定義やEntrepreneurとStart-upとの違いを
明記するように指摘を受けた。

日常で頻繁に使っていた言葉の数々を
十分に咀嚼せずに使用していたことに研究を通じて初めて気付いた。

重要な言葉の定義を正確に捉えることは、
そもそもの上位目的、つまりその背景にあった本当の問題は何だったのか
メタのレベルを上げることに繋がる。

醍醐味3選のまとめ

大学院期間で研究と実務を行き来する醍醐味3選をまとめてみると
学ぶ面白さを噛み締めることができる。

この一言に尽きる。

もちろん、全く簡単では無い。
先週まで論文提出前は深夜まで図書館に篭り
先行研究を読み漁り、
深夜1時、途方に暮れながら
寮に戻る日々が続いていた。
修士論文提出前は、より大変になるだろう。

しかし、頭を悩ませながら明確な解が無い中で
実務で感じたことが論文でも
同様なケースを見つけた時
実務で活かせそうな論点に気付けた時は、
中々格別だ。 

大学院期間を終えて実務の世界に戻ると
どうしても目の前の仕事に追われて
俯瞰して考える時間と機会が少ない。

大学院期間で研究に活きた実務、実践の場を組み込むことで学ぶ面白さ、リアルなメタ認知訓練・
社会に貢献するかもしれない研究期間になり得るかもしれない。

英語の勉強教材でお世話になっている旺文社の
ブランドスローガン
「学ぶ人は、変えてゆく人だ。」
を信じたい。

大学院期間で実務と研究を行き来することで
目の前の課題を変えられるきっかけ作りや
自身のキャリアをアップデート出来るよう
学び続けたい

旺文社: https://www.obunsha.co.jp/pr/change/


参考文献:

関連NOTE:
実務と研究の行き来・メタ認知スキルの向上は
まさに情報生産の実践力の向上とも直結する

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