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映画『ヒヤシンスの血』(2021年)のザックリとしたあらすじと見どころ

映画タイトル:ヒヤシンスの血
原題:Operation Hyacinth
製作年:2021年 ポーランド
監督:ピョートル・ドマレフスキー

映画『ヒヤシンスの血』は、

共産政権下のポーランドを舞台に、ゲイコミュニティをめぐる事件を追う警官の苦悩と事件の真相を描くサスペンス映画です。「ヒヤシンス作戦」と呼ばれた同性愛者への弾圧とはー。

LGBTQへの差別が表面化している現在のポーランド。その背景の理解にもつながる映画です。

キャスト

・トマシュ・ジェンテク(ロベルト)
刑事

・ベルト・ミウコフスキ(アレク)
ロベルトの情報源となるゲイの青年

・マレク・カリタ

映画『ヒヤシンスの血』の見どころと感想

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1985年共産主義政権下のポーランド、ワルシャワ。公園の公衆トイレで刺殺体となって発見させた男グレゴルチク。男の自宅を捜索する刑事ロベルトはゲイのビデオを発見します。

ロベルトはシュチトノ高等民兵学校への合格が決まった身。が、その裏には秘密警察に所属する父の口利きがあることに気づいていました。

ゲイのたまり場である公衆トイレに潜入するロベルトは、アレクと名乗る青年と出会います。刑事という身分を隠してアレクに接触するロベルト。グレゴルチク殺害に関する貴重な証言から容疑者バルチクの逮捕に至りますが、バルチクは何も語らないまま独房で縊死。

バルチクを犯人とし捜査を打ち切ろうとする上層部に違和感を覚えるロベルトは独自に捜査を続けます。がー。

評)「ヒヤシンス作戦」と国家主義、権威主義が広がる現代への警鐘

映画ではラストに解説がある時代背景と「ヒヤシンス作戦」について。

1980年代のポーランドは旧ソの支配を強く受ける共産主義国家。同性愛者は異端と見なされ監視の対象となっていました。その監視対象をリスト化する「ヒヤシンス作戦」。ギリシャ神話のヒュアキントス(アポロンに愛され死語ヒヤシンスとなった美少年)が由来となったものです。

こうした背景のこの映画。見どころは監視や迫害によって抑圧された陰鬱な社会と、そこで愛や正義を貫こうとする主人公ロベルトの姿です。

ストーリーは非常にシンプル。父親の権威がそのまま当時のポーランドという国の体制であり、ロベルトはこの巨大な力の前ではなすすべがありません。

社会背景を下敷きにしている以上、ハッピーエンドになるはずもないストーリー。アレクとの関係によって自身のセクシュアリティに目覚めたようにも見えるロベルトですが、そこはあえて断定はしていないと思いました。

2021年の今、LGBTQに対し否定的な姿勢を強めるポーランド。この映画の舞台となった当時へと遡行するような対立と排外の表面化は悲しいばかりです。

ポーランドの今につながる映画『ヒヤシンスの血』ぜひ。


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