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梶井基次郎『檸檬』全文にツッコミを入れてみた

以下、本文は「青空文庫」による引用である。


 えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終おさえつけていた。

厨二病みたいな始まりだ

焦躁しょうそうと言おうか、嫌悪と言おうか――酒を飲んだあとに宿酔ふつかよいがあるように、酒を毎日飲んでいると宿酔に相当した時期がやって来る。それが来たのだ。


焦燥を二日酔いで喩えるの面白い

これはちょっといけなかった。結果した肺尖はいせんカタルや神経衰弱がいけないのではない。

初見だと神経衰弱はトランプゲームだと思ってしまうよ

また背を焼くような借金などがいけないのではない。いけないのはその不吉な塊だ。


ここまで読んでもまだ厨二病こじらせた青年としか思えない

以前私を喜ばせたどんな美しい音楽も、どんな美しい詩の一節も辛抱がならなくなった。

ぜひ聞かせてもらおうかその美しい音楽を

蓄音器を聴かせてもらいにわざわざ出かけて行っても、最初の二三小節で不意に立ち上がってしまいたくなる。

一応外には出ようとしてえらい

何かが私を居堪いたたまらずさせるのだ。それで始終私は街から街を浮浪し続けていた。


旅に出て価値観が変わりました。ってブログに書きそう。

 何故なぜだかその頃私は見すぼらしくて美しいものに強くひきつけられたのを覚えている。

そんな人には廃墟めぐりがおすすめだよ

風景にしても壊れかかった街だとか、その街にしてもよそよそしい表通りよりもどこか親しみのある、汚い洗濯物が干してあったりがらくた・・・・が転がしてあったりむさくるしい部屋がのぞいていたりする裏通りが好きであった。

そんなところある???

雨や風がむしばんでやがて土に帰ってしまう、と言ったような趣きのある街で、土塀どべいが崩れていたり家並が傾きかかっていたり――勢いのいいのは植物だけで、時とするとびっくりさせるような向日葵ひまわりがあったりカンナが咲いていたりする。

い〜や、建築基準法!!!(東京ホテイソン)

 時どき私はそんな路を歩きながら、ふと、そこが京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――そのような市へ今自分が来ているのだ――という錯覚を起こそうと努める。

目を覚ませ!ここは京都だ!!!

私は、できることなら京都から逃げ出して誰一人知らないような市へ行ってしまいたかった。


バックパッカーの人がよく言いそう

第一に安静。がらんとした旅館の一室。清浄な蒲団ふとんにおいのいい蚊帳かやのりのよくきいた浴衣ゆかた。そこで一月ほど何も思わず横になりたい。ねがわくはここがいつの間にかその市になっているのだったら。――錯覚がようやく成功しはじめると私はそれからそれへ想像の絵具を塗りつけてゆく。

芸術は爆発だ

なんのことはない、私の錯覚と壊れかかった街との二重写しである。そして私はその中に現実の私自身を見失うのを楽しんだ。

おい〜〜〜!!!少しめんどくさいぞ〜〜〜!!!

 私はまたあの花火というやつが好きになった。花火そのものは第二段として、あの安っぽい絵具で赤や紫や黄や青や、さまざまの縞模様しまもようを持った花火の束、中山寺の星下り、花合戦、枯れすすき。それから鼠花火ねずみはなびというのは一つずつ輪になっていて箱に詰めてある。そんなものが変に私の心をそそった。

書き出しからだいぶ経ったけど、まだ厨二病をこじらせた青年だよ

 それからまた、びいどろ・・・・の味ほどかすかな涼しい味があるものか。

びいどろって味するの?????え、、、食べ物だったの?????(混乱)

私は幼い時よくそれを口に入れては父母に叱られたものだが、その幼時のあまい記憶が大きくなって落ちれた私によみがえってくるせいだろうか、まったくあの味にはかすかなさわやかななんとなく詩美と言ったような味覚が漂って来る。

無機質なびいどろになんて食レポ…

 察しはつくだろうが私にはまるで金がなかった。とは言えそんなものを見て少しでも心の動きかけた時の私自身を慰めるためには贅沢ぜいたくということが必要であった。


金がなくてもびいどろは食べんやろ

二銭や三銭のもの――と言って贅沢なもの。美しいもの――と言って無気力な私の触角にむしろびて来るもの。――そう言ったものが自然私を慰めるのだ。


チョットナニイッテルカワカラナイ

 生活がまだむしばまれていなかった以前私の好きであった所は、たとえば丸善であった。

主人公のこころのよりどころ、今回の舞台、丸善

赤や黄のオードコロンやオードキニン。洒落しゃれた切子細工や典雅なロココ趣味の浮模様を持った琥珀色や翡翠色ひすいろ香水壜こうすいびん煙管きせる、小刀、石鹸せっけん煙草たばこ。私はそんなものを見るのに小一時間も費すことがあった。そして結局一等いい鉛筆を一本買うくらいの贅沢をするのだった。

急にカタカナでてきた。

しかしここももうその頃の私にとっては重くるしい場所に過ぎなかった。書籍、学生、勘定台、これらはみな借金取りの亡霊のように私には見えるのだった。


借金取りの亡霊とは、なんてけったいな……

 ある朝――その頃私は甲の友達から乙の友達へというふうに友達の下宿を転々として暮らしていたのだが――友達が学校へ出てしまったあとの空虚な空気のなかにぽつねんと一人取り残された。


友達のこと「甲」「乙」って呼んでるの???契約書ですか???

私はまたそこから彷徨さまよい出なければならなかった。何かが私を追いたてる。

気のせいです。

そして街から街へ、先に言ったような裏通りを歩いたり、駄菓子屋の前で立ちまったり、乾物屋の乾蝦ほしえび棒鱈ぼうだら湯葉ゆばを眺めたり、とうとう私は二条の方へ寺町をさがり、そこの果物屋で足をめた。


1人街ブラロケが始まりました

ここでちょっとその果物屋を紹介したいのだが、その果物屋は私の知っていた範囲で最も好きな店であった。

なんか急にキュレーション記事みたいになったぞ

そこは決して立派な店ではなかったのだが、果物屋固有の美しさが最も露骨に感ぜられた。

果物屋なんてそこらへんにいっぱいあるやろ……

果物はかなり勾配の急な台の上に並べてあって、その台というのも古びた黒い漆塗うるしぬりの板だったように思える。

大丈夫???果物転がらない???

何か華やかな美しい音楽の快速調アッレグロの流れが、見る人を石に化したというゴルゴンの鬼面――的なものを差しつけられて、あんな色彩やあんなヴォリウムにり固まったというふうに果物は並んでいる。

ここだけなんかすごい比喩

青物もやはり奥へゆけばゆくほどうず高く積まれている。――実際あそこの人参葉にんじんばの美しさなどは素晴すばらしかった。それから水にけてある豆だとか慈姑くわいだとか。

とりあえず、ところせましと並んであるのだけはわかった

 またそこの家の美しいのは夜だった。寺町通はいったいににぎやかな通りで――と言って感じは東京や大阪よりはずっと澄んでいるが――飾窓の光がおびただしく街路へ流れ出ている。

やめて!東京も大阪もいい街よ!!!

それがどうしたわけかその店頭の周囲だけが妙に暗いのだ。もともと片方は暗い二条通に接している街角になっているので、暗いのは当然であったが、その隣家が寺町通にある家にもかかわらず暗かったのが瞭然はっきりしない。

暗い果物屋ってちょっと怖い。間接照明ガンガン当てましょう。

しかしその家が暗くなかったら、あんなにも私を誘惑するには至らなかったと思う。


「薄暗い感じが心地よかったです」(小並感)

もう一つはその家の打ち出したひさしなのだが、その廂が眼深まぶかに冠った帽子の廂のように――これは形容というよりも、「おや、あそこの店は帽子の廂をやけに下げているぞ」と思わせるほどなので、廂の上はこれも真暗なのだ。

せっかくいい喩えしてるのに「これは形容というよりも」って言わないでよ…

そう周囲が真暗なため、店頭にけられた幾つもの電燈が驟雨しゅううのように浴びせかける絢爛けんらんは、周囲の何者にも奪われることなく、ほしいままにも美しい眺めが照らし出されているのだ。

ポツポツと着く灯りが良かったんだね。僕はまだホラーだと思ってるよ。

裸の電燈が細長い螺旋棒らせんぼうをきりきり眼の中へ刺し込んでくる往来に立って、また近所にある鎰屋かぎやの二階の硝子ガラス窓をすかして眺めたこの果物店の眺めほど、その時どきの私を興がらせたものは寺町の中でもまれだった。


まだ果物屋の内観の話してるやん…

その日私はいつになくその店で買物をした。というのはその店には珍しい檸檬れもんが出ていたのだ。

タイトル回収しました

檸檬などごくありふれている。がその店というのも見すぼらしくはないまでもただあたりまえの八百屋に過ぎなかったので、それまであまり見かけたことはなかった。


そのお店にある檸檬がよかったのだな

いったい私はあの檸檬が好きだ。レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあのたけの詰まった紡錘形の恰好かっこうも。

檸檬って大体その形じゃない?

――結局私はそれを一つだけ買うことにした。それからの私はどこへどう歩いたのだろう。私は長い間街を歩いていた。

檸檬1つだけもって歩いてるの、想像したらちょっとこわい

始終私の心を圧えつけていた不吉な塊がそれを握った瞬間からいくらかゆるんで来たとみえて、私は街の上で非常に幸福であった。

檸檬を見つめながらニヤニヤしてるのかな

あんなに執拗しつこかった憂鬱が、そんなものの一顆いっかで紛らされる――あるいは不審なことが、逆説的なほんとうであった。それにしても心というやつはなんという不可思議なやつだろう。

そんな檸檬1つで情緒揺らぐのかな…

 その檸檬の冷たさはたとえようもなくよかった。その頃私は肺尖はいせんを悪くしていていつも身体に熱が出た。

結局その体調の悪さは肺尖だったの?

事実友達の誰彼だれかれに私の熱を見せびらかすために手の握り合いなどをしてみるのだが、私の掌が誰のよりも熱かった。

手を握り合った???BL???(混乱)

その熱いせいだったのだろう、握っている掌から身内に浸み透ってゆくようなその冷たさは快いものだった。

他人と違う自分に酔いしれてるやん

 私は何度も何度もその果実を鼻に持っていってはいでみた。

クンクン

それの産地だというカリフォルニヤが想像に上って来る。

行ったことのない外国に想像を膨らませる主人公

漢文で習った「売柑者之言」の中に書いてあった「鼻をつ」という言葉がれぎれに浮かんで来る。

鼻を撲たれた僕「イダイ…ッ!!!」

そしてふかぶかと胸一杯に匂やかな空気を吸い込めば、ついぞ胸一杯に呼吸したことのなかった私の身体や顔には温い血のほとぼりが昇って来てなんだか身内に元気が目覚めて来たのだった。……

酸欠になって失神してしまわないか???

 実際あんな単純な冷覚や触覚や嗅覚や視覚が、ずっと昔からこればかり探していたのだと言いたくなったほど私にしっくりしたなんて私は不思議に思える――それがあの頃のことなんだから。

檸檬1つに想像膨らませすぎじゃないか???

私はもう往来を軽やかな昂奮に弾んで、一種誇りかな気持さえ感じながら、美的装束をして街を闊歩かっぽした詩人のことなど思い浮かべては歩いていた。

主人公、躁なう。

汚れた手拭の上へ載せてみたりマントの上へあてがってみたりして色の反映を量はかったり、またこんなことを思ったり、

食べ物で遊ばないでください

――つまりはこの重さなんだな。――

「得体の知れない塊」と檸檬の重さが同じってコト!?

 その重さこそつねづね尋ねあぐんでいたもので、疑いもなくこの重さはすべての善いものすべての美しいものを重量に換算して来た重さであるとか、思いあがった諧謔心かいぎゃくしんからそんな馬鹿げたことを考えてみたり――なにがさて私は幸福だったのだ。

檸檬の形とか色とかじゃなくて結局重さなんかい!!!

 どこをどう歩いたのだろう、私が最後に立ったのは丸善の前だった。平常あんなに避けていた丸善がその時の私にはやすやすと入れるように思えた。

檸檬を手に入れた主人公、無敵状態

「今日はひとつ入ってみてやろう」そして私はずかずか入って行った。

エクストリーム入店をかます主人公

 しかしどうしたことだろう、私の心を充たしていた幸福な感情はだんだん逃げていった。

主人公、闇落ち

香水の壜にも煙管きせるにも私の心はのしかかってはゆかなかった。

そしたら檸檬で思いっ切りのしかかってやろうじゃないか

憂鬱が立てめて来る、私は歩き廻った疲労が出て来たのだと思った。

はやくおうち帰りなさい

私は画本の棚の前へ行ってみた。画集の重たいのを取り出すのさえ常に増して力が要るな! と思った。

そりゃ檸檬に比べたら重いわな

しかし私は一冊ずつ抜き出してはみる、そして開けてはみるのだが、克明にはぐってゆく気持はさらに湧いて来ない。

なににぐっとくるわけ???

しかも呪われたことにはまた次の一冊を引き出して来る。

読んだ本はちゃんと元の場所に戻してね

それも同じことだ。それでいて一度バラバラとやってみなくては気が済まないのだ。

主人公、ご乱心なう

それ以上はたまらなくなってそこへ置いてしまう。

ただの迷惑客だ…

以前の位置へ戻すことさえできない。私は幾度もそれを繰り返した。

あぁ、いけません!!!元の場所に戻してください!!!

とうとうおしまいには日頃から大好きだったアングルの橙色だいだいいろの重い本までなおいっそうのえがたさのために置いてしまった。

主人公「この本重すぎて草」(物理)

――なんという呪われたことだ。手の筋肉に疲労が残っている。私は憂鬱になってしまって、自分が抜いたまま積み重ねた本の群を眺めていた。

眺めてないで片づけてください

 以前にはあんなに私をひきつけた画本がどうしたことだろう。

えぇと、僕に言われても知らないですね…

一枚一枚に眼をさらし終わって後、さてあまりに尋常な周囲を見廻すときのあの変にそぐわない気持を、私は以前には好んで味わっていたものであった。……

そ、そうですか…

「あ、そうだそうだ」その時私はたもとの中の檸檬れもんを憶い出した。本の色彩をゴチャゴチャに積みあげて、一度この檸檬で試してみたら。「そうだ」

京都へ行こう(すでに京都にいる主人公)

 私にまた先ほどの軽やかな昂奮が帰って来た。私は手当たり次第に積みあげ、またあわただしく潰し、また慌しく築きあげた。

主人公、躁なう(2回目)

新しく引き抜いてつけ加えたり、取り去ったりした。奇怪な幻想的な城が、そのたびに赤くなったり青くなったりした。

本を高く積み上げないで棚に戻しくれませんか…

 やっとそれはでき上がった。そして軽く跳りあがる心を制しながら、その城壁の頂きに恐る恐る檸檬れもんを据えつけた。そしてそれは上出来だった。

あぁ、いけません!!!本の上に食べ物おかないでください…っ!!!

 見わたすと、その檸檬の色彩はガチャガチャした色の階調をひっそりと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴えかえっていた。私はほこりっぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような気がした。私はしばらくそれを眺めていた。

眺めてないで片づけてください(2回目)

 不意に第二のアイディアが起こった。その奇妙なたくらみはむしろ私をぎょっとさせた。

まさか…

 ――それをそのままにしておいて私は、なに喰くわぬ顔をして外へ出る。――

あぁ、いけません!!!檸檬はお持ち帰りください!!!

 私は変にくすぐったい気持がした。「出て行こうかなあ。そうだ出て行こう」そして私はすたすた出て行った。

あぁ、いけません!!!犯罪者気分に浸らないでください!!!

 変にくすぐったい気持が街の上の私を微笑ほほえませた。丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。

ちょっとイタイですぞ…ッ!!!

 私はこの想像を熱心に追求した。「そうしたらあの気詰まりな丸善も粉葉こっぱみじんだろう」

「檸檬爆弾」の爆誕

 そして私は活動写真の看板画が奇体な趣きで街をいろどっている京極を下って行った。

主人公、逃走中


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