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自分の技を使い分ける

自分が持つ技を使い分ける難しさについてのお話。

66日ライティングマラソン。38日目。

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知っておくべきアーティストが持つ技

先日、中島美嘉さんの花束という曲を #毎日jukebox で紹介しました。

中島美嘉さん、大好きなアーティストのひとりです。いろいろなところで見る彼女のビジュアルはとても個性的で、いつも目を引きます。

決して美人を謳って押し出すわけではなく、でも一女性としてみたらやっぱり美人なところがあって、そこにアーティスティック性を感じるわけです。

そしてビジュアルと共に彼女が持つ声の魅力と歌唱力について、やっぱり後世に残しておくべきだと感じたので、改めて記事にしておきます。

中島美嘉が持つ歌の技

彼女はれっきとした歌手です。たまにバイオハザードへの映画出演など、あれっ?と思えることをしてくれますが(笑)、「雪の華」など何度も歌い続けられるヒット曲も出しています。

彼女はただ歌がうまいわけではありません。うまいだけの歌手はたくさんいます。「歌がうまい」というのは、歌だけがうまいわけではないんですね。

歌を支える、声、息、肺、腹、そして表情。これらのフィジカル的な要素があり、その上に音楽性、表現力、空想コミュニケーション力などが合わさって初めて、聞いている人を「聴く人」に変えるわけです。

そう、歌が本当にうまい人は、聞いている人を「聴く人」に変えます。

中島美嘉は聞く人を「聴く人」に変えれる「歌の力」を発揮できる要素のほとんど持っている歌手の一人です。

声色の使い分けが聞く人を惹きつける

以下の文章は👇の動画をヘッドホンで再生しながら読んでください。

彼女の歌は、歌中で話をするがごとく声色が部分的に何度も変わります。

意図的にそうしているところ、意図せずそうなってしまうところがありますが、「話をするがごとく声色を変えれる」ことがすごいです。

ハイトーンから始まるイントロは、この音程をミスなく当てる(一度で正しい音程を適切な音色で発生することを音楽では当てるといいます)ことはなかなか難しい。その時の体調や声の状態により自分の肉体のコントロールに苦心しているはずです。

Aメロでは、親しい人に語り掛けるような優しい声質から始まります。この優しい声質を聞いた人は、この声質がこの後も続くんだと期待します。

でも彼女はそれをいい意味で見事に裏切ってくれる。そしてサビにある

あなたと~♪ というフレーズと
あなたの~♪ というフレーズでは、完全に声色が変わっています。

ひとつは優しいフィルターがかかったような声。
もうひとつは角を立てたはっきりとした声。

この2種類の歌い方だけでも十分な表現力になるのですが、彼女はそれだけでなく、歌い方の妙味といいますか、彼女ならではの細かい表現力を持っています。

それが👆の動画でいうと3:31あたりの、

 「許してくれるのなら 花束にして~

の部分。ここが一番顕著に彼女の力が表れてます。

特に 許してくれるのなら のところ。

声質、意図的な歌い方に加え、聞いてる人にしゃべりかける力がとてもよく出ています。伝わるかな~、ヘッドホンでできるだけ音量大で聞くともっとよくわかります。

自分の技をいつも出せるとは限らない

歌手の歌う力はフィジカルの状態が大きく左右されます。

多くの歌手の方はこのフィジカル部分といつも闘っています。経験が少しでもおありの人には頷けることかと思います。

自分が持つ技をいつでもどこでも発揮できるのがプロの資質の一つでもあるのですが、こと歌うことについてはその再現性が非常に難しい。

その難しいことを私たちは👆のような映像で、いとも簡単にやっているように見せられてしまう

人間ってね、同じことを同じように再現し続けることが不可能なんですよ。まわりから同じように見えていたとしても、やっている本人は違和感との闘いの連続。

で、プロとしては自分の技を限りなく安定して出せることを目指すわけです。

ですから歌う人を見ている側・聞いている側は、

難しいはずの自分の技を安定して出すことに挑戦している場所に、歌手とともに自分がそこに居合わせている

ことを理解した上で、その歌手を見つめなおしてもらえれば、自分が今まで知らかなった歌の魅力、音楽の魅力に気付くことができます。

たった一度の表現に感謝して

もう一度書いておきます。

ある場所で、プロの歌手が行った実演は、その時のいろいろな状態が生み出した一度限りのものです。

お金を払ったからそれに見合うパフォーマンスをできなかったプロの歌手はもはやプロではない、と言う人もいますが、これはとても残念な考え方。

もちろん安定した表現を届ける責務はプロの歌手にはあります。

しかしそれ以上にフィジカル的にコントロールが難しい歌というものに挑み、さまざまなしがらみに絡まれながらもその場所に立って歌うという選択をした歌手に対しては、その場に居合わせることができたことに感謝したいですね。

そしてその場で素晴らしい表現を体験できたのなら、それはどんなことにも替えがたい体験を得れたということになります。

また残念な表現になってしまったとしても、それを一番わかっているのはその歌手本人です。聞いている外野がやいのやいの言うよりも、そっと心の中で応援しましょう。だって好きで、自分で選んで聞きにきている歌手ですからね。

ちなみに参考までに書いておくと、中島美嘉のこのライブ。そしてここで表現された彼女の歌い方。

これは録音音源(いわゆるCD、配信)では普通は聞けません。これはライブでしか聞くことができません。

理由は、再現芸術と録音芸術は大きく異なるからです。

が、この続きはまたの機会にしておきます。

#66日ライラン #歌手 #音楽 #プロ根性  

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