本屋好きのための、本屋通いをやめる方法 「二階ぞめき」計画
「本屋」が好きで好きでたまらない。本そのものよりも「本屋」が好き。なぜ書店員にならなかったのかと、いまだに激しく後悔しております。
本棚にずらりと並ぶ本の背表紙を見るだけで恍惚となり、確実に便意をもよおし、究極の弛緩状態に入る。α派が出まくっているのでしょう。
背表紙にすら主張がある「単行本コーナー」
出版社ごとに、作家ごとに、色も文字も整然と並ぶ「文庫コーナー」
これでもか!というほどに人の興味を引くタイトルが並ぶ「新書コーナー」
いずれも楽しい。
本を買う予定はなくとも3日と明けず本屋に通い、行けば行ったで何かしら買ってしまう。明らかに読める以上の量の本を買い込んでしまいます。
このままではー。
「二階ぞめき」とは?
落語に『二階ぞめき』という話しがあります。
吉原好きの若旦那が毎日毎日吉原に通う。しかも女がどうのこうのではなく、あの雰囲気が好きなのだと。そんな若旦那に業を煮やした番頭は「自宅の二階に吉原を作ってしまえば、若旦那の吉原通いが止められるだろう」と、そっくりに作ってしまった。が当然、人(お客も女性も)はいない。そこで若旦那は自分で一人何役も演じ分けー。
というようなお話です。
本屋が好きなら、うちの二階を-、「二階ぞめき」計画
「そんなに本屋が好きなら、うちの二階を本屋にしたらいい」と、わが家でも「二階ぞめき」計画が浮上。わが家にある「本の倉庫」と呼ばれる部屋には、狭いながらも様々な本が積み上げられています。
ここを本屋風にすれば本屋に行った気分になりはしないかー、という、なかなかの名案です。とりあえず、いらない本が多いことは薄々、いやハッキリと気づいていたので、これを機に”棚卸し”と”返品”(処分または売却)を決行。
どの本を面陳列(表紙を見せて陳列すること。本屋では「おすすめの本」をこの方法で陳列することが多い)にするかを吟味し、同じ作家のものは、左から出版が早い順に並べるー。
自分で言うのもナンですが、長年、書店員に憧れただけのことはあり、なかなかの仕事ぶりである。ちなみに、私が書店員としてのノウハウを培ったのはこちらの本。
注:たいへんな名著ですが、あなたが長年培ってきた社会的イメージを崩壊させる恐れのある抱腹絶倒モノですので、お読みになる際は周囲の環境に充分に注意してお読みください。
こうして、ひと通り片づいた「二階の本屋」は、私のお気に入りの本が並ぶ普通の書棚となってしまいました。
こうじゃないっ! これでは楽しみようがないじゃん。よし、さっそく仕入れに行こう!
(結局、本屋に行くのです)
「二階ぞめき」計画は失敗なのかー。
近所の行きつけの書店は、マンガや雑誌、ベストセラー本ばかりの品揃えばかりで正直つまらない。私はやる気のない書店員の胸ぐらをつかみ、「アンタは本への愛情があるのか!? 本のことを日夜どう思っているのか!?」と詰め寄り、たかった。
いや、書店員はみな本が好き、本屋が好きとは限りません。むしろ本屋での重労働で本がキライになり「本なんて無くなっちまえばいい!」「電子書籍バンザーイ!」と思っているかもしれないのです。
本屋の神に呪われそうな妄想をしながら、お気に入りの作家の本で手元にないものを幾つか購入。さらに古本屋を巡り、気がつけばいつも以上の買い物をしていました。
いかん……。
本屋に行かないようにするための「二階ぞめき」計画が完全に裏目に出てしまっている。しかしこれはもう買い物ではなく「仕入れ」なのだから仕方がない。そういうことにしておこう。
自分で集めたものだけでは飽きたらず、人に譲ってもらったりもした。多少趣味が違っても好きな人や親しい人から譲り受けた本は、それはまた興味の対象として書棚に並べ、出来上がった「二階の本屋」。
でき自体はすごく満足なのだけれど、そもそも本屋というのは人と人との交流が「吉原」の数千分の一程度のところ。「二階ぞめき」のように演じ分ける必要がないことに、私、気づいてしまいました。
店員さん(私)も客(私)もまったく無口で騒き(ぞめき)ようがない。ただジーッと、自分かどこからか買い集めた本を見つめるだけなのです。たいして新しい発見もない。
果たしてこれは楽しいのでしょうか!?
余談ですが、その後行きつけのやる気のない書店は潰れました。
本屋通いをやめる方法、まとめ
以上、ただ自宅の「本棚」が片付いた、という話でございました。
こちらもどうぞ。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?