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【識者の眼】「10月に施行される医療関係職種の業務範囲見直しと『タスク・シフティング』」小林利彦

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)
Web医事新報登録日: 2021-09-02

医療機関内での医師の働き方改革に向けて、以前からタスク・シフト/シェアの推進が叫ばれていた。実際、医療機関は看護師に特定行為研修の受講を積極的に進めてきたほか、診療報酬制度の中では、医師事務作業補助者の活用を図るために加算点数が経年的に上げられていた。しかし、医師事務作業補助者には、法的な面で、医療関連行為の代行等に制限があることから、その他の医療関係職種の業務範囲見直しが望まれていた。

そのような背景のもと、2021年5月28日に公布された「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」に、診療放射線技師・臨床検査技師・臨床工学技士・救急救命士へのタスク・シフト/シェアの推進が盛り込まれ、これら4職種の関係法律が10月1日に施行予定となっている。

具体的には、診療放射線技師は「RI検査のための静脈路確保や医薬品投与、終了後の抜針・止血」及び「医師または歯科医師の指示を受けて、病院・診療所以外の場所で行う超音波検査」の実施が可能になる。また、臨床検査技師は「超音波検査中の静脈路確保、造影剤注入、終了後の抜針・止血」及び「採血等に伴う静脈路の確保、電解質輸液の接続、成分採血装置の接続、終了後の抜針・止血」ができるようになる。臨床工学技士については「手術室等で生命維持管理装置や輸液ポンプ・シリンジポンプに接続するための静脈路確保と接続行為」「輸液ポンプやシリンジポンプを用いた薬剤投与、終了後の抜針・止血」「心・血管カテーテル治療における電気的負荷装置の操作」「手術室で行う鏡視下手術における内視鏡用ビデオカメラの保持等」が行えるようになる。さらに、救急救命士は「救急外来における重度傷病者に対する救急救命処置の実施」が可能になる。

上記いずれの職種においても、これから具体的な運用手順が整備され、教育・講習等が実施されてからの対応とはなるが、臨床現場におけるタスク・シフティング効果は一定程度あるものと考える。ただし、先に述べたような医療行為には、これまで医師・看護師のみに認められてきた業務領域も含まれているので、安全性の担保が大前提となる。

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