新・幸福論 (五木 寛之)
(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)
先にアランの「幸福論」を読んだのですが、今度は五木寛之氏の「新・幸福論」です。
アランの著作が「論」というより「幸せ」をテーマにしたプロポ(哲学断章)であったのに対し、こちらは五木氏得意のエッセイ集です。
人の生活は、必ず他者、それは他人であり周りの動植物であり環境などですが、それらの犠牲の上に成り立っているとの考えです。
読み進めていくと本書の半ば過ぎ「努力して幸福になれるか」の章で、五木氏もアランの「幸福論」に言及しています。
アランは、幸せになる方法として「具体的な動作・所作」を勧めています。たとえば、「欠伸をする」であったり「微笑む」であったり・・・。五木氏が勧めるのは「ため息」です。
「ため息」は人前でつくと、その場の雰囲気を沈み込ませてしまう恐れがありますが、一人でいるときなら五木氏が語るように、そのときの心持を落ち着かせ “一区切り” をつけるひとつの方法かもしれませんね。
本書を通底している五木氏の思考は、必ずしも幸せになるための「明るく活力に満ちた単純なプラス思考」ではありません。「普通の人びと」の視点から現実をとらまえて、ある種の諦観も心に持ちながらの生きる姿勢を書き綴っています。
五木寛之氏も、もう80歳間近なのだそうです。
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