ケムタさん

8tトラックと正面衝突してフリーライターになった話

こんにちは!ライター/イベンターの大坪ケムタです。

気づけばだいたい20年くらいフリーライターをやってまして、その中でレギュラーでやった仕事がデイリーポータルZに紙のプロレスRADICAL、BUBKAといった多少クセのあるメディアだったのもあり、実力より知名度が上回ってるライターと自負しております。でもこれまでの仕事の6割は無記名仕事だったりするんですよ、エロ記事もですけど、実話誌で毎週み○も○た連載のインタビュー&書き起こしやったりとか。

最近はライター業よりも、イベントの方が本数的にはすっかり多かったりします。ということで今まで以上に広がりがある展開を(というと聞こえはいいですが銭や!銭がほしいんや!)、ということで自分のイベントのレポートをnoteで販売することにしました。買ってください。

■俺より強いライターに会いに行く【テクニックより在り方が聞けるライター講座】イラストルポ系ライター編/ゲスト:斎藤充博(ライター・マンガ家・指圧師)、ギャラクシー(ライター・株式会社バーグハンバーグバーグ) トークイベントまとめ【前編】(14280字)
https://note.mu/notalovesong/n/nba91cc727a54
(前半5000字くらいは無料で読めます。)

そちらは有料なんですが、それ以外のことも書いてみようかと思いました。これまでフリーで20年、その前に広告代理店で4年近くコピーライター的なこともやってたんですが、「自分のこと」をあんまり書いてこなかったんですね。だって興味ないでしょ、大坪のこととか。それなりに人前に出る仕事してると、自分の感性とか半生、人間力は金に変えれるレベルではないなーと納得した上で仕事の仕方も考えるようになるわけです。

人を惹きつける才能はゼロだけど、自分のスキルとして書いて伝える力はまあまあある。それを活かして生活しようということで、ライターにしろイベントにしろ、自分が面白い人や気になる人にインタビューしたり組み合わせることで形にしてます。いわゆる「他人のふんどしで相撲をとる」というやつです。

そして有料の記事はまさしくそういう大相撲ダイジェストなんですが、なんか埋草にでも書いた方がよかろうと、自分の話をたまに書こうと思います。ライターとかイベンターに関することなら書けなくもないので。無駄なものも積めば経験と言い張れるものです。

ということで、まずは有料noteのテーマである「ライター」に関連して、自分のライターになったきっかけの話でも書いておこうかと。

先に書いたとおり、フリーライターになる前は約4年間広告代理店のサラリーマンをやってました。最初2年は制作で、後半は営業。代理店といっても『左ききのエレン』的世界とはまったく無縁な地方の小さい代理店で、やる仕事というと、地元施設の完成お祝いで出す新聞の1枠5000円の広告を、地元中小企業の社長のとこに直接アポとってOKいただいてくるような、そういうお仕事。中には県庁のパンフやポスター、温泉のポスターなんかも作って小さい賞もいただいたりもしましたが、会社を支えるのはやはり足で稼ぐ仕事なわけです。ということで営業時代は1日5時間くらい車飛ばしてあっちこっち丁稚してました。

ちょうど会社に入ったあたりから、インターネットというのが世間に出回りはじめた時代でした。さっそく自分もMACを購入して見るように。ニーパッパでネスケでテレホタイムですね。広告代理店の営業品目にインターネットというのが入ったおかげで、比較的やりやすい環境というのもあったのと、昔から同人誌的なことには興味があったので個人でもサイトを作り始めました(当時は同人誌の延長という空気もあった気がします)。まだ侍魂のブレイクで「テキストサイト」という言葉が広まる前、「個人サイト」という言い方だったんじゃないかな。

世界に繋がるインターネット!といってもまだgoogleもなく、今思えばただのリンク集というかでかい電話帳であるYahooJAPANから辿って、そこから各サイトのリンク集をまた辿って、というやり方しか本当に面白いサイトを見つけるしか方法はありませんでした。まだ雑誌の方が世界の変なサイトを知る情報源として有益だったりして、そのURLをぽちぽち打って見るという牧歌的な時代でしたね。

ただ、たしかにインターネットでしか見つからなかった面白いものってのは確かに山ほどあって、自分の場合は全日本レコードはじめとしたナードコア界隈だったりして、そこで知り合ったきっかけで北九州や東京まで遊びに行くようになったりと、完全に遊びの感覚が変わりました。SNSはなかったけども、それぞれのサイト更新と掲示版で十分刺激的なコミュニケーションは取れてました。

ちなみに自分のサイトは、会社の新聞の書道欄の変な投稿を会社の機械でスキャンして掲載するという謎のコーナーと、あとV&Rプランニングというカンパニー松尾・バクシーシ山下・平野勝之といった新進監督たちの作品を当時リリースしていたAVメーカーの勝手レビューを書いたりしてました。当時はFANZAなんてものはなく、そういう素人レビューですら書いてる人はそういなかったので、それなりに好事家の方々に読まれていて、たまに本とかに掲載されたり、まだディレクトリ制だったYahoo!JAPANにもリンクが貼られたりして。そのうちV&Rの人からメールが来たり、ライターの師匠である安田理央からこの頃にメールもらって、東京に遊びに行くときに事務所訪問したりするようになったりと、のちの仕事にまつわる縁が繋がっていきます。

昼は5時間くらい車飛ばして、帰ってラフデザインとか原稿まとめて、会社から帰ってきたらすぐメシ食って3時か4時くらいまでネット、みたいな時代。そんな生活をしてたら、当然睡眠不足にもなるわけです、わはは。わははじゃないよ。

そんなある日、いつもと同じ空が広い田舎道を営業車走らせてたら、フッと寝ちゃったんだろうなあ。たしか冬だから小春日和だったんですよ、車内だといい感じにあったかいし。気づけば目の前に対向車線の8tトラックが迫っていた。自分がハンドルを切ったのか、相手が切ったのかは覚えてないけども、今でもしっかり覚えているのは、フロントガラスが一瞬にしてゆっくりと(真逆ななんだけどそう感じた)全面にヒビが入り、屋根の右上がボコォ!とやはり一瞬でゆっくり凹んで自分の額に向かってきた。数センチ手前まで。そしてゆっくりとガリ、ガリ、ガリと車体同士が擦れていく感覚が全身に伝わってくる。たぶん数秒くらいのことが1分以上に感じて、あとで「あー、ほんとに生きるか死ぬかの時ってスローモーションになるんだな」とあらためて思いました。

そのスローモーションの中で全身に響くガリ、ガリ、ガリ、という感触、なんか覚えがあるな……と、我ながら事故の真っ最中どうでもいいことをふと思った。なんだっけー、なんだっけー? あ、平野勝之監督の『美人キャスターの性癖』で、監督が自転車でサトウキビ畑に突っ込むシーン。あの泥の中にカメラが突っ込むガリガリ感に似てるんだよ、と気づいた瞬間、ズボォッ!と接触から抜けて、スローモーションから普通の時間に戻った。冬の高く青い空の下、おれの乗ってた営業車はトロトロと道の端に止まって、トラックに「大丈夫ですかー?」と声をかけた。車はその後警察が来た時、ひと目で「あ、死んだ」と思ったほどの破壊っぷりで、おれのほうが全然大丈夫ではなかったのだけど。

警察が「死んだ」と思うほどの事故で車は廃車、でも運転手のおれは擦り傷2箇所くらいで、ムチ打ちなどの後遺症もいっさいなし。幸運にも相手にも怪我もなかったようで、事故の賠償なんかも会社の保険でどうにかなった(のだと思う)。この一件で、半分冗談ながらこういう事を考えるようになります。

「おれにはAVの神様がついてるのではないか?」

というのも、AVに助けられた(ような気がする)のは今回だけじゃないから。小中と人並に性的好奇心はあった自分ではあるけれど、家にビデオデッキもなく、エロ本は読めてもAVを見ることはなかった。それが初めて見たのが、大学受験の前日。広島で泊まったホテルの有料テレビが壊れており、なぜか無料見放題になっていた。そりゃ見るよね! 受験とか知らん! でもその受験で合格してしまった。八百万の神……いるよね、AVの神……。

そんなこともあって、「人間いつ死ぬかわかんないから好きなことしといた方がいいなあ」と思い、先に知り合っていた安田師匠にメールを送り、「いきなりライターとかは難しいだろうから、編集者とかになれないすかね?」と相談したところ、「今うちの事務所、机空いてるから来る?今仕事もけっこうあるし」ということで上京決定。当時、AV業界はそれまでのレンタルAVに加えてセルAVが普及しはじめたことで、業界的には拡大の一途でした。それはライターも同じ。ということで、比較的早く収入も安定して暮らすことが出来ました。またAVの神に救われた。。(この辺をふまえると有料noteのギャラクシーさんとの会話の背景が伝わってくると思います)(あとこれ次回掲載予定のパリッコさん野島さんの時にも話してます)

ということで「正面衝突」というのは少し盛りましたが、自分がライターになった顛末であります。他にも細かく「このままここに住んでいっていいのかなー?」と思うような事があったりもしたんですが、何のきっかけが最終的に自分の背中を押すかわからないものです。まあ、これから働いてもらうぞって入社4年目の小僧が車廃車にして「AVライターになるので会社辞めます」とか、会社からするとそこそこ狂ってたと思いますけどね!前の会社には申し訳ない&スムーズに退社認めていただき感謝しかないです。


あとおれを救った(のかもしれない)『美人キャスターの性癖』はめちゃめちゃ傑作なので、18歳以上の人は見た方がいいです。人間力を金に変えれる人、てのはこういう人だ!えちえちな動画サイトに「美人キャスターの性癖・わくわく不倫旅行・わくわく不倫旅行2・白 THE WHITE」というとんでもないオムニバスがあるので、ぜひそれを。今っぽく言えば18禁のクレイジージャーニー4本パックです。

そうそう、初めての上京で平野勝之監督のトークイベントに行ったんだけど、庵野秀明監督が飲みに来てて客席で一緒に話したりして「東京はすごかとこばい……」と思ったんだよなー。それも後押しになった、といった話はまたいつかするかもしないかも。

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