避難訓練 ―Part2-
以前にも避難訓練についてお話をしたことがあります。
今回は避難訓練における保育内容の工夫ではなく、ちょっとお堅いですが、避難訓練が義務とされていることについてです。
保育施設で実施している避難訓練はどのような法的根拠に基づき運用されているのでしょうか。
児童福祉施設と非常災害
消防法(第8条)と消防法施工令(第4条)という法律で大規模建築物などの放火管理者は年2回以上の避難訓練の実施が義務付けられています。
「え?」年に2回? と感じた方もいるかと思いますが、これは各施設(商業施設含む)に配置が義務付けられている防火管理者(2日間の講習を受講し認定された甲種防火管理者)が実施すべき義務訓練であって、子ども(客など)の義務ではないということです。
このことについて、Noteのクリエーターさんの興味深い記事を発見しました。
なるほど、そうだなと納得する部分が多くありました。
こちらのクリエーターさんの記事の多くは就学後の配慮が必要な子どもについてのウエイトが高い印象ですが、避難訓練の意義などについてわかりやすいと思います。
保育所や幼稚園・認定こども園などの就学前施設の避難訓練については児童福祉法に基づいています。
児童福祉法に基づく基準で、保育施設には月1回以上の避難訓練や消火訓練が義務づけています。
保育施設が毎月避難訓練をしているのはこのためです。しかしこれは保育施設職員の義務であって、子どもに訓練の義務はない、というところがポイントです。
現場の感覚としてはこれは少し違和感と、本当にそれでいいのかな、という疑問もあると思います。訓練が子どものためにあるのではないが、ここに教育的意義を求めなくていいのだろうかと
幼稚園教育要領 では
4 教育課程の編成上の留意事項
(3)安全上の配慮
また,災害時の行動の仕方や不審者との遭遇など様々な犯罪から身を守る対処の仕方を身に付けさせるためには,幼児の発達の実情に応じて,基本的な対処の方法を確実に伝えるとともに,家庭,地域社会,関係機関などとも連携して幼児の安全を図る必要がある。特に,火事や地震等の自然災害を想定した避難訓練は,年間計画の中に地域や園の実態に沿った災害を想定した訓練を位置付けることが必要である。
安全に関する指導及び安全管理の両面を効果的に実施するためには,日頃から安全に関する実施体制の整備が大切であり,学校保健安全法に基づく学校安全計画及び危険等発生時対処要領(危機管理マニュアル)などを作成し,園内の全教職員で共通理解をしておくとともに,全教職員で常に見直し,改善しておくことを怠ってはならない。
認定こども園教育保育要領 では
第4 災害への備え
2 災害発生時の対応体制及び避難への備え
(2)定期的に避難訓練を実施するなど必要な対応を図ること。
保育所保育指針 では
4 災害への備え
(2)災害発生時の対応体制及び避難への備え
イ 定期的に避難訓練を実施するなど必要な対応を図ること。
認定こども園教育保育要領と保育所保育指針では、ほぼ同じようなことが記載され、保育者や職員の訓練に重きをおいていますが、
特筆すべきは、『幼稚園教育要領』において
『災害時の行動の仕方や不審者との遭遇など様々な犯罪から身を守る対処の仕方を身に付けさせるためには,幼児の発達の実情に応じて,基本的な対処の方法を確実に伝える』とあり、
子ども自身が身に着けるべき事項にも詳しく触れていることがわかります。私は子ども自身が対処の仕方を身につけ、考えて行動できるようになってほしいと願い、支援ツールを用いて子どもと振り返る時間を最も大切にしています。
避難訓練スタイル (シナリオ型訓練)
さて、多くの就学前施設で実施されている避難訓練の多くは劇場型(シナリオ型)訓練です。
職員会議で今月の避難訓練についての打ち合わせでどこから出火した、子どもたちはどこで過ごしている、などを設定して・・。この時はどう避難するか、などを検討しているのではないでしょうか。しかし、実際に火災が起きた時、不審者が侵入したときにシナリオ通りに避難することはできるでしょうか?シナリオ型訓練を何度も経験することで消火設備の使用法などの周知が進み、スムーズに避難できることを否定するものではなりませんが、昨今は臨機応変さを求めて、ブラインド型訓練の取り入れを検討している園所が増えてきているそうです。
シナリオ型訓練は訓練のための訓練といわれるようになり、実際の災害時にシナリオと違う状況に臨機応変に対応する力をつける為に必要なことは何だろう、と現場で試行錯誤が始まっています。
保育所施設職員の最優先は子ども達の命を守ることです。
子どもの達の命を守るために
・ 職員の臨機応変対応力の向上
・ 消火設備使用法の周知
・ 子どもの発達段階に合わせた避難誘導法の検討
・ 職員は、第一避難場所だけでなく第二避難場所も全職員で共有
などが重要だと思います。
避難訓練スタイル (ブラインド型訓練)
最近注目されているブラインド型訓練とはどんなものでしょうか。
ブラインド型訓練で職員に求められることは
1 情報を正確に得るために放送をよく聞き、状況を把握する
2 避難経路を判断する
3 近くにいる職員同士情報を共有し、避難経路を決定する
4 状況によって避難経路を変更する
職員が上記について自信をもって取り組めるよう様々な災害パターンをシュミレートし、
・ なぜその行動が必要なのか
・ なぜそこに避難するのか
・ なぜ職員の担当がそうなのか
何故、の視点をもってシュミレーション内容を検討するとよいと思います。
何故の理由が明確であれば、違う状況になっても臨機応変に対応することができると考えられます。
訓練実施後の振り返り
避難訓練後、必ず振り返りの時間を設け、
疑問点や改善点を出し合う。
失敗は課題を直視できるきっかけだと捉える。
避難訓練は改善点を出すために行うことと捉える。
この振り返りの時間こそが、訓練の最重要ポイントであり、この振り返りをすることで初めて避難訓練は終了です。
今後も子どもの命を守り、職員の命も守る避難訓練を大切に実施していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
明日も楽しい保育でありますように♡
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