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日本経済は、中国がなくてもまったく心配ない (三橋 貴明)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 著者の三橋貴明氏、「経済評論家」との肩書もあるようですが、学者的な意味での経済の専門家ではありません。ただ、それゆえに、素人分かりする解説が特徴です。

 本書は、日本経済の中国依存の現状に対し、その誤謬を数々の統計数値を元に指摘するという三橋氏が得意とするスタイルで記されています。総ページ数も100ページほど。見開きの2ページでひとつのテーマについて解説しているので、サクサクと読みやすいですね。

 たとえば、「自国資本のみで輸出業を維持できない中国」の章では、中国の輸出額に占める外資系企業の割合は50%を超えているという数字を示して、次のようにコメントしています。

(p46より引用) 誰もが知っている通り、中国製品の魅力は「安さ」です。中国内で安い人件費、安い人民元に基づいて作るからこそ競争力を持つことができているに過ぎません。
 日本の製品は日本独自の技術力、ブランド力があるからこそ、どこで作っても変わらず日本製品なわけですが、中国製品は「中国内で安く作ったもの」でなければ中国製品である意味がないのです。
 そして「中国内で安く作ったもの」でさえあれば、どこの国の力を借りても構わないということです。

 本書で紹介されている数多くの数値は、それ自体否定するものではありませんし、その数値が示す中国経済の実体や日本経済における中国の位置づけ等についてのコメントは(その数値のみでの解釈としては)おかしなものではありません。

 ただ、本書に限らず「データ」は、主張のコンテクストに合わせて選択・処理される性格を持っています。
 日中間の種々のissueは、しばしば白か黒かといったステレオタイプの判断がなされがちです。その点からは、本書をスタートに、多角的な観点からの分析・主張を並べてみて、自らの実態判断をくだす必要があるでしょう。

 本書は、そういったプロセスを辿る上でのアイドリングとしては、親しみやすく有意義な著作だと思います。

(注:2023年の今、中国と日本の姿はどう理解すべきでしょう。たとえば、技術面、それも基礎研究から応用技術、さらに製品化・商品化といった切り口で捉えたとき、本書の認識や主張に“先見性”が見つけられるでしょうか。)



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