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【識者の眼】「小児のコロナ感染状況と臨床上の課題」片岡仁美

片岡仁美 (岡山大学病院ダイバーシティ推進センター教授、総合内科・総合診療科)
Web医事新報登録日: 2021-09-22

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の小児における感染の増加が報道されている。文部科学省は、COVID-19への感染が確認された児童生徒らは8月だけで1万7734人おり、7月から3倍以上に増えたと発表した(9月17日時事通信)。小児におけるCOVID-19の臨床的知見は日本小児科学会ウェブサイトで報告されており【1】【2】、国立成育医療研究センターでは国内最大のCOVID-19のレジストリを用いて小児COVID-19による入院例の疫学的・臨床的な特徴を分析し、本年9月に論文を発表した【3】。本研究は、2020年1月〜2月の間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例1038人が対象である。無症状308人(30%)、有症状730人(70%)で、有症状のうち酸素投与を必要としたのは15人、死亡例は0人と、多くは酸素投与などを必要としない軽症であることがわかった。ただし、本研究ではデルタ株の小児における影響は反映されていない点に留意が必要である。

米国小児科学会COVID-19最新情報によると、パンデミックの発生以来、約530万人の小児のCOVID-19陽性症例が報告されている(9月9日データ)。先週は24万3000件以上が報告された。小児の症例は初夏に減少した後、指数関数的に増加しており、過去2週間で約50万件の症例が報告されている【4】。また、米国疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、9月12日までの1週間に毎日平均341人の小児のCOVID-19患者が入院した。現在、米国食品医薬品局(FDA)は若年者に対するCOVID-19ワクチンについて、12〜15歳に緊急使用許可の対応をとっているが、より若年の層については複数の臨床試験が進行中である。

現時点では、COVID-19による重症化は小児では稀であるが、パンデミックが小児に与える長期的な影響については、感染の長期的な身体的健康や発達的・精神的な健康への影響など、より多くのデータを収集することが必要と考えられる。  

デルタ株流行に伴う感染性の上昇に加えて、夏休みが明け、学校活動の再開というタイミングであるため、流行状況に留意しつつ、若年層でのワクチン適応拡大についても状況を注視しておく必要があるだろう。

【文献】
1)日本小児科学会:小児の新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見の現状
2)日本小児科学会:小児における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現状と感染対策についての見解
3)Oxford Academic:Clinical Characteristics of Hospitalized COVID-19 in Children:Report From the COVID-19 Registry in Japan. Journal of the Pediatric Infectious Diseases Society.
4)State-Level Data Report:Children and COVID-19

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