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映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(2016年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:マダム・フローレンス! 夢見るふたり
原題:FLORENCE FOSTER JENKINS
製作年:2016年 イギリス
監督:スティーブン・フリアーズ

映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』は、

実在した音痴のソプラノ歌手、フローレンス・フォスター・ジェンキンスと、彼女を支えその夢を現実させた夫シンクレアの物語です。

名優メリル・ストリープが演じたフローレンスに笑って泣いて心を鷲摑みにされる、夢を追う人は必見の作品です。

キャスト

・メリル・ストリープ(フローレンス・フォスター・ジェンキンス)
父親の遺産を受け継ぎ、音楽財団「ヴェルディ・クラブ」を設立 音楽界を支える傍ら、自身の夢を追い続けている

・ヒュー・グラント(シンクレア・ベイフィールド)
フローレンスを支え続ける夫

・サイモン・ベルパーク(コズメ・マクムーン)
フローレンスの歌のレッスンのピアノ伴奏者 オーディションで「うるさくない曲」を弾き合格する

・レベッカ・ファーガソン(キャサリン)
シンクレアの愛人

映画『マダム・フローレンス!夢見るふたり』の見どころと感想

Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

子供のころから音楽家になるのが夢だった大富豪の娘フローレンス。その才能を発揮するさなか、17歳で結婚した年上の医師から梅毒をうつされ神経を患い、音楽家の道を絶たれてしまいます。

離婚後シンクレアと再婚。父親の莫大な財産を受け継ぎ、その財産で音楽界のパトロンとなり自身も舞台に立っています。が、いかんせん超音痴。夫シンクレアはフローレンスが傷つかないように忖度してくれる新聞社や支援者でガードを固め、小さなリサイタルを開いていました。

そんなある日、フローレンスはあの音楽の殿堂「カーネギー・ホールでコンサートをしたい!」とムチャを言い出します。

あらゆる手を尽くしてこれに応えようとする夫シンクレアと、演奏者としてこの夢の片棒を担ぐことになるピアニストを目指すマクムーン。

フローレンスの夢の幕が上がりますー。

評)メリル・ストリープの名演に学ぶ「夢を追うこと」

妻のトンデモない夢を叶えた夫の愛がスゴイ! と言いたいところですが、いやいや、そんな単純な話ではないですよ、この映画は。

夫シンクレアがフローレンスの夢を支え続ける理由は、物語のなかで少しづつ明らかになります。シンクレア自身も夢をあきらめた役者であったこと。前夫にうつされた梅毒によってフローレンスは頭髪も音感も失い、シンクレアともベットを共にしていないこと。おまけにシンクレアには愛人がおり実質別居状態にあること。

「フローレンスに自分が音痴であることを気づかせてはいけない」という優しいお約束を守れない聴衆もおり、シンクレアにはフローレンスを「裸の王様」でいさせることの苦悩も。

一方、フローレンス自身もただの世間知らずのわがままセレブではない一面を見せます。マクムーンの部屋を訪ね、皿を洗ってあげながら身の上話をするフローレンス(←このシーン、イチ押しです)が何とも言えない。もしかすると自分が音痴であることや笑われていることに気づいている? ちょっとだけそう思わせるところもニクイ。

シンクレアやマクムーンだけでなく、フローレンスを取り巻く人々には同情や贖罪、嘲笑、お金目当てなどの気持ちが見え隠れします。

が、これを一蹴するのがフローレンスの歌声です! コンサートに招かれた海兵たちはフローレンスの歌を「下手くそ」「やめてくれー」と笑い上げます。それをかつて同じように笑ってしまったスターク夫人が一喝! フローレンスに歌い続けるよう励まします。

このあたりはわかりやすく泣けます。で、その涙も乾かぬうちに超絶な歌声とフローレンスの表情に笑いが止まりません。フローレンスの歌声と夢を追う姿勢には、同情とか贖罪とか嘲笑と金目当てとか、そんなダークな気持ちを「その先」に向かわせる力があるのです。

夢ってそういうことなんでしょう。そのことを充分にわかっているからシンクレアはフローレンスを支え続け、一緒に夢を見続けたのではないでしょうか。「いくつになってもやりたいことをやるべき」は、もちろん間違ってはいませんが「人の心を背負っていくことを絶対に忘れてはいけない」

それを気付かせてくれる1本です。



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