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正しく使えていますか?亜リン酸とべと病防除(レタス/カンラン/ブロッコリー/カリフラワー/ハクサイ育苗、ほかルッコラ等のベビーリーフ)

日本では縁を切りたくても切れない「べと病」。
15℃前後で多湿だと一夜にしてハウスに蔓延したのではと思う程です。
秋から初夏までは非常に発生しやすく、作物が小さいほど被害が大きいです。
べと病対策に亜リン酸が有効と知り、有名な亜リン酸資材「ホスト○プ」等を使用したが効果を感じない…。けど、色々なところで効果ありと記載されているし、何か使用方法が間違っているのかと思ったのが、事の発端です。

ここではべと病防除のため、亜リン酸の使い方を見直ししたい方に役立つ内容を記載したいと思います。この方法で(特に育苗時)べと病発生はほぼ0になりました。※既に亜リン酸を使いこなしべと病抑制をしっかり出来ている方や、1度は亜リン酸を使用してべと病を抑制出来たが、最近再度べと病が抑制できなくなった方には有用ではないと思います。

ここからは、「亜リン酸は有効」という前提で、効果が感じられないところから、発生ほぼ0にまで持って行った経緯と具体的な方法について記載しようと思います。

結果から言うと、べと病が発生する前に亜リン酸粒状1号をセルトレーに対して10~15g散布するだけで発生しませんでした。

上記に至る経緯ですが、まず始めに野菜の密植栽培で1週間に1回、1000倍くらいで散布しましたが全くべと病が止まらず収穫物の大半が数日で駄目になりました。
効果はたぶんあるはずなのにどうしてだろうと考え、
次に、極端に濃い濃度で散布しましたが、葉が焼けて枯れました(苦笑)。

そこで、葉面散布では亜リン酸の吸収量・もしくは散布回数が少ないと考えました。高頻度で定期的な散布も面倒だし、固形肥料の形で継続的に少しずつ吸収させようと「亜リン酸粒状1号」をセルトレー苗に使用し始めたところ、これが効果抜群で今まで膨大な時間をかけて、べと病のない箇所を選んでいたのが嘘のようでした。

試験段階の結果も記載しておきますが、
播種>覆土直後に亜リン酸粒状1号をばらまいた場合、
・5g程度だと効果が若干怪しいです、そもそも1枚のセルトレーに均一に散布するのが難しい。
・10~15g程度で充分な効果が有り、トレーに散布するのもコツを掴めば簡単に出来ます。
・25g以上になると、若干の矮化(生育遅延)が見受けられ、40g以上になると致命的な生育遅延(双葉で生育が止まりやすい)、および葉の淡色化が発生します。

上記は、ベビーリーフのトレー栽培や通常の育苗で効果を確認したものです。注意事項として、どの病気でもそうですが発生してからの治療では、薬剤抵抗性の発達リスクが有ります。
亜リン酸は植物免疫を利用した防除なので薬剤抵抗性発達の可能性は低いですが無いわけではないので、発生する前に散布するのが鉄則です(べと病発生後の治療効果までは確認していません)
また、参考にした資料では、亜リン酸液肥の500倍灌注を記載していましたが畑規模で行うのはほぼ不可能です。
更に大きな青果物で、畑で栽培するサイズには「亜リン酸粒状2号」を元肥の形で混和する等が考えられると思いますので、その参考になればと思います。
ほか、薬害抵抗性に関する記事は【農薬による防除効果の確認】使用している農薬、本当に効いているの?基本的な考えと効きめの確認https://note.com/nosan2022/n/n7dab2702d7ee
も参考にして頂ければと思います。

最後に、この考え方が新たな病害虫防除の一助となることを切に願います。
また、最近はアブラナ科の黒斑細菌病に苦労しており、もし複数品種に対して比較的低コストで防除効果を上げられる方法があれば教えていただきたいです。

※余談
①アブラナ科に発生するべと病とキク科に発生するべと病は、同じべと病と言っても若干違うものです。なのでキク科に発生しているべと病菌をアブラナ科に接種しても感染しません、逆もまた然りです。ネギ科やウリ科等、多数の作物に発生するべと病も、有機栽培のように上手く組み合わせて栽培すれば、そもそも亜リン酸すら散布せずに低コストで栽培できるかもしれませんね。
②他の病害虫もそうですが、病気、特にべと病菌はその感染速度(≒増殖速度)に比例して薬剤抵抗性が極めて発生しやすい病気です。
実際、新薬が出てから10年経たずに地域一帯が薬剤抵抗性べと病菌で蔓延しました。亜リン酸のみ頼らず、複数の有効な薬剤をローテーションすることで抵抗性発達を抑制することが期待できます。どうかローテーションを意識して下さい、そうすると今後も私が助かります(笑)。
③最近は、基本的な予防防除を植物免疫を高める方向で検討した方が良いのではと思っています。私自身、化学農薬は必須で今後も使用するのはほぼ確定していますが、そういうのも組み合わせていかないと限界を感じているのも事実です。亜リン酸もそのひとつですが、銅や亜鉛、各種糖アミノ酸、化学農薬ながら植物免疫機能の向上で防除するオリゼメート等は上手い使用方法がもっとあると考えています。

参照
:ルーラル電子図書館
:淡路農業技術センター http://jppa.or.jp/archive/pdf/64_09_12.pdf、ほか

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