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日本の暖冬と地球気候とのダイナミックな関係

今年度の日本は、全国的に暖冬だと言われています。なぜ暖冬なのか、地球全体の気候との関係についてお伝えします。キーワードは、「北極振動」「インド洋ダイポール」です。

どれほど暖冬なのか

1月中旬から2月中旬までの日本全国の気温・降水量・日照時間について、平年とどれほど違うのか、気象庁のまとめた図を2つご覧ください。平年値とは、1981〜2010年の30年間の平均の値になります。

1〜2月の日本気象の平年差

地域平均気温平年差の時系列

12月から1月末まで、ずっと暖冬が続いていることがわかります。これにより、特に北陸・中部地方では積雪が異常に少なく、スキー場などが大変困っているそうです。
気象庁の下のサイトに、過去の天気についてのサマリーが掲載されます。2つの図はそちらから引用してきました。内容は随時更新されてしまうので、過去のアーカイブが残っていないのが残念です。

他にも、日本気象協会が今年の冬がどれほど異常なのかまとめています。

この暖冬がなぜ引き起こされているのか、地球スケールの気候との関係を読み解きます。

気候のダイナミクスと日本の暖冬

この暖冬に関連している気候のメカニズムは、「北極振動」「インド洋ダイポール」です。

まずは北極振動(Arctic Oscillation; AO)について。北極振動は、北極付近の気圧が数年単位で高低を繰り返す現象のことです。北極域の海面気圧が平年より低い場合を「正の北極振動」、高い場合を「負の北極振動」と呼びます。1月ごろから「正の北極振動」が発生していて、この時は北側の寒気が南下しにくい状況になっているので、日本付近は南側の暖気に覆われやすくなります

正の北極振動

インド洋ダイポール(Indian Ocean Dipole; IOD)については、以前の記事でも解説をしましたが、インド洋の海面水温が東西でシーソーのように振動する現象です。正のモードでは暖かい水がインド洋東側に出現し、負のモードでは暖かい水がインド洋西側に出現します。暖かい海水の上空では上昇気流ができやすくなります。このインド洋ダイポールも最近は正のモードが非常に強く出ており、偏西風の経路を変化させることで、日本が暖冬になる原因を作り出しています

正のインド洋ダイポール

IOD時系列


先程の気象庁のサイト「日本の異常気象」の中で、1月24日に暖冬の原因についての見解が発表されていました。「令和元年12月以降の高温と少雪の状況について(速報)」の資料から図を引用します。

暖冬の原因の概念図

紫の矢印が偏西風の経路になります。日本付近では平年に比べて、偏西風が北側に寄っていることがわかります。これにより、日本付近は南からの暖かい空気に覆われて、寒気が来にくい暖冬になるということです。この偏西風のずれ込みは、インド洋ダイポールモードが強い正の状態にあることが原因だとされています。

北極振動は1月ごろから正のモードが強くなってきたそうで、こちらは北側の寒気が南に進むことを妨げることになります。平年の1〜2月ならば、北からの寒気が日本全体を覆い、真冬の寒さをもたらすのですが、正の北極振動とインド洋ダイポールモードにより、寒気は北側にとどまり、日本に暖冬をもたらすことになります。

地球温暖化との関係は?

現時点で、この暖冬と地球温暖化との関係は不明です。ですが、インド洋ダイポールの最近の強い正の状態はここ数十年でも最大クラスで、もしかしたら地球温暖化の影響を受けているかもしれません。このインド洋ダイポールの状態が、オーストラリア南東部での森林火災やアフリカ東部での豪雨をもたらしていると言われています。

今回の暖冬と地球温暖化の関係は今後の研究がきっと明らかにしてくれることと思います。この暖冬により雪が少なくなるだけではなく、春の訪れも早くなりそうですね。梅は例年よりも早く開花し、スギ花粉も例年より早く飛散しているようなので、きっと桜の開花時期も例年より早くなると予想しています。


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