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不思議で美しいミクロの世界 (ジュリー・コカール)

(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)

 ちょうど直前に「細胞」の仕組みについての本(「細胞の中の分子生物学」)を読んだばかりだったせいもあって、いつも行く図書館の新着本の棚で目に付いたので手に取ってみました。

 電子顕微鏡があきらかにするミクロの姿はその仕組みの神秘さに呼応した精緻さで、「人工の拙さ・味気なさ」を改めて感じさせます。
 本書は写真集なので、内容を紹介するのに説明文を引用してもあまり意味ないのですが、気になったコメントを2・3、書き留めておきます。

 まずは、「砂の粒」の写真の解説文。

(p175より引用) 砂は均一な物質ではなく、大量の石英や貝の破片、火山灰粒子、サンゴなどで構成されている。微細な砂の粒の大きさは50マイクロメートルから数ミリに過ぎないが、1粒ごとにストーリーをもっているのだ。

 「砂」といっても単一の鉱物ではありません。まさに海と陸とそこに住む生物の歴史の堆積だということですね。
 この砂の場合であれば100倍程度の倍率で一粒一粒の特徴を判別することができますが、細菌類や微細な寄生虫になると15,000~80,000倍程度に拡大しないと構造までは識別できません。そこまで拡大しても、生命体は精緻で複雑でかつ機能的な姿を現すのです。

 本書の監修者国立科学博物館館長林良博氏は巻頭でこう述べています。

(p2より引用) 研究者たちの基本的欲求は、もちろんミクロの世界を見ることによって新しい科学的な知見を得ることであった。・・・現代科学はミクロの世界の美術面よりも、そこから新しい技術が生まれることを求めている。近年注目されるようになったバイオミメティクス(生物模倣技術)は、生き物の機能や仕組みを模倣して、新たな技術の開発を模索している。・・・
 しかし、著者が一貫して読者に求めていること。それはかつての冒険家たちのように、際限のない好奇心のまなざしで本書を見てほしいということだ。

 著者のジュリー・コカール氏は、本書に収録された数々を写真を見ることによって、今まで考えたこともないような疑問とその答えのヒントが得られると語っています。

(p4より引用) あらゆる角度から顕微鏡で観察された地球は、ときに驚異的で魅力あふれる写真を通して、それらの秘密を教えてくれるはずだ。

 この「顕微鏡で観察された地球」という表現は印象に残りますね。
 確かにミクロの世界の集積が “地球” なんですね。



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