47.沢水困(たくすいこん)~堤防の決壊②

六十四卦の四十七番目、沢水困の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/nc132c319f473

47沢水困

主爻

主爻は、九二と九五です。困難なる状況にあって、一致団結して小人の妨害を克服するのです。

初六

臀(とん)、株木(ちゅぼく)に困しむ。幽谷に入る。三歳観ず。
象に曰く、幽谷に入るとは、幽(くら)くして明かならざるなり。

(疲れて立てずに)尻を木の切り株に(降ろすも、座り心地の悪さに)苦しむ。奥深い谷底に迷い込む。三年は出られないであろう。

不正の陰爻。坎の穴底にはまっております。九四と応じておりますが、九二に阻まれております。六三と共に九二を苦しめるも、それが返って己を苦しめる結果となります。九四はこれを哀れと思わぬでもないですが、今までの初六の心掛けがよろしくないので、急には助けてくれません。

九二

酒食に困しむ。朱紱(しゅふつ)方(まさ)に来らんとす。用つて享祀(きょうし)するに利し。征くは凶。咎无し。
象に曰く、酒食に困しむとは、中にして慶(よろこび)有るなり。

酒食をもって(心身を養いながら)苦しみつつも(中徳を発揮しながら時機を待つ)。やがて朱色の礼服を着た賢人(九五)が来たりて(六二を救う)。祖霊を祀るが如き心境でいるがよろしい。こちらから進んで行くのは凶。咎はない。

坎中にあって初六と六三の小人に挟まれて苦しめられておりますが、剛健中正なる徳を発揮して、苦しみの中に喜びを見出しながら時機を待ちます。応爻であれば速やかに助け合えるのですが、九二と九五は不応であり、やや時間を要するのです。

六三

石に困しみ、蒺藜(しつれい)に據(よ)る。其の宮(きゅう)に入り、其の妻を見ず。凶。
象に曰く、蒺藜に據るとは、剛に乗るなり。其の宮に入り、其の妻を見ずとは、不祥なるなり。

(立ちふさがる)巨石(九四)に苦しみ、棘(いばら)の上(九二)に(痛がりながら)座る。宮(自分の家)に帰るも、妻(上六)は逃げていなくなっている。

不正の陰爻。極悪人の象徴です。上六と共に九四を苦しめようとしますが、九四は巨石の如く立ち塞がってとても敵わず、そこで九二に助けを求めるのですが、かつて初六と共に苦しめたために受け入れられず、棘の上に座るような息苦しさを覚えます。互卦に離卦があり、宮の象です。自分の家に帰ってみれば、上六の妻は逃げてしまっており、結局誰の助けも得られないのです。

六三(繋辞下伝)

繋辞下伝の第五章より抜粋します。

易に曰く、石に困す。蒺藜(しつり)に拠る。其の宮に入り、其の妻を見ず。凶。子曰く、困する所に非ずして困す。名必ず辱しめらる。拠る所に非ずして拠る。身必ず危し。既に辱しめられ且つ危うし。死期將(まさ)に至らんとす。妻其れ見るを得(う)可けんや。

困の卦の六三に曰く「石に困す。蒺藜に拠る。其の宮に入り、其の妻を見ず。凶。」と。
孔子曰く、困窮すべきでないところにおいて困窮するときは、名誉は必ず辱められる(六三は本来の正しい道を守っていれば困窮することはなかったのである)。(九二など)自分の拠り所とすべきでないところに拠りかかって頼りにしようとするときは、自分の身は必ず危い。既に大いなる恥辱を蒙り、かつ大いなる危険に身を晒している情態であっては、死すべき時が正に至ろうとしている。こういう場合に至っては自分の妻にも遭うことはできないのである。

九四

来(きた)ること徐徐(じょじょ)たり。金車に困しむ。吝。終(おわり)有り。
象に曰く、来ること徐徐たりとは、志、下に有るなり。位に当らずと雖も、興(よ)有るなり。

(苦しむ初六の元に)向かうこと遅遅である。金の車(九二)に(行く手を阻まれて)苦しむ。恥ずべきである。しかし(結局は志通じて初六が反省し振る舞いを改めるので)終りはよろしかろう。

深い谷で苦しむ初六を助けたいのですが、初六は心掛け正しからず、かつ九二の賢人に賛成されず、九四はぐずぐずとして進むこと非常に遅れます。しかし初六はやがて九四と感応し、反省して心掛けを改めるのです。

九五

劓刖(ざげつ)す。赤紱(せきふつ)に困しむ。乃ち徐(おもむ)ろに説(よろこび)有り。用つて祭祀するに利し。
象に曰く、劓刖すとは、志、未だ得ざるなり。乃ち徐ろに説有りとは、中直(ちゅうちょく)なるを以てなり。用つて祭祀するに利しとは、福(さいわい)を受くるなり。

(上六を)鼻を削ぐ刑に処して(初六と六三を)足を切る刑に処する。赤い礼服を着た賢人(九二)に(会えずして)苦しむも、遠からず(会えて)喜びがあろう。祖霊を祀るが如き心境でいるがよろしい。

共に剛健中正たる九二と共に、難局を乗り越えます。困窮の原因たる各陰爻を処罰して、ようやく幸いを得られるのです。

上六

葛藟(かつるい)に臲卼(げきこつ)に困しむ。曰く動けば悔ゆと。悔ゆる有りて征けば吉。
象に曰く、葛藟に困しむとは、未だ当らざるなり。動けば悔ゆと悔ゆる有るは、吉にして行くなり。

(六三が)葛(くず)の如くまとわりついて、険阻なる高所にいるが如き不安定さに苦しむ。このまま(反省せずに)動けば後悔するであろうと(自覚する)。後悔して進めば吉。

兌卦の上爻にして巧言令色、六三と共に九四と九五を苦しませてきたのですが、このままではいけないと反省し、自分にまとわりつく六三から距離を置いて心を入れ替えます。

まとめ

陰の小人が、陽の賢人を囲って苦しめる構図です。

九二と九五は応じておらず、すぐに助け合うことは出来ませんが、時間を擁しながらも助け合っい窮乏を脱します。九四は応ずる初六の小人を窮地を救おうとしますが、すぐには行かずに時間をかけて心を改めさせます。

初六は六三と共に九二を苦しめますが、そのために自ら苦しんで、九四の助けを得て心を改めます。六三は初六と共に九二を苦しめ、上六と共に九四と九五を苦しめますが、最後は上六にすら見放されて孤立します。上六は六三との縁を断ち切り改心します。

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