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20歳の自分に受けさせたい文章講義【書評】

文章を書きたいのに、いざ書き始めると自分の思っている通りの文章を書けない経験はないでしょうか?
今、まさにその最中にある私が、自信を持ってお勧めできる本書の紹介をしたいと思います。「ガイダンス」「リズムで決まる」「眼で考える」「椅子に座る」「ハサミを入れる」の4部構成のうち、今回は「ガイダンス」と「リズム」について解説していきます。

これは美しい文章を書くための講義ではありません。
伝えるための文章の書き方に的を絞った実用書です。
そんなことに興味のある方は、是非一度手にとってみてください。

【レビュー】

話せるのに書けないを解消すること、それが本書の軸となっています。
対象は駆け出しから経験者まで、全てのライター向け。
会話や映像とは違う、言葉と文字だけでどのように読み手に伝わる文章を書くかの方法論を伝えます。

話すことと書くことは全く違う行為、という話し言葉と書き言葉の違いを知り、そこからどのようにその距離を縮め、表現していくのかを具体例をあげています。簡潔明瞭に教えてくれることで実践にうつしやすく、これからライターになる方から既にライターである方まで、書くことの基本が詰まっています。

自分の思いを言葉だけで伝える技術。
大切なのは、文章を上手に書くことではない。

ガイダンスと4講義からなっていますが、筆者の伝えたいポイントは次のようにまとめられると思います。

書こうとするな、翻訳せよ。
話し言葉から書き言葉へ

書くこととは考えること。
書く技術を磨くことは、考える技術を身につけること。
物の見方・考え方が変わり、世界を見る目も変わってくる。

私は、学校での国語の授業や作文、読書感想文は好きではありませんでした。筆者の言葉を借りれば理由も明解です。
学校では「書き方」などは全く習ってきませんでした。句読点のルールや原稿用紙の使い方は習いましたが、文章の組み立て方や書く技術を体系的には習っていません。どう書くかなど一切習わず作文を書くのだから、書くこと自体を好きになるはずもないな、と思い、本を読んで何故か安堵感さえ感じました。

【著者】

フリーランスライター
1973年福岡県生まれ。かねて映画監督を夢見るも、大学の卒業制作(自主映画)で集団作業におけるキャプテンシーの致命的欠如を痛感し、挫折。ひとりで創作可能な文章の道を選ぶ。出版社勤務を経て24歳でフリーに。30歳からは書籍のライティングを専門とする。以来、「ライターとは“翻訳者”である」「文章は“リズム”で決まる」を信念に、ビジネス書や教養書を中心に現在まで約80冊を担当。編集者からは「踊るような文章を書くライターだ」と言われることが多い。多数のベストセラーを手掛け、インタビュー集『ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書』(講談社)はシリーズ累計70万部を突破。本書は単著デビュー作となる。公式サイト http://www.office-koga.com/
出典:アマゾンより

【目次】

ガイダンスーそもそも文章とは?
1)リズムー読みやすい文章に不可欠なリズムとは?
2)構成ー文章はどう構成する?
3)読者ー読者を引きつける条件とは?
4)編集ー編集するとはどういうことか?

【要約】

ガイダンス

書くことの悩みは様々。
しかし集約すると以下の2つにしぼられることが多いのではないでしょうか?

<問題点>
1)文章を描こうとすると固まってしまう。(文章を書く前)
2)自分の気持ちをうまく文章にできない。(文章を書きながら)

<解決法>
1)文章を書く前に、翻訳の意識づけをする。
2)文章をうまく書くことができない時は、翻訳の技術が必要。

つまり、書けない人に足りないのは、翻訳の意識と技術
翻訳は相手の存在があって成立します。
知らない人にもわかるように言葉を尽くして説明することが大事になります。

ここで作者が伝えたい文章の定義(ポイント)は、

書こうとするから書けない。書こうとするな!
頭の中のぐるぐるを伝わる言葉に翻訳せよ。


わからないことがあったら書いて、自分の言葉に翻訳する意識づけをする。
わかるから書くのではなく、書くことで理解する。書くというアウトプットで自分の言葉にしていく。それが、「翻訳の意識づけ」です。

翻訳の意識づけを理解したあとは、翻訳技術を学びます。

<翻訳の技術>
1)聞いた話を誰かに話す。
5分でもいいから、誰にどんなテーマでどんなことを話していたかを誰かに話す。

2)言葉でないものを自分の言葉に置き換える。地図、絵、写真を言葉にし、説明のための文章を頭で考える。

自分の言葉に置き換えるために誰かに話すことで、再構築、再発見、再認識(自分のフィルターで)ができ、話しながら自分がどこにピントを合わせているか、自分にとって何が一番大切かがわかってきます。

ポイントは、自分の意見を一切入れないこと。
主観的になりすぎると、読者は共感しづらくなります。

【文章はリズム】

文体とは何か?文章のスタイル?語尾や主語などの体裁によって決まっているのか?
ずばり、文体とはリズム。そしてリズムとは感覚的なものや心構えではなく、どこまでも論理的なものなのです。

リズムの悪い文章=読みにくい文章。全体を読むとよくわからなくなる。
リズムの良い文章=違和感なくスラスラ読める。支離滅裂でなく論理の展開が明確。

リズムの鍵は

一般的な会話は支離滅裂。それでもコミュニケーションが成立するのは声や表情、沈黙の間や身振り手振りで補っているからです。
書き言葉はそれがない。そこで、話し言葉から書き言葉への変換が必要です。

美しい文章など目指すべきでなく、それより先に「正しさ」がくるのが大事。客観的な正しい文章が書ければ、独りよがりで支離滅裂な文章にはならず、文章の目的を正確に伝えることができます。

論理の展開が明確であれば、スラスラ読めるリズムの良い文章を書けるのです。

正しい書き方は存在しませんが、間違った書き方は確かにあるのです。

どのようにリズムのいい文章を書ける?
リズムを考える時、次の3つが挙げられます。

・視覚的リズム - 圧迫感を解消した書き方。
・聴覚的リズム - 耳で聞いたときのリズム。音読したときのリズム。
・断定によるリズム - 歯切れの良いリズム。明確で切れ味がある。

まず、視覚的リズムについて。

読者は文章を目で読んでいます
文字や句読点が並んだときの見た目の読みやすさなどの、視覚的リズムを考えましょう。

<文章の視覚的リズム>1)句読点の打ち方 - 1行に最低1つ。句読点が入らない場合はカッコを入れる。文意を明確にして理解を深める。
2)改行のタイミング - 早くていい。圧迫感を解消し読みやすくなる。最大5行くらいで改行が読みやすい。伝えたいメッセージを強調する。
3)漢字、ひらがなのバランス - ひらがな(白)の中に漢字(黒)を置くイメージで圧迫感を解消する。

つぎに、聴覚的リズムについてです。

自分の書いた文章を音読してみましょう
音読する中で気づくことは山のようにあります。

黙読だと受け身でスラスラ読めますが、音読だと能動的な作業であり、他人の文章を自分のリズムで読むから何故かいいよどんでしまいます。それは、まさに自分のリズムで他人の文章を読んでしまうから。そこで、一言一句を理解するため、自分の語彙やリズムとの違いを意識して読むことで、作者のリズムや特異性が際立ち、心に残りやすくなります。

では、自分の言葉とリズムで書いた文章を音読する効果はなんでしょうか?

<自分の文章を音読するポイント>
1)読点の位置を確認する
- 自分の思う文意と違いがあることに気づく。
2)言葉の重複を確認する - 癖を認識する。

読点、必要に応じて鍵かっこも必要に応じて変更しましょう。
自分の意図するところに、継ぎ目としての読点が入っているかを音読で確認します。

また、同じ文章の言葉が重なるととたんに読みにくくなります。
癖は書きながら認識するのが大変難しいので、そこで書いた後の音読が役立ちます。語尾や副詞など、普段あまり意識していない重複を再認識してみましょう。

最後に、断定によるリズムについて。

文章をシンプルに表現する方法。言い切ってしまう方法です。
一方で強く断定すると、反発が生まれてしまいやすいのも事実です。
その解決方法は?前後をしっかりした論理で固めることです。前後2、3行はいつも以上にしっかりした論理で。

自信があるから断定するのではなく、断定するから自信が湧く。
読者は説得力のある言葉を求めており、そこで信頼をします。信頼が湧くと自身が湧き、断定もしやすくなります。

まとめ

文章を書くことは、メール、SNSなどで以前より機会が増しました。同時に近いうちにAIにとって変わられるのでは、と考える方もいると思います。
しかし、書くことは考えること。ITにとって変わることはないと作者も強く主張しています。

文章力を手に入れることは生涯にわたって身を助けてくれる武器であり、最大級の投資と言えます。

では、また!

そのほか似たようなものを紹介。書写の別書跡でもよし

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