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【識者の眼】「HPVワクチン積極的勧奨再開を喜ぶ」垣添忠生

垣添忠生 (日本学士院会員、日本対がん協会会長、国立がん研究センター名誉総長)
Web医事新報登録日: 2021-11-26

厚生労働省専門部会は2021年11月12日、8年間停止していたHPVワクチンの「積極的勧奨」の再開を決めた。来年度にも再開の予定であり、永年その再開を求めてきた筆者にとっても大きな喜びである。 

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染で発症する。性交渉経験のある女性の50〜80%は生涯に一度はHPVに感染する。大部分は自然消滅するが、HPVに持続感染した女性の一部が子宮頸がんを発症する可能性がある。

HPVには100種類以上の型があり、特に16型と18型のウイルスは発がん性が強い。16型と18型のHPV感染を防ぐワクチンが開発され、世界中で販売されている。最近は9種のHPVをカバーする9価ワクチンも販売されている。

HPVワクチンは世界の約80カ国で国の施策として接種されている。わが国では厚労省が10年11月、小学6年から高校1年の女子を対象に公費助成でワクチンを3回接種する緊急促進事業を始めた。接種率は全国で約70%に達し、13年4月には予防接種法に基づく定期接種が開始された。

そのわずか2カ月後の6月、接種者に全身の痛み、歩行困難、視力低下などの症状を訴える人が多く、厚労省はHPVワクチンの「積極的な接種勧奨の一時差し控え」という政策決定を下した。その結果、全国のワクチン接種率は1%以下に激減した。

海外、国内にはHPVワクチン接種と有害事象に関する研究が複数あり、いずれも因果関係はない、とされている。

WHO(世界保健機関)は14年と15年の2回、専門委員会の調査に基づき、HPVワクチンの安全声明を発表している。

先進国ではHPVワクチンの接種率は非常に高く、欧州の多くの国では70〜90%に達している。日本ではそれが1%以下とはあまりに深刻な事態だ。

子宮頸がんはがん検診により早期発見が可能だが、日本の受診率は4割前後で、欧米の6〜8割に比べて低い。

HPVワクチン接種を再開することにより、子宮頸がんを予防する。仮に子宮頸がんになってもがん検診で早期発見すれば、救命される。現在、わが国では毎年、約1万1000人が子宮頸がんとなり、約2800人が亡くなっている状況を根本的に変える上で、HPVワクチンの接種再開はきわめて重要だ。

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