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『フルカラーでやさしくわかる!テーピングの基本』note連載/第1回:上方関節唇損傷(野球肩)

今年の3月12日ごろに『フルカラーでやさしくわかる!テーピングの基本』という書籍を刊行させていただきます。

この書籍のうち,5項目分をnoteに無料で公開します!

第1回:上方関節唇損傷(野球肩)
第2回:TFCC損傷
第3回:前十字靱帯損傷
第4回:シンスプリント
第5回:足底腱膜炎

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『フルカラーでやさしくわかる!テーピングの基本』
編著:大内 洋(亀田メディカルセンタースポーツ医学科 主任部長)

・これからテーピングを学びたい!得意になりたい!という方に向けて、テーピングの技術をしっかり習得するための「疾患に対する知識」と「テーピングの理論とテクニック」をこの1冊に集約しました。

・フルカラーの図と写真で理解しやすく、実際のテーピング動画も一部の項目で閲覧できます。「どのような疾患によく遭遇するのか?」という観点で構成を考えている実用的なテキストです。

定価(本体4,000円+税),B5,フルカラー,236ページ
14本の動画,無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)。


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第1回/上方関節唇損傷(野球肩)

執筆
越田専太郎(了徳寺大学健康科学部 教授)
大内 洋(亀田メディカルセンタースポーツ医学科 主任部長)


はじめに

肩関節は上腕骨頭と肩甲骨関節窩からなるが,この関節窩の周囲を取り囲んでいる軟骨組織が関節唇である(図1)。この関節唇の上方には上腕二頭筋長頭腱が付着しているが,同部が牽引されたり,ねじれたり,圧迫されることで損傷するのが上方関節唇損傷(superior labrum anterior and posterior lesion;SLAP損傷)である。

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症状
・運動時のロッキングやキャッチング,弾発現象,轢音
・肩関節の運動時痛〔特に肩関節の最終外転位での内外旋(crank test),もしくは上腕内旋位での肩屈曲運動(O’Brien test)〕
・頭上に物を持ち上げる動作での疼痛
・肩関節筋力低下
・肩関節の不安定感
・肩関節可動域減少
・投球時の球速低下
・投球後の肩の脱力感(dead arm症状)
発生原因
・上方関節唇損傷は急性外傷から生じることも,反復性の動作による慢性障害として生じることもある。
・交通事故でハンドルで肩が突き上げられる
・転倒時に手をついて肩が突き上げられる
・重い荷物を止めようとして強大な力で引っ張られる
・オーバーヘッド肢位で肩関節の急激な動作(投球,重量挙げ,など)
・肩関節脱臼


テーピングの目的

腱板筋群の上腕骨頭支持作用の補助および肩関節の過剰な水平外転と外旋を制限し,オーバーヘッド動作(投球,スパイクなど)に伴う違和感や不安感を低減させることが主な目的となる。

効用
:オーバーヘッド動作に伴う肩関節の違和感や不安感の軽減
に伴う一時的な肩関節機能の改善
ターゲット
・腱板(棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋)
・上腕骨頭,関節包,肩甲上腕靱帯


上方関節唇損傷(野球肩)に対するテーピング



スタート姿勢:坐位

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使用するテープ
・粘着性アンダーテープ(カバーロールストレッチ)100mm幅
・非伸縮性リジッドテープ(ロイコテープ) 38mm幅または50mm幅
・ハード伸縮テープ 75mm幅
Step 1:アンカー

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Step 2:上腕骨頭の前方・下方偏位の制限

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Step 3:上腕骨頭の後方・下方偏位の制限

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Step 4:肩関節の外旋運動の制限

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Step 5:アンカー

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コツと注意点

・肩関節運動の制限は,不安感の程度によって調節する。
・外旋制限テーピング貼付の際は胸郭を広げた(胸を張った)姿勢を維持させる。
・血流を制限する可能性があるので,上腕中央部にアンカー貼付の際,患者には上腕筋群を収縮させておくように指示する。
・貼付後,肩関節外旋が制限されているかを確認する。
・肌が弱い対象に対する非伸縮性リジッドテープ(ロイコテープ)の使用は,注意が必要である。非伸縮性リジッドテープ(ロイコテープ)が利用できない場合には,非伸縮テープ等で代替してもよい。




第2回はこちら



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