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感染症病棟〜新型コロナウイルスが変えたもの〜⑪

重症患者対応

世間の感染の波が再び広がり
重症患者の割合が増え、常に感染症病棟の病室は満床の状態が続いた。

そして、ある時患者の受け入れ要請が来たのだが…

「え…?じ…人工呼吸器管理でAラインが入ってるような患者!?」

Aラインとは動脈ラインとも呼ばれるもので持続的な血圧のモニタリングや、頻回な動脈血採血などが必要な時に用いられるもので、動脈内にカテーテルを留置することだ。
主に手術室やICUなどの集中管理が行える環境で使用するものだ。

人工呼吸器はともかく、Aラインの操作に慣れているスタッフはさほど多くない。

だが、ICUをコロナウイルス感染者で埋めることはできなかった。
なぜなら、集中監理が必要でコロナウイルスが陰性の患者をICUで受けなければならないからだ。


患者の受け入れが決定し、いざ患者が到着すると思わずたじろいだ。

個室の部屋にギリギリ入るか入らないかというほどの膨大な点滴や器械の数…。
そして、少しの操作ですぐに変動する循環動態に
(ここで、管理できるのだろうか…)
そう思ってしまったのだ。

だが、管理できるのかと言っている場合ではない。
しなくてはいけないのだ。


そのため、集中治療認定看護師という、重症患者の看護管理におけるエキスパートナースの指導を受けながら必死に皆で手技を習得した。


その患者の担当看護師は1日のほとんどをその患者に付きっきりで対応することになった。

防護具を装着して、一度部屋に入室すると患者管理で2時間以上その場を離れられないこともあった。

病院は室内で空調が管理されているとはいえ、
長時間防護具を装着した状態で過ごすと大量に汗をかき、
看護師の体力を確実に奪っていった。

(やばい…マスクも苦しいし、脱水でこっちがクラクラしてくる。
でもそんなに部屋から出たり入ったりできない…)と思った。

集中力が切れそうになるのを必死で耐えながら業務をこなしていった。


その甲斐あって患者の状態はなんとか安定したものの
重症化した新型コロナウイルスの恐怖を改めて痛感したのだった。


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