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最近読んだ本の感想(幻夜)

今更な感じですが、ともだちの勧めで読んでみました。

東野 圭吾 「幻夜」

第一章の途中で、「砂の器」に似ていると思った。第八章の3節の最後でさらにはっきりした。「それは美冬ではなかった。まったく別の誰かだった。」地震のドサクサで美冬も別人に成り変わっている。
テンポのいい展開で読む者を引き付ける。弱みをにぎられ、彼女の術中にはまっていく男。テレビ局の記者を名乗り、ビデオテープ*を回収するなんてあまりに出来すぎな感じはする。張り出されていた写真をみただけで、そこまで頭が回るのか。
*雅也の殺人現場を撮影してあったビデオテープ
美冬が雅也を助けたのはこのときだけ。あとは、美冬にとって都合のわるい相手に対する攻撃を雅也に押し付けている。「華屋」でのストーカー事件、異臭事件、曽我の失踪、青江のストーカー事件とその救済、次々に起こるこれらの事件について、読者にはその真相が後半で徐々にあかされていく。新しい指輪を実現できたのも、雅也がいたからこそなのに、雅也に脅迫文を送り付けたのは美冬。そして、最大の謎、美冬は誰なのか、この点については謎のまま終わっている。曽我の妻を華屋で働けるようにしたのは、罪滅ぼし?美冬の絶対的自信?、ただ、そこからもほころびがでてくる。
結局、職人としての才能を闇の世界で使い果たし、人生を棒に振った雅也。最後に、美冬を葬ろうとするも、加藤(刑事)に邪魔だてされる。加藤を撃つだけで自分は生き延びるという考えはなかったのか、もはや美冬に捨てられた状況で生きる希望がなかったのか。でもこの状況じゃ無理か。加藤に銃口を向けたとき、「俺と彼女だけの世界に入ってくるな」、この気持ちわかる。命がけで美冬と生きてきた雅也にとって加藤は邪魔者。
甘え等で男をいいなりにして自らの欲望をひとつひとつ実現していく美冬は悪魔のような存在であり、その欲望に終わりがないという流れだった。こういう女はコワイ。普通のまっとうな生活がいい。
寝る間も惜しんで読み続けたくなるような本でした。

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