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大声を出す高揚と効用

診療所の前は駅へ向かう県道が走っている。その先は福岡市へ向かう人々が上って行く道に繋がるため、この辺ではまあまあ車の行ききがある。
道路のこちら側には派出所、コミュニティセンター、郵便局があり、向こう側にはJA、公民館、パーキングの広いスーパー、と並ぶ。

ちょうど当院の向かい側はスーパーの左側のパーキングになっており、そのスーパーは歩行者が正面から店の方へ行くには階段を数段上がる少し高い位置にある。
つまり当院側に見えているのはスーパーの左側のパーキングの法面で、2メートル以上はあるコンクリートの壁とフェンスにあたる。

当院の前の道路のその向こう側の歩道は、そのスーパーの法面の下になるのだ。
下校の時間と学童保育の時間、を小学生たちが住宅地に向かうためにゾロゾロと左から右へその法面の下の歩道を流れるように歩いて行く。
ワイワイとはしゃぐ声が聞こえてくると、2人3人のグループの子供達が楽しそうに家へ帰って行く様子が診療所の窓から眺められる。
主に女児に最近人気の水色やラベンダー色のカラフルなランドセルや、黄色のカバーをつけた1年生を見かけることができる。
高学年の子供達はあまり騒がないので、
気づかないことが多い。
仕事の合間にほのぼのとさせられる時間だ。

最近、以前とは少し違う様子が見受けられて笑ってしまうことが多い。
いやそれは笑っていてはいけない問題へと繋がるのだが、反射的に子供の弾けるような生命力につい反応してしまうのだ。

下校時間になると今まではキャッキャ!という可愛らしい女児達の声や低学年の男女の声が聞こえていたのだが、最近は明らかに声が違う。

「ギャー!」とか「ワー!」とか文章では表せない大声が聞こえてくる。
ふと見ると中学年ぐらいの男子が多い。
または女子でも「キャッキャ!」という声が甚しく大きい。
そして走る音、ランドセルの音も賑やかに聞こえる。

明らかに当院の向こう側のスーパーの法面の下が大声ゾーンになっているのだ。

そこは誰からも見られていないし叱られない。パーキングの出入り口がその面にないため、車も近寄っては来ない。
おまけに通勤時間以外は滅多に歩行者もいない。誰にも迷惑がかからない。
そしてスーパーは交差点の角にあり、法面の長さは50メートル以上は余裕である。
次の信号のある交差点まで歩道も広いし最高のフリーゾーンなのだ。

子供達はコロナ禍で学校でも3密だ、大声を出すな、給食を食べる時は喋るなと、
あらゆることで制約を受けている。
きっと発散するところがどこにもないのだろう。
住宅地に戻って行く前、家に帰る前のひと騒ぎというところなのだろう。

ギャー!という騒ぎ声や走る声がすると、子供らしく微笑ましいためについクスッと吹いてしまうのだが、考えたら大問題に繋がるとも言えることだ。

発散ができずストレスをためているという心への影響も出ているということ。
それは専門外なので専門家に任せるとして、
歯科的に言えば、大声を出し身体を動かす場が少なくなったことで、顎の骨や歯の発育に影響が出てくるということにも繋がる。

実際、当院でここ3年ほど歯の生え変わりが難しい、中でも永久歯の卵の発育不全が心配されていた。
それにさらにコロナ禍の一斉休校やコロナ禍生活は、さらに拍車をかけているだろうデータも得られた。

身体を動かす、大声を出す、外でしか浴びれないUVBを浴びることで健全な顎の骨の成長が得られると言えるのだが、コロナ禍では不足している。

なので、子供達には引き続きスーパーの法面の下で騒ぎながら帰ってもらっていい。
誰にも迷惑がかからないフリーゾーンぐらい、それを認めてあげよう。
私的ではなく社会が認めて欲しい。

もうせめて学校内では以前のようにのびのびとできる環境を戻してあげたいものだ。

現代にはコロナ禍以前から子供達がのびのびと騒ぐ環境が街中にないのだから。



筑紫野市カミーリヤ シルバー人材センター
「やきいも販売」

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