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特徴的な使い方をする日本語についていくつか紹介したい

日本語は世界一難しい言語である。








というのはウソ




あくまでインド・ヨーロッパ語族からみた話である。ひらがな・カタカナ・漢字の3種類あって習得がむずかしいのは認める。僕としてはアラビア語(مساء الخير)が一番難しいと思っている。それかピダハン語か。



皆の目に絶対は入る日本語で書かれた文章において、「そういう使い方するんだ」といった用例があったり、不思議な使い方をする日本語もたまに見かける。そういった単語や表現、文章を集めたり、調べたりするのが日課である。今回、「日本語の不思議なことや表現」について一覧にしたのと、僕の所感を述べていきたい。



加害者と被害者でわける「男/女」と「男性/女性」

ニュースや新聞、報道にて加害者や被害者の名前が明らかでない、もしくは公表しない場合

加害者・・・男・女
被害者・・・男性・女性

と使いわけているようである。単に「男・女」はストレートな表現になるのに対して、「男性・女性」は五感としてすこしばかりの配慮を感じる。



「緊急で動画をまわしています」


YouTubeの冒頭の0秒から

「たった今、緊急で動画をまわしています」

たった今動画を撮ってその場で投稿したと思われる動画の冒頭の多くは、上記のように「たった今、緊急で動画をまわしています」というYouTuberのセリフが入る。気になるのが「緊急」の是非である。

ここ最近、「緊急」が誇張法(話題作りとして)用いられる事例が見られる。

テイラー・スウィフトが東京ドーム公演スタート 4公演後に恋人出場のスーパーボウル観戦で緊急帰国へ(サンケイスポーツ) - Yahoo!ニュース

上記の例も、本来あるべき本人にとっての「緊急性」という意味はほぼない。

第3者あるいは視聴者が前触れなく突如この情報を知る、という程度だと思う。



「住民票の写し」という紛らわしさ


提出先から「住民票の原本を提出してください」と指示を受けた場合、「コピーせずにもらったものをそのまま提出する」のは直感でわかるが、結論から言うと、役所等でもらう住民票は原本ではない。まず、役所で住民票の原本は絶対にもらえない。職員ですら持ち出せないものである。

住所、氏名、生年月日、性別、本籍などの住民票(原本)の記載事項を表記して市区町村が発行する証明書を単に「住民票の写し」といっているのである。

つまり、役所に「住民票ください」といったときに窓口の人からもらうものが「住民票の写し」である。提出先からよく言われる「住民票の原本を提出せよ」と言われた場合、「住民票の写し」をコンビニなどでコピーせずにそのまま提出すればよい。

ここまでは良いのだが、しっかりしている会社などは「住民票の写しを提出してください」と言うが、「写し=コピー」という誤解を招くかもしれない。誤解を招かないようにするのならば、「役所でもらった住民票をそのまま提出してください」と言ったほうがまだ混乱は少ないように思う。


「現役〇〇」


「現役女子高生の〇〇さん」という紹介のしかたをよく見る。「現役」をつけてもつけなくても高校生であることに違いない。「世代」をテーマにした場合の文脈において「今まさに高校生である」という瞬間を切り取って強調しているという用法なのだと思われる。


「限界〇〇」


この数年でみかけるようになった「限界〇〇」について

上記のポストでもうすでに答えが出ているような気もするが、もうすこし深堀してみよう。具体的な用例としては以下のポストに見られる。


ここで「限界」の意味を『日本国語大辞典』をみてみる。

(1)物事の範囲、能力、程度などの、これ以外、これ以上は無いという、ぎりぎりのところ。かぎり
(2)(─する)区域を限ること。

従来の意味としては、程度をの上限や下限を表す用語である。

この「限界」の後ろに名詞を付加すると、それを(名詞を)表すギリギリの程度であるという意味的特徴が見いだせるのである。


○○+る(ex.タピる、沼るなど)


「タピる」(タピオカを飲むこと)に代表されるように、「〇〇+る」の形をとって動詞化する言語変化がみられる。(これを動詞化接辞というらしい)

この「○○+る」の用例は

・名詞+る
→事故る、沼る
・固有名詞+る
→タピる、ググる
・外来語+る
→コピる、ミスる、バグる、アピる、バズる
・短縮形+る
→キョドる(挙動不審+る)、告る(告白+る)、サボる(サボタージュ+る)、牛耳る(牛耳を執る+る)

の4パターンに多く見られる。

ちなみに、おどろくことに『日本国語大辞典』に「茶漬る」(ちゃづる)という用語が立項されていた。

(「ちゃづけ(茶漬)」を動詞化した語)
茶漬飯を食べる。

『日本国語大辞典』「茶漬る」項より

すでに江戸時代の洒落本に用例がある。これも「タピる」と同様に、江戸時代でもすでに言語変化がおきている。


副詞的に用いられる例(大人買い、半端ない、バカ売れなど)


事物の性質・状態についての程度を表現するためにも、副詞的に用いられる言語変化も多々見られる。

これらも本来の意味から変化した語彙である。

「大人」の従来の意味
(1)成人式を終えた者。成人。
(2)成長した一人前の男女。特に小児に対比していうことが多い。
(3)(比喩的に)物の考え方や態度などが成熟していること。また、成人としてふさわしいさまであること。

『日本国語大辞典』「大人」項より

大量に物を買うことを「大人買い」と表現するが、「大人」という用語の意味にあるように、「成長した一人前の男女。特に小児に対比していうことが多い」とあることから、「大人はお金をもっているので大量に買うことができる」という意味的特徴が見いだせる。これに類似した例でいうと、一時期話題になった「爆買い」が挙げられる。

あとの例として「バカ」「超」「激」「即」「鬼」「クソ」「プチ」などが見られる。
・激ウマ
・鬼キモい
・プチ情報
・即レス
・バカ売れ
・クソゲー など


「一周回って」の意味は動作or時間or思考


「1周回って」というと「陸上トラックを1周する」のように動作そのもののを意味するのが通常の用例だが、文意によってはその意味が変わる事例がある。

・原点回帰を意味する用例

「いろんなジャンルを一通りかじってみたけどやっぱりこれ」という文意に用いられる。以前のものが再度良く見えたり流行ったりするという解釈なのであろう。

・時間の経過とともに考え方や見方が変わった

時間の経過とともに、ものの見方がかわったときに用いられるパターンである。肌感だが、この用例が一番多い。

・視点を変えてみたら考え方や見方が変わった

「ものの見方を変えればそういう考え方(or見方)になるよね?」という文意に用いられる。


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