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宇宙からの帰還 (立花 隆)

 先に「宇宙開発の50年 スプートニクからはやぶさまで」という本を読んだのですが、本書もその「宇宙つながり」です。

 私が小学生のころ、「宇宙」にはかなり興味をもっていました。
 小遣いをせっせと貯めて買った初めてのものが「天体望遠鏡」で、夜な夜なベランダに持ち出しては、月や惑星、星団や二重星を見ていました。
 ちょうど、アメリカがソ連(当時)に追いつけ追い越せと「アポロ計画」を推し進めていたころでした。当時は、結構、宇宙飛行士の名前を覚えたりしていましたが、やはり、アポロ11号の3人のクルー、アームストロング・オルドリン・コリンズは別格でしたね。

 本書は、宇宙が人間に与えるインパクトを、実際に宇宙飛行を経験した数々の宇宙飛行士のインタビューからあきらかにしようとしたものです。
 当然、アポロ11号も登場します。なかでもオルドリンのエピソードはインパクトがありました。月に降り立った第2番目の人類の「宇宙飛行前」「宇宙飛行中」「帰還後」・・・。

 その他、一言で宇宙飛行といっても、「地球周回軌道」のみの経験「月軌道」の経験とでは、質的に大きく異なるという指摘も興味深かったです。視野一杯に地表が見えるのと、地球がひとつの惑星として、宇宙のなかにポツリと浮かんで見えるのとでは、「地球に対する感覚」が全く違うというのです。

 そういった「宇宙飛行士の『地球』」です。

(p64より引用) (宇宙飛行を終えて帰ってきた宇宙飛行士たちは、)例外なく、地球に対する認識が驚くほどふくらんだというのである。それは単に、地球環境がいかに人間の生命維持に不可欠かがわかった、といった単純な感想ではない。地球と人間のトータルなかかわりに関する認識とでもいったらよいだろうか。具体的には、・・・全人類が現にその上に乗っており、すべての営みをそこで現に展開しつつある地球を、目の前に、一つのトータルなものとして見た経験がある人間だけが持ちうる認識とでもいったらよいだろうか。

 このあたり、もう少し具体的なものとして、アポロ7号に乗り組んだ宇宙飛行士アイズリ氏のことばを紹介します。

(p248より引用) 宇宙からは、マイナーなものは見えず、本質が見える。表面的なちがいはみんなけしとんで同じものに見える。相違は現象で、本質は同一性である。地表でちがう所を見れば、なるほどちがう所はちがうと思うのに対して、宇宙からちがう所を見ると、なるほどちがう所も同じだと思う。

 こういったことが、「理念」としてではなく、リアルな「実体」として感じられるというのです。

(この再録作業をしている数日前、立花隆さんの訃報が流れました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。)


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