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「冷蔵庫すっきり」が食品ロス削減の秘訣! | エシカルフードインタビュー 井出留美さん

こんにちは。「Tカードみんなのエシカルフードラボ」公式note担当の東樹です。

今回は、ラボの活動に有識者として参画されている、株式会社office 3.11の井出留美さんへのインタビューをお届けします。食品ロス問題の専門家として活動されている井出さんが、どのように「エシカルフード」を捉えていらっしゃるのかということや、私たちがすぐにできるアクションについて、お話を伺いました。

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井出 留美さん
3.11東日本大震災の食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報や食品ロス削減推進法成立に協力。著書に『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』『食料危機』『あるものでまかなう生活』(2刷)『賞味期限のウソ』(5刷)『捨てられる食べものたち』(5刷)『食品ロスをなくしたら1か月5,000円の得!』、監修書『食品ロスの大研究』(6刷)他。食品ロスを全国的に注目されるレベルに引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門受賞。Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/令和二年度 食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

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ー 井出さんは、なぜこのラボに参画されたのでしょうか?

スウェーデンの取材でお世話になったペオ・エクベリさんから、このラボのお話を聞いたのがきっかけです。

私は元々食品メーカーで働いていましたが、食品ロス問題のジャーナリストという今の仕事を始めるきっかけになったのが、東日本大震災でした。あの頃、2011年から2012年にかけて、「エシカル消費」という言葉が盛んに言われたんですよね。消費する側も、倫理的であるということについて考えなければいけないのだと、その頃から思うようになりました。

ヨーロッパと比べて日本は、買い手である消費者と、売り手である事業者がお互いにあまり自立した関係ではないと感じています。日本では、お客様におもねる、すり寄るといったことが見られますが、デンマークやスウェーデンの食品事業者は、「我々は消費者を啓発する責務がある」ということを自覚しているように思います。消費者も、多少高くても質が優れたものや環境に配慮したものを選ぶという姿勢があり、そこが日本と違いますね。これからの時代は、そういった「エシカルであること」が求められるのではないかと感じています。

ー 東日本大震災から10年が経ちましたが、「エシカル消費」の捉えられ方はどのように変わってきたと思われますか?

若い世代の方が、自分の損得だけではなくて、環境のこと、未来の世代のことを真剣に考えていると感じるようになりましたね。そこが、2011年からの大きな変化だと思います。

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ー 井出さんの考える「エシカルフード」とはなんでしょうか?

「エシカルフード」と言った時に、どうしても焦点が食べ物そのものに当たりがちですが、人や企業の姿勢、行動もエシカルであるべきだと思うんです。言葉で定義づけるのが難しいですが、すべての人を慮るような、思いやりのある食品や企業、それらをひっくるめたものが「エシカルフード」なのではないかという考え方です。

1982年に、国際消費者機構が消費者の8つの権利と5つの責務を提唱しています。責務の中には、「自らの消費行動が環境に及ぼす影響を理解する責任」や「自らの消費生活が他者に与える影響、とりわけ弱者に及ぼす影響を自覚する責任」というものがあります。これは、中学校で習っているはずの内容です。そういったことが考えられている食品、そういった売り方がされている食品が「エシカルフード」なのではないでしょうか。

ー 井出さんは食品ロス問題の専門家でいらっしゃいますが、「エシカルフード」と「食品ロス削減」はどのような点でつながるのでしょうか?

小売企業であれば、できるだけ食品ロスを出さない売り方をするということが、「企業姿勢としてのエシカルフード」につながります。たとえば、イギリスのスーパーには、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を呼びかけるポスターや、お客さんに対して「買いすぎていませんか?」と呼びかけるポスターが貼ってあったりするんです。

イギリスの大手スーパーであるテスコでは、自社で食品ロスの調査をしたところ、パックサラダが大量のロスになっていることがわかったそうです。食品業界でよくあるのが「2個買ったらお得になる」という売り方なのですが、調査結果を踏まえて、そうした販売方法をテスコはやめました。

そのような、食品ロスをできるだけ出さない売り方が、倫理的な売り方と言えます。売れさえすればあとはしらないよ、という姿勢であれば、テスコのような決断はしないですよね。社会や環境のことを考えた売り方が、食品ロス削減につながっていくと思います。

また、食品ロスを出さない売り方は、環境問題の解決のみにとどまらず、労働者に優しい働き方にもつながります。たとえば、京都にある佰食屋という飲食店は、ランチのみ、100食限定で営業していて、ロスが出ないようになっています。社長の中村さんは、インタビューの中で「夜も営業したらもっと儲かるんじゃないですか?」という質問に対して 「それは私たちの働き方ではない」と答えていらっしゃいます。佰食屋では、障害のある方や70歳以上の方、育児中の方も雇って、無理なく働き続けられるようにされているんですよね。食品ロスを出さないと同時に、働き方もエシカルになっていると言える例だと思います。

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ー 「エシカルフード」「エシカルフードアクション」が社会で選ばれていくためには、何が必要だと思われますか?

今の世の中には、自然界から食べ物を得ているということを忘れて、「自分たちの力で経済を回している」というような考え方があると思っています。ですが、SDGsの「ウェディングケーキモデル」を見ると、土台にあるのが自然資源に関連する目標で、その上が社会で、一番上が経済なんですよね。「経済が先で環境は後だ」と聞くことがありますが、それを見ると環境があってこそ経済を循環させることができているんだということがよくわかります。

『ハニーランド 永遠の谷』という映画に、はちみつを採って暮らす養蜂家の女性が登場します。彼女は半分だけ採って半分はミツバチに返すようにしていたのですが、ある時、強欲な隣人が全部採ってしまうんですね。すると、もうはちみつは採れなくなってしまった。つまり、彼女は自分が暮らせるだけの経済を循環させることができなくなってしまったんです。

それと同じようなことが、日本でも起こっているのではないかと思います。強欲にならず、本当は自然からいただいて経済を循環させることができているということに気づけば、謙虚な気持ちで変わることができるのではないでしょうか。

とはいえ、すべての人の考え方を一気に変えるのは難しいです。私が食品ロスに関わり始めたのは2008年なので、もう13年が経ちますが、そんなにすぐには変わらないな、と感じます。まずは2割ぐらいの人に届けばいいという考え方、また、既得権益や商慣習はすぐには変わらないという考え方で無理なく動いていれば、中長期的に風穴が開いていくかもしれません。

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ー 最後に、今日からでも簡単に始められる「食品ロス削減」の方法を教えてください。

まず、冷蔵庫をすっきりさせるのが一番です。

食品企業の在庫管理では「先入れ先出し」、つまり先に入れたものから先に出すという原則があります。ですが、家の冷蔵庫がパンパンになっていると、先入れも何もあったもんじゃないという状況に陥ってしまいますよね。

在庫管理をしやすくするために、冷蔵庫の中身は、容量の50%〜70%にするのが一番いいです。どの棚も、奥がどこか見える状態にするのが目安です。そして、食べ物の居場所を決めておくと、順繰りに食べ物が回っていきますし、「3年前の化石が出てくる」といったこともなくなります。

また、コロナ禍で備蓄をする人が増えましたが、冷蔵ではなく、常温保存できる食材を買った方がいいと思います。たとえば、魚の缶詰やパスタのような乾麺などです。備蓄用のレトルト食品は5年持つものもあります。そうやって冷蔵庫をすっきりさせると、食品ロスが減って家計が助かるというだけではなく、自分の気持ちも清々しくなるんですよね。

冷蔵庫がない場合は、あるもので調理し、使っては買い足すようにするのがいいです。これは飲食店でも同じで、本当は「店長おまかせメニュー」にした方がロスもなくなるんですよね。家でも、まずあるもので何を作れるか考えて、ないものだけ買い足すようにすると、確実に食品ロスが減っていきますよ。

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