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映画『ヘイター』(2020年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:ヘイター
原題:Sala samobójców: Hejter
製作年:2020年 ポーランド
監督:ヤン・コマサ

映画『ヘイター』は、

不祥事で大学を除籍された青年が自分を評価しない人々や社会に恨みをぶつけていくサスペンス映画です。格差社会を背景に、SNSやフェイクニュース、ゲームを活用しながら恨みを晴らすー、現代の闇を感じさせる1本です。

キャスト

・マチェイ・ムシャウォフスキ(トマシュ)
法学部の除籍される学生 田舎の貧しい家の出身

・ヴァネッサ・アレクサンダー(カービ)
トマシュが思いを寄せる幼なじみ

・アガタ・クレシャ(ベアタ)
トマシュが働くSNS運用会社の上司

・ヤツェク・コマン(ロバート・クラジュキ)
カービの父 トマシュの学費を支援

・ダヌタ・ステンカ(ゾフィア・クラジュキ)
カービの母

・マチェイ・シュトゥル(パヴェウ・ルドニツキ)
リベラル派の政治家

映画『ヘイター』の見どころと感想

Netflix

学部長から突然呼び出しを受けた法学部の学生トマシュ。トマシュは論文の盗用を指摘され除籍処分を言い渡されます。トマシュは裕福なクラジュキ家から学費の援助を受けている身。クラジュキ家の娘で同じ大学に通うカービに好意を抱くトマシュは、手土産にイチゴジャムを持参し一家とともに夕食をとります。

除籍の件を言い出せないままクラジュキ家をあとにするトマシュ。そのトマシュをにこやかに見送るクラジュキ一家。が、トマシュが帰るやいなや態度は一変。手土産のイチゴジャムから食事の作法に至るまで、一家は貧しい出のトマシュをバカにした会話を始めます。

そこに「携帯を忘れた」と戻ってくるトマシュ。トマシュは一家の会話を録音していたのです。

本心を知ってもなおカービのことを諦められないトマシュ。そんなトマシュが就いた新しい仕事はSNSを使って人気者たちを潰していくこと。その「ヘイター」としての力を評価されたトマシュはやがてー。

評)国家主義を強めていく社会への批判的視点に立ちつつも

虐げられる弱者の反撃ー、ならば応援のひとつでもしたいところですが、この映画はそんなスカッとする思いには程遠く、むしろドンヨリとさせられます。

仕事(といってもヘイターですが)の成功で自尊心を満たしていくトマシュ。が、肝心のカービは手に入らない。そればかりかまったく相手にされていないことを嫌な形で知ってしまいます。いよいよかわいそう、となりそうなものの、そうならないところがこのトマシュの、そしてこの映画の怖いところ。

トマシュは報復にリベラル派のある政治家を利用します。あくまでもクラジュキ家が支持しているからではあるものの、トマシュ自身の不遇の根底には「格差社会が生み出した差別」があることは明らかです。

奇しくもこの映画の完成から間もなく、ポーランドのリベラル派の政治家が右派の差別主義者に襲われ亡くなるという事件が発生しました。映画は国家主義を強めていく社会への批判的視点に立ちながらもトマシュの行動にはどちらの思想を持たてはいません。

SNSという匿名性を利用し関係のない人を不幸に貶めていき、さらにはそのことの罪悪感すら感じさせないトマシュ。そんなトマシュをあのラストをどうとらえればいいのでしょうかー。

現代の闇を映し出すポーランドらしい社会派映画『ヘイター』はNetflixで。


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