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黒石 新宿鮫Ⅻ (大沢 在昌)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
いつも聴いている大竹まことさんのpodcast番組に著者の大沢在昌さんがゲスト出演していて、本書の紹介をしていました。
大沢さんの「新宿鮫シリーズ」は第一作目から読み続けています。
最初の頃のインパクトは強烈でしたね。主人公の個性的なキャラクタに加え、脇で登場する人々が魅力的で大いに楽しめました。
ただ、やはり本シリーズも例外ではなく、ナンバーを重ねるごとにその作品としての迫力は急速に減退していきました。
小説なのでネタバレにならないよう、感じたところを記してみると、本作では、そのマンネリ化による劣化も少し持ち直したようですね。
主人公とそれを取り巻く人物たちとの会話がテンポよくエピソードをリードしていきます。肝心の物語もシンプルな軸が一本通っていて大きな振幅がないので、しっかりとストーリー展開に入り込んでいけるのです。
シリーズものとして成功する秘訣のひとつに、主人公のキャラクタ設定がありますが、本作中で大沢さんはこう描いています。
(p257より引用) 警察の出番は、常に何かが起きてからだ。被害にあう者がでて初めて、警察は動く理由を得る。
未然に犯罪を防止できれば、それに越したことはない。といって、密告や監視が横行する社会が健全だとは鮫島は思わない。
本シリーズの「鮫島警部」。決して超人的な能力をもったスーパーヒーローではありません。
極めてノーマルな考えから愚直に自らの信念の貫く真っ当な刑事、それが読者の共感を生む彼の魅力の原点でしょう。
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