カメラを向けた世界は、どこまでも、奇跡だった。
最近、カメラを持ち歩くようになった。私専用のカメラだ。
いや、正確に言えば借り物なのだけど、
私が写真を撮るために渡されたカメラだから、
私専用のカメラと言って、間違いはないと思う。
今までも、いくつかカメラを使ったことがあった。
けれど、なんだか手になじまず、いつも家に置いておくばかりだった。
引き出しに大事にしまわれた、撮るために存在する彼らがいつも寂しそうな顔をしていて、申し訳がなかった。
申し訳がなかったから、できるだけ、
引き出しは開かないようにして、目を背けて