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ラジオのこころ (小沢 昭一)

(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)

 小沢昭一さんの本は、「道楽三昧―遊びつづけて八十年」に続いて二冊目です。

 本書は、40年にも及ぶTBSラジオの名物番組「小沢昭一の小沢昭一的こころ」で語られた話題の中から、小沢氏自らが厳選したセレクションとのこと。取り上げられてた材料はまさに種々雑多?、その料理の仕方も多種多様です。

第1章 「平成の名物」のこころ
第2章 「女は強し」のこころ
第3章 「食を愉しむ」のこころ
第4章 「ゆりかごから墓場まで」のこころ
第5章 「旅の奥深さ」のこころ

 もちろん、小沢さんの語り口も絶妙なのですが、そのほかにも、ちょっとした薀蓄ものも楽しいです。
 たとえば、栄養学の川島四郎さんによる「人間の理想的な食事」についての紹介。

(p163より引用) 川島先生は、歯を見ても食事の理想的なバランスがわかるとおっしゃっています。たとえば上の歯の右半分だけ見てみましょう。全部で八本だ。内訳は、野菜を食べる時に役立つ門歯が二本、肉を噛み切る犬歯が一本、米や麦、豆などをすりつぶす臼歯、これは五本とこうなっている。おわかりですね。人間は野菜二、肉一、穀物五の割合で食べればいいんだそうですよ。

 こういった庶民的な話題や語りは、事実か否か、説得力の有無などということはともかく、ただただ聞いているだけでほのぼのとした気持ちになれます。

 ちなみに、本物の「小沢昭一の小沢昭一的こころ」のラジオ放送は、TBSラジオのサイトで(過去の音源ではありますが)聞くことができます。(注:2012年当時)

 やはり、小沢さんの魅力はその「語り口」にあります。口語体とはいえ「活字」を目で追うのと、あの声をあのテンポ・抑揚・間を感じながら聞くのとは全くの別物と言っていいでしょう。

(本書を読んでいたころは、小沢さんは健康上の理由でラジオ放送を休演されていましたが、12月10日、83歳でお亡くなりになったとのこと、心からご冥福をお祈り申し上げます。)



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