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B線TNS日記 64 写真はトレカサイズになると尊さを増す

某月某日 TNSにて

昨日の日記のとおり私はさんざん迷った挙句推しているK-POPアイドルのアルバムを買ったわけだが。

ホクホク顔でタワレコ袋を提げて帰宅した私に、次男が言った。

「お母さん、早く!早くCD開けようよ!」

もう待ちきれないという表情で私に開封を促してくるのだった。

しかし、様々な心の葛藤を経て購入を決意し、タワレコ店内では女子中高生の隣でアルバム3形態のうちのどれを選ぶか、はたまた3形態全て大人買いするのか、長時間悩み、やっとのことで1形態のみにして浮いたお金は息子たちに本でも買ってあげようと決意してレジに並んだ私に、それを帰宅後すぐにあっさりと開封するなど無理なことであった。ましてや!ポストカードとトレカ2枚についてはどのメンバーが出るかわからないのだ!そんなガチャ要素が高いものを軽々しく開けられるわけがないだろう!

次男には、

「ごめん、お母さんまだ心の準備が出来てない。一晩推しのトレカが入っているように祈らせてほしい」

と伝えた。次男は、明らかに「こいつやばいやつじゃん」という顔をしていたが、納得してくれた。

翌日学校から帰ってきた次男は開口一番、

「ねえ、CD開けようよ」と言ってきた。

私は正直まだこのパンドラの箱を開けたくはなかったのだが、昨日一晩限りの祈りの時間を請うた身としては次男の要求を受け入れるしかなかった。

YouTube大好き次男は、開封の時は動画を撮るのがお決まりだと言って私の前でスマホを構えている。

カッターをアルバムを包むフィルムに当ててすうっとひいた。ああもう戻れない。私は今、人生でも有数の運試しをしている。

ケースからCD本体、フォトブック、歌詞ブックレットを取り出す。ポスターもある。全部をテーブルの上に並べようとした時、はらりとポストカードが手元から滑り落ちた。

「あっ」次男と私は思わず声を出す。次男の推しが出た。

私は叫ぶ。「ぎゃあああ」

続いてフォトブックに挟まれているトレカを2枚出し、1枚ずつ裏返してみる。次男が歓喜の声を上げる。私は先ほどよりも大きな声で叫び、テーブルに突っ伏してしまう。

またもや次男の推し2人の写真であった。

悲しい。全メンバー応援してるけど、自分の推しが出ない哀しみってこんなに強いんだ......知らなかった。

それにしてもだ。なぜ写真ってトレカサイズになった瞬間、その尊さを万倍単位で上げてくるのだろう。手のひらに載るサイズの薄いカード紙に印刷されたとたん、パソコンやスマホの画面上で見る彼らとは違う次元のものになるのだ。神社でいただくお札とか、お守りとか、そんな厳かさまで備えている。

トレカは大事にしまっておいて、次男の巣立ちの時にへその緒と一緒に渡そうと思っている。

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