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吉祥寺で映画3本。

本日はおやすみだったので吉祥寺で三本。
サービスデイだったようで、1200円×3と安上がりでした。

「37セカンズ」

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三本の中でいちばん良かった。
身障者を主役にした映画ではそうとうな傑作だと思う。美化もせず、また、差別と戦う正義の味方みたいなのも出てこない。あくまで障害者ではなく単なる一人の人、として扱うのが素晴らしい。
せっかくエロ漫画を描いて原稿持っていったのに、編集長役の板谷由夏が「リアリティがないからセックス経験してから出直してこい」みたいな酷いことを言う。
こんなデリカシーのない言葉を平気で身障者にぶつけてしまうわけだが、それこそがこの映画のスタンス。こんな酷いセリフが主人公の飛躍を呼ぶ。
私自身がデリカシーのない人間なのですけど、相手を思いやらない率直な言葉が、時に人を助けることがある。そこが大好きな映画でした。


「ピーナッツバター・ファルコン」

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狙ったわけではないけれど、こちらも身障者のバディものロードムービーなのでした。
んー、こちらはなんか予想の範疇というか、ダウン症の青年が施設を脱走して旅する話なんだけど、この主役のわがままがなんか「好ましいこと」として描かれてるのがどーもね。身障者がやることはなんでも善、というわけじゃないから。そこがいまいち乗り切れませんでした。
楽しい映画ではありますが、深く心を打つものではなかった。


「彼らは生きていた」

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ピージャクの戦争ドキュメンタリー。
面白かったけれど、カラーで蘇る一次大戦の記録フィルム!という以上の何かがあるのか、というところ。ホンモノなので説得力は半端ないのですけど、インタビュー音声と戦争の映像でずーっと進むので飽きてはくる。
カメラが珍しいのか、兵士達が屈託のない笑顔で笑いかけてくるのがとてもほんわかした気持ちになりました。

[2020.03.11 facebookから]

※追記

「37セカンズ」
もう少し感想。


冒頭の入浴シーンが素晴らしい。

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母親の子に対する豊かな愛と、その微妙な過剰さを見事に表現していて、心がざわざわする。
脳性マヒの主人公の乳が出ることで、あー、生優しい映画じゃないんだな、と感じさせる。
その一方で、母ちゃんの乳も無駄に出てきて、それが映画の姿勢をきっちり告げていて好ましい。
すなわち、
「主人公だけを特別扱いはしませんよ」
障害を理由に主人公を露骨にいじめたり、必要以上に幸せにしたりはしない、ということ。
それがこの映画の最も正しいところだろうと思う。


歌舞伎町での性体験もうまくいかないのに金は取られる。
「ほんとは2万円なんだけど…」
とセリフがきたので
(1万円とかで許してくれるのかな…)
と予想したら
「1万8000円でいいよ」
なんて現実的な。。
これ、後から考えたら、素晴らしいセリフやなーと。リアリティはこういう細部に宿る。
男娼は男娼なりに厳しい世界に生きているのだ。
この映画、こういう細部で手を抜かないのがいい。


フィクションにおいて都合の良い偶然は一度くらいは許されるのだが、この映画でのそれは、新しい友達との出会いだ。渡辺真紀子とのシーンは全部染みた。
アダルトショップで青い綺麗なチンポコを買ったあとで、ふつうのブティックに買い物に行ってはしゃいでいるとこは泣けた。その段差のなさ。
チンポコと洋服に段差がない。
だれもがギョッと身構えてしまうものをさらりと描いて駆け抜けていく。
障害者と健常者、なんも変わらへんで、という主題が、このようなメタファーの中で繰り返し表現されていく。
素晴らしい。


オーディションで選ばれたという主役の佳山明は、映画の核として輝いている。
声や表情も素晴らしいのだけど、すごいなと思ったのは車椅子の運転。
実際に毎日毎日車椅子で生きている人なので、ほんとに体の一部のように車椅子が動く。
ほんのわずか、ためらうように、ずずっ、と前に出るとこがあるのだけど、あんなん女優が車椅子の練習してもあの動きにはならないんだろうなあ、と思う。

[2020.03.12 facebookから]

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