世界の経営学者はいま何を考えているのか ― 知られざるビジネスの知のフロンティア (入山 章栄)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
ちょっと評判になっている本なので手にとってみました。
国際的な経営学の興味がどこにあるのか、米ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授(当時)の入山章栄さんがライトなトークで紹介していきます。
とても読みやすい内容ですが、改めて「なるほど」と思う点が数多くありました。
その中の一つが「ポーターの競争戦略論」を取りあげているくだりです。
競争戦略論における企業の究極の目的は「持続的な競争優位」を獲得することだと言われています。このために企業はどうすべきか、その代表的な示唆が「ポーターの戦略」です。
ポーターの考えにおけるSCPが有名な「ポジショニング戦略」というわけです。
ポーターの「ファイブフォース」は、このSCPパラダイムの観点から競争度合いを規定する要素として掲げられたものです。
現実的には、競合度合いの低い分野があったとしても、既存事業を抱えた企業がそこに新たに参入することは困難です。そこで、現在の土俵の中での「差別化」が重要になります。
このあたりの説明は、大胆に割り切っているだけに分かりやすいですね。
そして、この「ポーター流の考え」の潮流が今どうなっているか・・・。
現在の「競争戦略論」においては「持続的」な競争優位自体、それを実現・維持することは極めて困難であると考えられています。
「ポーターの競争戦略論」が機能する企業環境そのものが、以前に比して大きく様変わりしているのです。
もうひとつ、著者の指摘として有益なものをご紹介します。
多くのビジネス書が説く戦略・戦術に踊らされないためのアドバイスです。
「内生性」とは、「(一見)効果をもたらしていると考えられる戦略の選択そのものが、何か別の要素に影響を受けている可能性がある(さらには、そのべつの要素が実は現出している効果に直接の影響を与えていることもある)」ということ、「モデレーティング効果」とは、「ある変数から別の変数への効果の強さが、さらに別の変数によって左右される」ことをいいます。
さて、本書、予想以上に面白い内容でしたが、「ドラッカーなんて誰も読まない!」というキャッチも、日本のこの手の著作の読者にとってはかなり刺激的です。
確かに、ドラッカーの著作は「学問としての経営学(学術的な論文)」かといえば、確かにそうではないですね。
だからといってドラッカーの示唆・箴言の価値が減耗するものではありませんが、こうはっきりと指摘されると、どちらかといえばドラッカーファンの私ですら爽快感を感じます。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?