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運動遊び3 ある日の水遊びで・・。

これまでにも何度か保育には様々なねらいがあり、一つの保育活動に保育者がどれだけ多くの視点をもってねらいをたてていけるか、一つの活動でコスパ良く子どもたちが様々な経験を積み上げていくことができ、ねらいが達成される環境構成と援助を実践できるかが大切だと述べてきました。
そして、時に保育者が意図したことと違うことが起きてしまうのが保育の現場であり、自分とは違う人間(こども)が相手だからこそ保育者の考えの範疇外に起きてしまうわけですが、これが面白い!と日々感じています。


1. ある初夏の日の園庭の遊び

若手のクラス(4歳児)と私のクラス(3歳児)が、園庭の場を共有して遊んでいた時のことです。(場を共有しているとは、同じ場を共有して別々の遊び、またはあまりかかわりをもたずに遊んでいる状況です。)
その日は、夏の始まりで少し暑い日でした。3歳児は水道近くで幾つかのタライに水を張り、それぞれが、おもいおもいに泥や水で遊んでいました。
一方4歳児は水道から少し離れた砂場で、「ここに温泉作ろう」「こっちにトンネル作ろう」と、声は掛け合っていても個々に山を作ったり、温泉を作ったりしていました。

2. 水が欲しい!でも水道が遠い・・。水道近くで3歳児が遊んでいる・・。

3歳児は4歳児が水を使いたがっている、や自分たちが水道の近くで遊んでいるから4歳児が遠慮している、なーんてことは全く気付きませんし、3歳児担任の私も笑顔で見守っているだけなので4歳児は「水を使いたいけど、タライは3歳さんが使っているし・・・。どうしよう」とうーんと考えて、考えて、自分たちが使っている幼児用バケツに直接水道から水を入れ運び始めました。

でも、それぞれがそれぞれの小さなバケツでちょっとずつ運ぶ水では砂がすぐに水を吸収してしまって満足できない様子でした。

3. 子どもたちは沢山の水をながしたいと思っているんだわ!

と、若手はその子どもたちの姿から内面を読み取り、一目散に倉庫に向かい、タライ1つとバケツを5つ持ってきて、4歳児の所に駆け寄ろうとしていました。
「こらこら、それをどうするつもりなのかな?」と私に声を掛けられ、
「え?子ども達に渡そうと思っています。」
「子どもが出して欲しいって言ったのかな?」と私が聞くと、
「あ!先回りしすぎました!」と答えました。

4. 大人の先回りは子どもの表現する機会、考える機会を奪うことがある

「いいところに気付いたね。じゃどうする?」と私が聞くと、
「水道の近くに重ねて置いてみます」と倉庫から持ってきたタライとバケツを重ねて水道の横に置きました。

するとすぐに、水を汲みに来た4歳児が「あ!ええもんある」「これつかお」とタライとバケツに気付き使い始めました。

若手はバケツをたくさん用意していたので、バケツを見付けた子どもは一人一個使おうとしていましたが、大人が使うバケツなのでなかなかうまく運べません。たくさん水を運びたいのでたくさん水を入れ、バシャバシャと運んでいる内にこぼれてしまい、実際に砂場で流す水は減っていましたが、さっきまでの小さなバケツよりははるかに多くの水が使えて嬉しそうでした。

なんどもなんども水を汲んでは運ぶことを繰り返していました。

5. なにげに、バケツを減らしてみると・・。

その子ども達の様子見て、若手は何かを感じているけれど、それが何かわからずモヤモヤしているような顔をしていました。

そこで、「ごめーん、ちょっとそのバケツ3歳さんに貸してくれる?」と私が4歳児に声を掛けると「いいよー」と3つ貸してくれました。残ったバケツは2つ・・・・。

6. それでも水を運びたい

と、考えた4歳児は誰に提案されるわけでもなく友達と一緒に協力して水を運び始めました。

水を運びたい子どもが自然にバケツを一緒に運び始めました

友達と協力したことでより多くの水を運ぶことができ、たくさんの水を流すことができました。「いっぱい流れた!」「今度も一緒に運ぼう!」と顔を見合わせて笑顔を見せました。「そっか!一人じゃ難しいことでも友達と一緒ならできちゃうね。すごいことに気が付いたね」と若手がナイスな声を掛けていました。

7. まとめ

初めは、「子どもが満足できる水の量を運べる環境」と考えて、タライとバケツを出した。
個々に水をこぼしながら運んでいる様子を見て何か別の援助をしなくては・・・、と感じていた。でもどうしたら?と思案していたら3歳児の担任がバケツを減らした。

バケツが減ってしまったことで、友達と一緒に運ぶことになり、結果多くの水を運ぶことができた。
そして、予期していなかった「友達と一緒に運んだからいっぱい運べた」と
いうことに、子ども自身が気付いた。
そこを見逃さずしっかりと声を掛けて援助していた若手は素晴らしいと思いました。

ここで確認したいことは、「それなら最初からバケツを5つ出すのではなく、2つにしとけば良かったじゃないか」ではないという事です。

5つのバケツで個々に水を運んだ経験の後に、2つに減ったバケツを使って、友達と一緒に運んだら、「たくさん水が流れたぞ!」と体感し、「友達と一緒に運んだからだ!」と子ども自身で気付いた。
理屈ではなく子ども自身が体験することになったこの過程が、大切なのだと思います。

保育者が子どもの表情、仕草、つぶやきをなんとなく流してしまうのではなく、しっかりと見取り、今!という時を逃さず援助することの大切さを再確認したエピソードでした。
そしてこのバケツで結構な距離を何度も往復する遊びはしばらく続き、4歳児は少しバランス感覚や体幹が鍛えられたように感じました。

最後までお読みいただきありがとうございます。
明日も楽しい保育でありますように♡


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