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『フルカラーでやさしくわかる!テーピングの基本』note連載/第3回:前十字靱帯損傷

第3回/前十字靱帯損傷 

執筆
大澤有美子(亀田スポーツ医科学センター 主任)
大内 洋(亀田メディカルセンタースポーツ医学科 主任部長)


はじめに

前十字靱帯損傷は,スポーツ外傷として非常に高頻度に生じる膝外傷である。この前十字靱帯は,膝関節の中にある靱帯で,大腿骨側の果間外側壁後方から脛骨果間隆起前方へ走行している。
機能としては,大腿骨に対して脛骨が前方に脱臼するのを防いだり,また大腿骨に対して脛骨が内旋しすぎるのを予防している。膝にこれらの力が強く加わり,筋力でカバーできずに靱帯まで強く伸長されると,前十字靱帯はその力に耐えきれずに切れてしまう。これが膝前十字靱帯損傷である。好発種目はラグビー,アメリカンフットボール,サッカー,バスケットボール,スキーでよくみられる。

症状
受傷後初期の症状としては以下のようなものがある。

• ケガした瞬間には轢音や弾発音が生じる,もしくは靱帯構造がちぎれる感触を伴う
• 強い疼痛
• 受傷直後は自力で動ける場合も多い

その後,数分から数時間すると,以下のような症状を呈する。
• 痛みのため動けなくなる
• 膝蓋上嚢を中心として膝の腫脹がみられる
• 腫脹に伴い,可動域制限が出現

さらに数週間すると,症状が以下のように変化してくる。
• 腫脹が軽減
• 可動域制限が改善
• 直線的な運動は問題なくできるようになる
• 日常生活では不便を感じなくなる
• 膝にねじれの力が加わる,急に停止する,方向転換して膝にねじれが加わるような動作で膝崩れが生じる(これをgiving wayと呼ぶ;図1

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発生原因
前十字靱帯が切れる原因は,大きく2つ〔接触型(contact injury)と非接触型(noncontact injury)〕に分けられる。

▶ 接触型(contact injury)
接触型は,膝に直接タックルが入り,膝が内に入る(knee in姿勢;図2)ことで発生する。

▶ 非接触型(non-contact injury)
非接触型の発生原因は,以下の通りである。
• ジャンプの着地時,フェイントのようなターン動作を行う際にknee in姿勢をとる
• スキーで着地時に後方重心になる(図3)

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テーピングの目的

方向転換や急停止時に起こる膝関節の不安定性に対し,過伸展やねじれを制限することで膝関節の安定性を高めることを目的とする。

効用
①膝関節前方不安定性と回旋不安定性のサポート
②膝関節不安定性による不安感の軽減
③前十字靱帯再建術後のスポーツ復帰段階における膝関節サポート
ターゲット
・大腿骨に対する脛骨の前方偏位を制限すること
・大腿骨に対する脛骨の内旋を制限すること
・膝関節の安定による心理的安定を図ること


前十字靱帯損傷に対するテーピング



スタート姿勢:ヒールリフト,膝関節軽度屈曲位,荷重位

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使用するテープ
・アンダーラップ
・ハンディカット伸縮テープ 75mm幅
・ハード伸縮テープ 50mm幅
・ハード伸縮テープ 75mm幅
Step 1:アンダーラップ

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Step 2:アンカー

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Step 3:脛骨の前方偏位を制限するXサポート
(ハード伸縮テープ,50mm幅)

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Step 4:下腿の内旋・外旋を制限するためのスパイラルサポート
(ハード伸縮テープ,75mm幅)

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Step 5:アンカーとラッピング

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コツと注意点

• 踵部を台に乗せ,つま先方向に軽く荷重し,膝関節軽度屈曲位をとる。
• テーピング中は,膝関節軽度屈曲位でしっかりと荷重する。
• アンカーは大腿と下腿の筋を緊張させた状態で巻き,締めつけすぎない。
• Xサポートテープはすべて脛骨粗面を通るようにする。
• スパイラルテープは回旋を制限させるため,しっかりと全体にテンションをかけて巻く。
• スパイラルテープはしっかりと膝窩部で交差させる。
• Xサポートテープとスパイラルテープは,膝関節の屈曲伸展を妨げないようにするため,膝蓋骨にかからないようにする。


第4回はこちら



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