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『フルカラーでやさしくわかる!テーピングの基本』note連載/最終回:足底腱膜炎

最終回/足底腱膜炎

執筆
宮本瑠美 亀田スポーツ医科学センター 副主任
大澤有美子 亀田スポーツ医科学センター 主任
大内 洋 亀田メディカルセンタースポーツ医学科 主任部長


はじめに

足底腱膜炎は,踵部の疼痛の原因として最も頻度が高い疾患のひとつである。足趾と踵骨をつないでいる組織(足底腱膜)が炎症を起こし,痛みなどの症状を呈する(図1)。足底腱膜炎もしくは足底筋膜炎と呼ばれている。
スポーツではランナーに多く,好発種目として陸上競技,バスケットボール,サッカーが挙げられる。また,体重が重い人,踵部の支持が悪い靴を履いた場合に生じやすい。

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症状
40~60歳代の人に多くみられるが,小児から高齢者まで生じうる。典型的には踵部底面に刺すような痛みが出現する。
起床後,歩き始める最初の数歩で疼痛が最も強いことが多いが,長時間の立ち作業や,椅子に長時間座っていたあと立ち上がるときにも疼痛が生じる。
一般的に,運動中には疼痛がなく,運動後に症状が強くなることが多い。
発生原因
足底腱膜は弓弦の形態をとり,足底のアーチの形状を保つ作用がある(図2A)。歩行時の衝撃吸収の役割を担っており, 牽引力など腱膜に加わる負荷が大きかったり,踵部に加わる衝撃が大きかったりすると,炎症や微細な損傷を生じて症状を呈するようになる(図2B)
このため,長距離ランナーやクラシックバレエなどのスポーツで生じやすい。さらに,扁平足や凹足,足部障害などで歩行時の足底への荷重分布異常が生じると足底腱膜に負荷が加わり,症状を起こしやすい。一方,原因のはっきりしない場合もある。

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テーピングの目的

縦アーチと横アーチの低下や,足部の回内を制動することで足底腱膜への負担を軽減させ,足底部の疼痛や違和感を緩和させることを目的とする。

効用
①荷重時・踏み込み時の疲労感・疼痛軽減
②歩行や走行時の足底腱膜の伸長痛軽減
③足底腱膜の付着部の牽引や骨棘による圧痛軽減
ターゲット
ターゲットに応じて, 非伸縮性テーピング法と伸縮性テーピング法を使い分ける。また,症状によっては組み合わせることもできる。

▶ 内・外側縦アーチ・横アーチの低下を緩和(非伸縮性テーピング法)
・第1中足骨,内側楔状骨,舟状骨,距骨,踵骨
・第1中足骨~第5中足骨間

▶ アーチをサポートする筋群のサポート(伸縮性テーピング法)
・足底筋膜全体
・後脛骨筋


非伸縮性テーピング法



スタート姿勢:足関節より遠位がベッドから出るように長座位となり,足関節をほぼ直角に保つ(②③も同様)

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使用するテープ
・非伸縮テープ 19mm幅または25mm幅
・ハンディカット伸縮テープ 50mm幅
Step 1:アンカー

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Step 2:内・外側縦アーチのための縦サポート

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Step 3:横アーチのための水平サポート

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Step 4:横アーチのための水平サポート

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Step 5:ラッピング

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ポイント
・非伸縮テープで1周巻いてしまうと,荷重時に足部の広がりを制限し,痛みの原因になるため足背部はあけておく。
・最後に荷重位となり,足部の締めつけ感や底背屈時に踵部後方の違和感がないかを確認する。
・ラッピングの際は強く引っ張らず,軽度の圧迫をかける程度にする。


伸縮性テーピング法



使用するテープ
・キネシオロジーテープ 50mm幅
—足趾から踵部までの長さにカットしたもの 1本
—母趾から踵部までの長さにカットしたもの 1本
—小趾から踵部までの長さにカットしたもの 1本
—母趾から第五中足骨基部までの長さにカットしたもの 1本
Step 1:足底腱膜と内・外側縦アーチのサポート

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Step 2:内・外側縦アーチのさらなるサポート(U字)

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コツと注意点
・Step 1ではテープ貼付ごとに,テープを軽く引っ張るようにする。
・外側縦アーチサポートのU字テープは,強く引っ張らないように注意する。


キネシオロジーテープによるアーチサポート

使用するテープ
・キネシオロジーテープ 50mm幅
—足趾から踵部までの長さにカットしたもの 1本
—母趾から踵部までの長さにカットしたもの 1本
—小趾から踵部までの長さにカットしたもの 1本
—母趾から第5中足骨基部までの長さにカットしたもの 1本

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ポイント

・症状やニーズに合わせて,非伸縮テーピング法や伸縮性テーピング法と組み合わせて活用することもできる。

コツと注意点

・足部は,テーピングのしわや強さ,厚みなどにより違和感や痛み,擦れを感じやすい部分である。テーピングの張力やしわなどには,よりいっそうの注意が必要である。

• 競技種目によっては足底の感覚に敏感な選手が多い。そのため,選手の感覚や要望を注意深く聞きながら進める必要がある。
〈例〉足関節にかけたくない。足部のきつさを感じる,など。

• 巻き終えたら,荷重した状態でアーチの落ち込みが抑えられているかをチェックする。


『フルカラーでやさしくわかる!テーピングの基本』
note連載 おわり



ぜひ,書籍を手に取っていただけますと幸いです!


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