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松岡正剛の書棚―松丸本舗の挑戦 (松岡 正剛)

 丸の内OAZO内、丸善・丸の内本店4Fに開設されているとてもユニークな書棚「松丸本舗」
 本書は、そのプロジェクトのコンセプトリーダ松岡正剛氏自らによる「松丸本舗ガイドブック」です。

 まずは、この「松丸本舗」。松岡氏はその生い立ちについてこう語っています。

(p107より引用) われわれは街の形を、店の並びや建物の気配を通して憶えている。・・・
 純粋な記号としての地図を頭に刻み込んでいるのではなく、「匂い」「フィギュア」「雰囲気」といった知覚を通して記憶に残している。
 本も同じだ。・・・「読前・読中・読後」の3ステージが重なっていくことが、本来の読書なのである。そこに注目すれば、新しい「知のパラダイム」が生まれるはずだ。
 そのために僕が最初に考えたのは、書棚に「街の構造と気配」を漂わせることだった。

 「図書街構想」です。この発想が「電子図書街」プロジェクトの発足につながりました。そして、もうひとつリアルな場として「松丸本舗」が登場したのです。

 本書は、その松丸本舗の構成とそのコンセプトの解説、そして、そこに並べられた書籍の中から特にお薦めというものを紹介しているのですが、具体的に目次を辿ると、こういう感じです。

・本殿第1章 遠くからとどく声
・本殿第2章 猫と量子が見ている
・本殿第3章 脳と心の編集学校
・本殿第4章 神の戦争・仏法の鬼
・本殿第5章 日本イデオロギーの森
・本殿第6章 茶碗とピアノと山水屏風
・本殿第7章 男と女の資本主義

 ともかく、私ひとりでは絶対思いもよらないような多彩なジャンルから、数多くの興味深い本が次から次へと登場します。

 ちなみに、あまり関心がないジャンルとしては、私の場合「詩歌」があげられます。
 松岡氏は「本殿第1章 遠くからとどく声」で、詩集・歌集・句集の読み方をこう語っています。

(p15より引用) 短詩形文学とは、徹底的な引き算の末、最後に残った感性の痕跡なのである。そこに残った言葉をじっくりと見れば、元の大きな極彩色が浮かび上がってくる。

 なるほどとは思いますが、ともかく実物にあたってみないと、こうアドバイスどおりにいくかどうか・・・。

 さて、本書で松岡氏が紹介している数々の本たちの中から、私が読んでみたいと思ったものを順不同で。

  • ノヴァーリスの「青い花」

  • 夏目漱石の「夢十夜」

  • プーシキンの「スペードの女王」

  • プルーストの「失われた時を求めて」

  • 半村良の「産霊山秘録」

  • ハイゼンベルクの「部分と全体」

  • ワインバーグの「一般システム思考入門」

  • スタフォードの「ヴィジュアル・アナロジー」

  • 井上有一の「日々の絶筆」

  • 金子勝の「反経済学」

  • バラードの「時の声」

  • ポランニーの「個人的知識」

  • 赤坂憲雄の「境界の発生」・・・。

 調べてみると、私がいつも行っている図書館には7割方所蔵されているようです。さて、この中からいったい何冊読めるでしょうか。

(注:この記事は2010年11月に初投稿されたものですが、今2022年5月の再録時点でも、情けないことに1冊も手に取っていません・・・)



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