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【映画日記】ようやく見た。小品好きには……、映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

2023年11月19日

どこにでもいそうな人がどこにでもありそうな悩みを抱えてあーだこーだして、結局大きな変化なんて起こらないけれど「人間ってこうよね、ホッ」という映画が好きで、お金もかかってなさそうで、数日で撮影しました、AI?CG?何それ?っていうような小品(”ショウヒン”って読むんだって。ずっと”コシナ”だと思ってたよ、恥)ばかり見ている私には気後れする映画がたくさんあります。

これもそう。今年の春、アカデミー賞の直前あたりから大ブームを起こした映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

マルチバース(並行宇宙)にカンフー、というまったく自分向きじゃない作風に見る気がそがれ、Netflixで配信が始まってからもしばらくたってしまった。このままスルーかー、と思われた先日、ようやく見ました。話題になるのも納得、というのが素直な感想です。

超ザックリといえば家族の再生ストーリー。主人公はなんでも抱え込んてパンク寸前の母エヴリン。反抗期の娘に心身ともに手のかかる老父、優しいけれど頼りない夫というホントにどこにでもいる家族。そこに自営業ならではの国税の監査員が絡みマルチバースの世界に突入していく。あらゆる別の世界に飛んでく中、エヴリンは"ある敵"と戦わなければならなくなる。その敵の正体とはー、とはというお話です。

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マルチバースという設定だけで「もうムリ」な感じだったけど、そのマルチバースのマルチっぷりが想像をはるかに超えておりました。その超越ぶりに小品好きの些細なこだわりは吹っ飛ばされたわけです。とりあえず見ろ!この世界を!という圧。

映画ほかサブカルの引用、パロディも満載。マルチバースの中にはもはや人間ですらない存在となる世界も。そうした哲学的趣向もあれば、アジア系アメリカ人やLGBTといった現実的な社内背景も示し、なつかしさを感じるド下ネタまである。

それらがけしてとっぴなだけの印象に収まらないのは、本筋がどこにでもある家族の問題だから。夫の優しさが腹立たしく思える。わかるよ、エヴリン。そして黒いベーグルの「どうせこの世界はー」という虚無感。多様性至上主義の行き着く先はココかもよ、という強烈な皮肉にも思えました。

いくらでも深読みできそうな象徴的なシーンと意味深なモチーフやセリフ。考察好きさん(にじみ出る嫌悪、スマン)にウケているのも納得です。

ここまで世界を広げておいて、あの収まり具合には正直なところ拍子抜けしたものの、これまで散々描かれ尽くしてきた「家族の再生」をこんな形で見せてくれた斬新さには感服です。

とはいえやっぱり苦手な類の映画でした。
家族の話だったらもっとギットギトで「どうすんのコレ……」とドン詰まるヒューマンドラマ系のほうが好き、です。


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