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「小児科医や研修医が必ず知っておくべき,子どもの骨折や肘内障について解説した1冊です」 青木 清 先生(旭川荘療育・医療センター整形外科)著者インタビュー

12月2日に『症例から学ぶ!小児科医のための子どもの整形外科外傷』を刊行します。この本は,良く診る子どもの骨折や肘内障に絞って,症例ベースで診断・治療・経過観察を解説している1冊です。小児整形外科診療の経験が豊富な青木先生に多くの症例を出して頂いて完成しました。

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医学書らしからぬ,癒されるカバーですね。
イラストレーターの伊藤桃子さんに描いていただきました。


目次です。

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青木先生が本書に込めた想いや小児科医や研修医へ向けたメッセージをうかがいました。

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青木 清(あおき・きよし)先生
旭川荘療育・医療センター整形外科(小児整形)診療副部長

1994年岡山大学医学部卒業,同大学院修了。フランス政府給費留学生としてフランスへ留学。その他,イギリス,韓国で「小児整形外科」を中心に研修。岡山大学病院,岡山医療センターなどを経て現職。

日本小児整形外科学会と日本整形外科超音波学会の教育研修委員として研修会やセミナーの企画・運営に携わっています。日本小児股関節研究会,日本股関節学会,日仏整形外科学会などの役員。岡山次男会・B型の会・イタリア好きの会,会員。

イギリス,韓国,イスラエルで講演歴があります。第17回日仏整形外科学会(岡山→直島)の会長として藤原憲太Dr.と共同開催。2020年山内逸郎記念賞受賞。医師免許,医学博士,日本整形外科学会専門医,英検準1級,仏検3級,イタリア語検定5級,ワインエキスパート。


先生こんにちは。本の紹介,よろしくお願いいたします。

ボンジュ~!

まず,「癒しのカバー」を紹介しますね!このカバーは,無印良品やオレンジページなどでもご活躍されているイラストレーターの伊藤桃子さんが,この本のために創ってくださりました。

このイラストは,外傷に伴って三角巾が必要になっても自然治癒力で良くなっていく子どもの姿を表現しています。バラは,最近我が家に仲間入りした「伊豆の踊子」です。

カバーが素敵と周囲からも好評でした。「子どもの整形外科外傷」というタイトルですが,どのようなコンセプトの本なのでしょうか?

今回は,子どもの「骨折」や「肘内障」に絞って解説しています。

特に「肘内障」に関しては力を入れています。
図やイラストをたくさん使って見やすくやさしい紙面を心がけました。「病態」や「治療プロセス」を可視化できるエコーを重視し,静止画像に矢印(↑)や矢頭(▲)を丁寧に配置しました。そして,見る機会が少ない肘内障のエコーや整復操作の動画を掲載することによって,今後必須となる「エコーの動画脳」を鍛える一助となることを目指しています。

子どもの外傷に関わるすべての人が「肘内障」を安全・安心に評価・治療・説明ができるようになるための入門書となれば嬉しいです!


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楽しく読めるページが多いですね。制作の過程で何か意識されたことはありますか?

私は「楽しく学ぶこと」が「独学」におけるモチベーションアップにつながると考えています。

本書では,
①「語呂合わせ」や「言葉遊び」
②「自然の癒し」
③本の内容とは少し離れた「コラム」
④情熱あふれる人物の紹介

などを書いています。

ぜひ,これらを楽しみながら読んでくださいね!


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ありがとうございます。
小児整形外科医として,子どもを診る小児科医やプライマリ・ケア医,そして研修医に「整形外科外傷」で特に知って頂きたいことはありますか。

まず,子どもならではの特徴がいくつかありますので,知っていて頂きたいです。

ちょっとしたことで,「骨折」や「肘内障」が起こります。

「ひび」も(転位のない)骨折ですし,若木のようにしなって曲がった場合も骨折です

鎖骨骨折,肘周辺の骨折,橈骨遠位端骨折,母・小指(趾)の骨折が起こりやすいです。上肢を動かさない場合,常に「鎖骨骨折」を念頭に置きましょう!
本書では鎖骨骨折に関して,①骨折部がずれていて明らかに骨折と分かる場合②転位がなく診断がつきにくい場合の2パターンを提示しています。

・ちょっと転んだだけでtoddler(トドラー)骨折が起こります。

「toddler」という言葉は,聞き慣れないのですがどういう意味なのでしょうか?

「toddle(トドル)」という英単語があって,「よちよち(ちょこちょこ)歩く」という意味です。「toddler」は,その単語の「人」を表す「er」形です。年齢の定義は辞書にもよりますが,私の持っている英中和辞典には「よちよち歩きの(を始めた)幼児(1~3歳をいう)」と書いてあります。

つまり,「よちよち歩きするような子どもによく起こる骨折」という意味ですね。歩行が大人のように安定するのは7歳くらいと言われていますので,多くの子どもに起こりうる骨折です。

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写真:青木先生。後楽園(岡山)周辺にて


整形外科外傷における大人とは違う「子どもならではの注意点」を教えてください。

1つ目は,「成長軟骨板」の存在です。Salter-Hariss分類に従って評価される「成長軟骨板損傷」は,何週間あるいは何カ月,そして時には何年か慎重に経過観察しないと診断できないことがあります。本書では,受傷後2年半後に診断されたSalter-Hariss分類V型の症例を紹介しています。

研修期間の関係で骨折後の過成長や変形のチェックが自らできない時には,遅発性合併症の可能性を丁寧に説明し,その内容を記載した上で後任のドクターに引き継ぐことが大切ですね。

もう1つの注意点として,「Monteggia骨折」や「Tillaux骨折」など,特殊な状態を意識して画像評価することを強調したいです。


最後に何かメッセージをお願いします!

子どもは地球の「宝」であり「希望」です。ぜひ,子ども達の声,familyのお話や想いを「face to face」で「無心」で最後まで「傾聴」しましょう。英語の「hear」でなく「listen」の気持ちで接していると,毎日が「学び」と「癒し」の時間となるのでおすすめです!

子どもの「骨折」や「肘内障」以外の整形外科疾患,例えば,新生児・乳児股関節脱臼の予防活動,成長痛・歩行障害の鑑別診断などに関しては,2022年2月刊行予定の「若手整形外科のための 基礎からわかる!小児整形外科疾患」を参考にしていただけたら幸いです。ちなみに,この本の表紙では伊藤桃子さんの「プリンセス・ヴェール」の切り絵が登場します。こちらも癒されますよ!Coming soon!!

皆さんが,この本を通して子どもの理解が深まり,その知識や経験が日常診療に少しでも生かされることを祈っています。そして,皆さんの日常生活が、子どもとの「face to faceな出会い」を通して愛にあふれhappyになりますように!

青木先生

写真:ワインエキスパートの資格を有する青木先生


ありがとうございました!


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