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『超言葉術』阿部広太郎著 感想Part2


 私は、かなりのお喋りだ。自覚はある。周囲に異論のある人は恐らくいないと思う。面識のないあなたにどの程度かをお伝えすると、電話なら最長ぶっ通し休みなしで16時間、一人の友人と延々話し続けたことがある程だといえばおよその想像がつくであろうか? 小学生の頃は、放送局だの放送塔だの大人たちから評された。私の話を聞けば、その日学校で何があったか、仔細に知ることが出来ると、特に男の子のお母さんに人気だった。

 でも、いつも本当に話したい、言いたいことだけを話している訳ではない。こんなにおしゃべりで、言いたい放題言っているように見られる私でも、実は話せていないことというのはある。それどころか、本当に本当に言いたいこと、本当に本当に話したいことは、実は殆ど話せていなかったりする。

 頭の中では、擦り切れた台本のように、または傷付いたレコードのように、繰り返し繰り返し、同じ話が語られているのだけれど、それを口から言葉にして出そうとすると、「パリンッ」と音を立てて心が割れて砕けてしまいそうで、そして、言葉が口から出るより先に目から涙が止まらなく流れていってしまい、目の前の相手とそして何より自分自身を困惑させてしまうことが分かっているので、そう易々と日常の中で話すことなど出来ないのだ。

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「言葉の犠牲者になるか、言葉を救世主にするか。言葉だけは裏切らない。」(p199 l.11)

「初めに言葉あり。言葉は神とともにあり。」(旧約聖書 『創世記』) を彷彿とさせる言葉を読んだ時、鼓動が高鳴った。一旦、本を閉じて、深呼吸する。

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阿部先生は、たとえば何時間も何時間も好き勝手話し続けて、ふぅ~と満足気に話し終えた私に、そっと                     「・・・で、あなたの本当に話したいこと、              みんなに伝えたいことって、何? 言ってごらんよ。          遠慮しないでさ。」と声をかけてくれるような方だ。私が、まだ話せていないことを、本当に話したいことは別にちゃんとあるのだ、ということを分かって、見抜いておられて、そして優しく背中を押して下さるような方だ。この『超言葉術』の中で繰り返し、繰り返し、語りかけて下さっているのは、そんな優しい、人の心の柔らかい部分をそっと掬い上げて、「ほら。」と微笑みかけてくれるような、そんな本だ。

 そして、阿部広太郎先生は、裸だ。薄着なんて、中途半端なものじゃーない。正真正銘、全裸だ。(一応、マナーとして、またわいせつ罪で捕まらないように、パンツ一丁は身に纏っておられるけれど、、、。)全てをさらけ出した裸の心(あいみょんみたいだ・・・。)で、私達生徒に向かって全力でぶつかり、語りかけてきてくる。

「自分の内面を吐露するには勇気が必要だと思う。誰かに見てもらうとなれば、どこまで書いていいのか迷うこともあるはず。」(p240 l.4-5)

「本当に、心の底から言いたかったことが世に放たれる。その奥に感じられる勇気。」(p241 l.7)

 まるで歌いたいのに、怯えて声が出せなくなった少女に、「思いっきり歌いたいように歌いなよ!歌っていいんだよ、自由に!好きなように!!」と背中を押してくれる人のような先生だ。阿部先生は、ご自分の体に付いているかつての傷跡さえ堂々と「ほら、僕だって、こんなに傷付いてきたんだよ。」と見せてくれる。その傷をどの乗り越えてきたかを、誠実に話してくれる。その話は、読み手である私達生徒に勇気を与えてくれる。

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第1章から4章くらいまでは、主に笑ったり(時に、爆笑)、ふむふむなるほど!と頷いたりすることが多かったが、第5章、第6章、第7章と終盤に向かうにつれ、ふっと立ち止まって涙がこぼれそうになる言葉が書いてあって、非常に困った。外で、いい歳したおばさんが「泣く」とか「涙を浮かべている」というのは、ちょっと世間的にまずい。やはり、この本は、外で読むのは危険だ。

「『戦略と創作が一体になって時代の騒ぎになる』」(p301 l.2)

「あなたの書く企画書によって、あなたが必要とされればいい。」(p301 l.8)

「あなたはあなたになる」(p301 l.5)

阿部広太郎先生に出会えて、よかった。この本に出合えて、よかった。  私は書こうと思う。阿部先生に教えて頂いた情熱と愛をもって。「才能とは、掛けた時間だ。」という阿部先生の時間を信じて。

わたしは、きょうだい児として育った自分の思いを世に伝えたい。重度脳性麻痺の弟がどう生きてきたか、弟がどんなに素晴らしいか、姉としてどんなに私が弟を愛しているか、愛してきたか、父が母がもう一人の姉が、どんなにか弟を大切に思い、そして愛してきたか、、。にもかかわらず、どんなにか家族中が傷付き、疲れ果て、そして憎しみあってきたか、、。     私はその話を伝えて、「わたしはわたしになりたい」。


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