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感染症病棟〜新型コロナウイルスが変えたもの〜④

全科受け入れ

その話は、ある日突然やってきた。

マニュアル作成をしながら病棟師長もその確認をしていた時のことだった。

「マニュアルのここだけど、何科を受け入れるかによって必要物品が変わるからそれを書き出したがいいね。手術とかで必要なものもある訳だし」

と言った師長の言葉に
皆が「ん??」といった困惑した表情になった。

師長は周囲の反応に
「え?何が変なこと言った?」と
驚いた表情をした。

皆思ったのだ。
(もしかして…今の応援業務に加えて、全部の診療科の新型コロナウイルスの対応だけじゃなくて他科の新型コロナウイルス陽性の患者検査や処置や手術対応などもしないといけないのか…?)と。

そこで恐る恐る看護師の1人が
「あのー…新型コロナウイルス対応はわかるとして、陽性だった場合の元々やったことない処置とかも全部ここでやるってことですかね?例えば手術の準備とか特殊な処置とかはその専門病棟の管轄でもあると思ってたんですけど…そのー…、難しい処置とかは逆に応援って…」と言うと


師長は驚いた表情をして
「何バカなこと言ってるのよ!
各病棟が応援に逆に来るなんて出来るわけないでしょ!!内科の患者だってこっちが預けてる状況でやったことない処置もやってくれてるのよ?だから新型コロナウイルスが陽性となったら全部やるのよ?ぜ・ん・ぶ!一般処置や手術対応なんかは既存の院内マニュアルがあるじゃない!こういう時こそ確認しなきゃ!」と言った。


その瞬間、皆絶望した表情になった。
既存の院内マニュアルは数100ページあるのだ。

それを新型コロナウイルス対応バージョンでやっていくと言うことだ。

(やばい…聞かなかった事にしたい…。)
そう思いながらもそういう訳にはいかず

その日から全科の主要な処置や手術を洗い出して
その対応手順の確認を行う作業が追加されたのだった。




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