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最好映画

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最も好きな映画を書いてみます。
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2020年4月の記事一覧

最好映画。 060 「行き止まりの挽歌 ブレイクアウト」 1988年。

村川透監督、柏原寛司脚本。「あぶない刑事」シリーズがものすごく流行っていた頃に突然現れた和製ハードボイルド。新宿が舞台の雑多な雰囲気と、ずっと動き続けるカメラ、蛍光灯を主体とした撮影が、新しいノワールだ!ってすごく喜んだ記憶があります。村川透監督の「遊戯」シリーズも思い出します。カメラが若干引き気味な分だけオリジナルな雰囲気で、蛍光灯が影響する緑色のトーンといきなり始まる暴力、藤竜也さんの渋さ爆発な男の映画です。警察署内のシーンの猥雑さは日本映画には無いトーン。若干お話が乱暴

最好映画。 059 「ザジ ZAZIE」 1989年。

地下鉄でもファッションブランドでもありません。 DVDも出ていないので、再見するのが難しいのですが… 今や俳優としての方が有名な利重剛さんの劇場映画デビュー作。 とても不可思議な味わいのある映画です。 かつてカリスマヴォーカルとして名を馳せた「ザジ」がふらりと戻ってきた街で、ひたすら友人や頼ってくる人たちの話を聞きながらビデオを撮影しまくる…ザジが失踪した伝説のライブでザジが何を言いたかったのか。何に失望したのか。ミステリーのような構造を取りつつ、ザジに憧れる青年(杉本哲太さ

最好映画。 057 「乱」 1985年。

映画って、時間が経ったり観た本数が増えたり、自分が歳を取ったりすると観え方が変わってしまうことがあります。これがまさにそれ。1985年と言えば、中学生で「なんだこの仰々しい長い時代劇は・・」と辟易として全く良い印象がなかったんですが、20歳過ぎに「用心棒」にハマって、過去に遡り「姿三四郎」まで行って戻って、再見したら、「こんなにスゴい映画ってあるのか・・」になってました。この映画のスゴさはその積み重ねの頂点にある、という所に尽きると思います。ほぼアップのない画面構成(多分、テ

最好映画。 058 「ディーバ」 1981年。

実のところ、高校生のころ、下高井戸シネマにこれを観に行って、併映だった「時計じかけのオレンジ」にまるで持って行かれてしまって印象が薄かったのですが、繰り返し観ると、本当に奇跡のような映画だと思います。お話は割と嘘くさくて、とても有名なオペラ歌手の独唱を無断録音してしまったオーディオマニアの青年が海賊版を制作したい闇業者に狙われ、歌手本人と仲良くなり、その過程を助けたふしぎな連中と暮らして行く、というフランス映画としても非常に珍しい筋運びの映画です。 とにもかくにも撮影が素晴ら

最好映画。 056 「リバティ・バランスを射った男」 1962年。

最後の西部劇と名高い名作。 とは言え、ビデオ化は大分後だったので、自分の中で伝説化していた映画です。 かなり衰退期の西部劇にして、ジョン・ウェインとジョン・フォードの最後の組み合わせ。お話もそれに合わせてか民主化が進む西部の片隅で、ジョン・ウェインが本当に強い男を、法律家のジェームズ・スチュアートが伝説になってゆく男を演じ、町の無法者を誰が倒したのか、それが何をもたらしたのかを少しづつ明かしてゆきます。正直かなり地味で暗めな映画です。騎兵隊映画時代からの名脇役たちがあちこちで

最好映画。 054 「エグゼクティブ・ディシジョン」 1996年。

致死性ガスを盗み出したテロリストがジャンボ機をハイジャック。 撃ち落とすこともできない、要求を飲む訳にも行かない中で、政府の出した選択肢が、ジャンボ機に乗り込んで、テロリストを殲滅すること。荒唐無稽な映画です。 この映画のスゴいところは、人の予想をことごとく裏切ってくれること。 カート・ラッセルが主役だし、スティーブン・セガールもいるし、ジョン・レグイザモもいるし、ジョー・モートン(「スピード」の無茶ぶり指揮官)もいるしで、多分誰かがスーパーマン的活躍をしてなんとかしちゃうん

最好映画。 055 「ライフ・アクアティック」  2004年。

こんなにゆるゆるな映画なのに、泣けます。 冒険家スティーブ・ズィスゥーの元に訪れる珍客。 海洋冒険家である彼は謎のサメを追って記録映画を撮影しています。 彼を振り回した元妻、隠し子と教えられた飛行士、彼の偽善を暴こうとするジャーナリストに、昔から彼を慕って集まる船乗りたち。 大筋のお話はあるんですが、その妙な間とものすごくセンスあふれる音楽とダサい特撮を見ているうちに、こんなに大物役者集めて何やってるんだ?→結構深い話だぞ?→あれ泣けてきた、という摩訶不思議な映画。 ビル・マ

最好映画。 053 「ギャラクシー・クエスト」 1999年。

久しぶりに観たら、やっぱり大笑いだったSF映画。 誰がどう観ても「スタートレック」のパロディ。番組終了後の役者さん達の悲哀とか、ファンの盛り上がりとか、アメリカ的場末感を丁寧に描いた冒頭から一転、いきなり本物の宇宙船に連れてこられた元スター役者さん達が、果たして宇宙の平和を取り戻せるのか?? 10年経ってちっとも可愛くない少年パイロットや、コンピューターの台詞を切り返すだけの女性コ・パイロット、いかにも「スタートレック」な設定。 このコ・パイ、なんとシガーニー・ウィーバー!決

最好映画。 052 「黄色いリボン」 1949年。

一頃やたらはまってしまったジョン・フォードの初期騎兵隊3部作「アパッチ砦」「黄色いリボン」「リオ・グランデ」の最高峰。 古き良き軍隊のしきたりのなかで、砦を中心とした人間模様がとても楽しいんです。家族的な雰囲気とお決まりのパターンで安心して観られます。音楽が常に鳴っているのも特徴的で、ミュージカルめいた要素も多いです。 三部作はすべてジョン・ウェインの主演、ビクター・マグラグレンが古参兵、ハリー・ケリーJrがちょっと頼りない若者を演じる構成。脇役はみんな同じ顔が並んでいて、

最好映画。 051 「パシフィック・リム」 2013年。

「ジャイアント・ロボ」+「GODZILLA ゴジラ」。 この例えでは伝わらない! この映画観たら、誰かにそのスゴさを喋りたい!って言う映画です。 冒頭10分で、予告編の美味しいシーンを使い切ってしまう、そのオドロキ。 ともかくやたらとデカいロボットの表現に、ボトムズファンにはたまらない細かい機構の動き、その質感。プロレスラー登場としか思えない高揚感のある音楽。わざわざパイルダーオンするコクピットに、進化するKAIJU。ロケットパンチかエルボーロケットかはこの際問いませんが、あ

最好映画。 050 「レモ/第一の挑戦」 1986年。

モノの本によると、「リチャード・セピア&ウォーレン・マーフィ原作のベストセラー・シリーズ『デストロイヤー』の映画化。韓国の秘術シナンジュを体得した主人公が軍事産業の陰謀を叩く。」というお話。 かなり地味〜な感じの正当アクション映画。 なんで観たのかというと、フレッド・ウォードが出ていたから。 「トレマーズ」のケヴィン・ベーコンの相棒(!)にして、 「ライトスタッフ」でのガス・グリソムと渋〜い役をやっている彼がなんか好きで。 ルパン三世における次元大介のような人で、結構追いかけ

最好映画。 049 「地獄の饗宴」 1961年。

大好きな岡本喜八監督作品。二番館でも名画座でも中々お目にかからない作品。やっと観れたのは、日本映画専門チャンネルでしたw。意外と岡本喜八色が薄い印象です。一つ前の「顔役暁に死す」は加山雄三さん主演で、どこか青春ものを引きずっていましたが、この作品は三橋達也さん主演で、最初からオトナの映画。スタッフを見れば東宝の「黒い〜」シリーズの方々ばかりで、さもありなんというところ。なんですが、やはり早い展開と、つながりの妙、キャスティングと喜八タッチが随所に現れていて楽しいです。白黒です

最好映画。 048 「墨攻」 2006年。

中国の思想家集団、墨家から派遣された軍略家が孤立した城に乗り込み、10万の敵を翻弄する2000年前の戦争を描いた作品です。原作をご存知の方は多いと思いますが、小説・漫画があって、日本発進の原作。これがまた面白い。酒見賢一さんの小説を、作画森秀樹さん、脚本久保田千太郎さんが漫画にしています。兼愛、非攻を旨とする主人公、革離が次々と繰り出すお話。当初は戦略にいぶかしがっていた城の人間が次々とシンパになっていき、民の力をも味方に付けて巨大な敵を敗走寸前まで追い込みます。最後は言いま

最好映画。 047 「ファンシィダンス」 1989年。

「Shall we ダンス?」の周防正行監督の初期映画。 これ、じわじわ効いてくる映画です。笑いなんですが、登場人物の誰一人として大声を出しません。漫画が原作の、しずか〜な映画です。 音楽もほとんどかかりません。画面もフィックスです。移動もパンもありません。ある種の規則に縛っているのに、画面から役者さんから異常に面白いんです。本木雅弘さんが嫌味を言われてつるりと坊主頭をなでる瞬間、トイレにぞうきんを落とした瞬間、クスリと笑えます。竹中直人さんが最初はコワくて、後におかしな先輩