歸國 (倉本 聰)
倉本聰氏によるテレビ特別番組『歸國』のシナリオ原作本。たまたま図書館の新着本の棚にあったので読んでみたものです。
今年(注:2010年)の8月に放映されたとのことですが、私はほとんどテレビを見ないので気づきませんでした。
あとがきによると、戦後10年ほど経ったころ放送されたラジオドラマ「サイパンから来た列車」という番組がベースになっているとのこと、第二次大戦の英霊たちが、短い時間の間、現代の日本の街を彷徨するという舞台設定です。
シナリオなので、まだ読んでいない方のためにストーリーを辿ることはしませんが、私の印象に残ったフレーズをいくつか書き記しておきます。
「断章 靖国」、深夜の靖国神社のシーン。
「外郭団体・財務総合研究所」で、妹である老母を孤独死させた自分の甥に向かって、そしてそういうことを許す現代日本に向かっての台詞。
そして英霊たちがつかの間の彷徨を終え元の海に戻るために集まった「東京駅」のシーン。
「その祈り」に報いるだけの、「その祈り」に相応しい社会を、私たちは作り上げているのか・・・
8月15日に振り返るべきとても大事なテーマ。戦争を決して美化はしない、しかし、決して忘れてはならない、と改めて思いを確かめさせられる作品です。
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