ダイアモンドはダイアモンドでしか磨けない。

この後「傷ついてきれいになる」と続く言葉を送ったのは、
NBAのワシントン・ウィザーズの八村塁選手の恩師の一人、
明成高校バスケットボール部・佐藤久夫監督だ。
幼いころからスタートするトップアスリートの育成は、
この言葉が真実であることを証明している。

渡米して飛び込んだダイアモンドのなかで

明成高校2年のときに出場したU-17ワールドカップで得点王を獲得、
3年時には同高のインターハイ優勝の原動力になった。さらに
日本人として初めて選出されたジョーダン・ブランド・クラシックでの
活躍が重なり、アメリカのバスケットボール強豪大学からオファーが殺到。
こうして八村選手は、容姿からは想像できないが、
ほとんど英会話ができない身でアメリカにわたった。

選んだダイアモンドは、小規模ながら世界から優秀な選手が集まる
ゴンザガ大学。
バスケットボール男子の全米大学体育協会(NCAA)1部の名門校だ。
日本人とは異なる血が流れていたことで
辛い経験もした少年時代があったが、
八村選手はこのゴンザガ大学で、
ダイアモンドに磨かれる別の辛さを経験する。
バスケットボールの練習やトレーニングのほかに、
英語の特別授業に宿題、さらに家庭教師との勉強もあり、
語学との両立に挑んだのだ。
そんな環境下で、ダイアモンドは傷つきながら
持ち前のメンタルの強さで事もなげに乗り越え、磨かれていった。
そして4年時の2019年、ウェストコースト・カンファレンス(WCC)
の最優秀選手賞を受賞しダイアモンドの頂点に上りつめる。

NBAというダイアモンドで磨かれ続ける

2018年、「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 1次予選」のWindow3で、八村選手は、バスケットボール日本代表に初招集。
オーストラリア戦で初めて勝って以来、8連勝で
W杯出場と東京五輪の開催国枠をつかんだ。
八村選手の登場で、バスケットボール自体のメディア露出も
格段にアップし、新たな次元に入ったと言ってよく、
期待が大きくふくらむ。

そして八村選手は、2019年6月のNBAドラフトで、
ワシントン・ウィザーズから日本人初の1巡目9位指名を受け、
晴れて米プロバスケットボールNBAの一員となった。
NIKEのジョーダンブランドとも契約し
「夢見てるのかな」という本人の言葉通り、まさに夢のような
シンデレラストーリーを歩むなか、

かつてそのマイケル・ジョーダンが在籍し、
現在はNBAオールスターに5度出場のジョン・ウォールがプレイする
ウィザーズで、八村選手は開幕戦から中心的な存在としてリアルな
活躍をみせている。

11月21日はスパーズ戦に先発、25分27秒の出場で
15得点7リバウンド(チームトップ)の成果を収めた。
笑顔が似合う明るい性格、
母校の先輩に感謝し母国・日本の持ち味を追求する心、
攻守に自信をみなぎらせながら、
さらに高いレベルを目指すアグレッシブさ。

ダイアモンドは、いまNBAというダイアモンドのなかで磨かれ続けている。

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