バカにならない読書術 (養老 孟司・池田 清彦・吉岡 忍)
養老孟司氏の本は、いままでもベストセラーの「バカの壁」をはじめ「ぼちぼち結論」など何冊か読んでみています。
今回の本は、大きく2部構成。
前半は、「本を読む」ということを材料に、養老氏お得意の「脳」の話や「虫」の話が、気の向くままという感じで展開されます。
その内容は、必ずしも「養老流読書術」の解説とは限りません。
たとえば「読み聞かせ」の効用について語っている章では、脳の発達において、「入力」だけでなく「出力」の重要性を説いています。
(p13より引用) 昔から言われているように、人は、「知育」「徳育」「体育」という三つで、成長していきます。・・・
この「知育」「徳育」「体育」というのは、脳のはたらきそのものと言ってもいい。
われわれの脳は、外からの「入力」を受けて、内部で「演算」をして、それで結果を身体の動きとして外へ出す、つまり「出力」する。・・・
人間は歩けない状態から始まります。それが歩けるようになるのは、前述した「入力」「演算」「出力」という脳のぐるぐる回しによって、脳の中にプログラムが自然にできていくからです。
多様な入力が、さまざまな出力を生み出し、脳のはたらきを柔軟に活性化するというわけです。
(p53より引用) 入るところと出るところ、つまり入力と出力が豊かにならないと、真ん中の「演算」部分はサボるのです。真ん中にプログラムを作っていくことが一番重要なことなのであって、そのためには出口と入口を広くしておけばいい。
この他にも、「虫は関節の振動音でコミュニケーションしている」とか「日本語(漢字仮名交じり文)は、脳の2ヶ所で読んでいる」とか、興味深い話が数多く紹介されています。
本書の後半は、養老氏を含め3名の鼎談です。
加わるのは、生物学者の池田清彦氏、ノンフィクション作家の吉岡忍氏。つながりは「虫仲間」とのこと。
個性豊かな3者が、「米国がわかる本」「鷗外vs.漱石」「居酒屋で哲学を」等々14のテーマについて、わいわいがやがやとお勧めの本を紹介していきます。以前読んだことのある本も何冊かはとり上げられていましたが、それ以外、自分では気づかないような本を見つけるには、こういう書評?は役に立ちます。
最後に蛇足ですが、本書の書名は「どうかな?」と思いますね。あまり内容を的確に言い表しているようは思えませんし、いつまでも「養老氏=「バカ・・・」というのでもないでしょう。
それこそ「○○の一つ覚え」になってしまいます。
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